Mar 10, 2013
キャビン
「山奥の湖畔に立つ山小屋へ、バカンスへと向かった5人の若者。地下室に隠された古びた本の呪文を読んだとき、森の中の何かが目覚め、彼らに襲いかかる・・・」
そんなベタな粗筋とスチールは、原題の『キャビン・イン・ザ・ウッズ』のままで上映された昨秋の映画秘宝まつりのときのもの。
内容に迂闊に触れれば即座にネタバレな作品であり、ゾンビ手帖の昨春の記事のトレーラーでも強調されなかった本当のプロットには、日本公開を目前にして公式が挑発的な惹句とともに言及。そう、「よくある」スラッシャーのはずが「監視カメラ」「仕掛け」「罠」「脱出」「生中継」「ゲーム」と来れば最近のスリラーに「よくある」展開、生き残りを賭けたゲームやスナッフビデオのような話なんだろうな、と思うはずの観客に突き付けられたコピーはと言えば。
「あなたの想像力なんて、たかが知れている」
・・・ふん。ただ徒に捻っただけの、作り手のマスターベーションをまた見せられるんじゃないだろうな。
そんな天の邪鬼な気分でスクリーンと対峙するや物語の冒頭がそもそも「よくある」スラッシャーに非ず、従い観客にいきなり提示されたのは、その先にある「絶対に予想できない」結末が分かるかい?という挑戦状。
とはいえ何も身構えて観る必要があろうはずはなく、それはもうキュートなヒロインのデイナに魅入って、登場するシーンからして死亡フラグが立っているお調子者、マーティの講釈になるほど、プロットを序盤で提示するわけだなと感心して、機知に富んだ科白とテンポのよい展開、パロディやオマージュを観客は楽しめばいいだけ。
しかし、若者たちが山小屋に到着したときの、そして地下室の扉が開いたときの、『死霊はらわた』との構図の相似に何かを推察できた人こそが真のホラー映画通。
それが観客の想像力の先を、と作り手が企図したもので、うん、クライマックスはもう一度劇場で、BDで確認したいなあ、と思うものではありました。
ただ、そのクライマックスだけがちょっと冗長、あるいは詰め込みすぎ、スラップスティックに突入する契機にこれ、組織が間抜けすぎないか?と思ったのもまた事実。シッターソンの最期の言葉や、シガニー・ウィーバー登場のサプライズには高まるけれど、それらをより巧みに織り交ぜて叩き付けて、ラストシーンに誘うようなグルーヴが欲しかったところ。そのラストシーンも何かこう・・・と貶そうと思えば貶せるものですが。
とはいえ、今年前半に公開されるホラー映画の注目作のひとつとしては上々の出来。
劇場には聞こえよがしに笑い声を上げるホラー映画通がいたけれど、さすがは『クローバーフィールド/HAKAISHA』のスタッフ、そこまでではないライトな層も、映画秘宝だからなあ・・・と懐疑的な向きも、楽しませてくれる作品とは言えるでしょう。
キャビン THE CABIN IN THE WOODS
2012年 アメリカ
配給 クロックワークス
製作 ジョス・ウェドン
監督 ドリュー・ゴダード
出演 クリステン・コノリー クリス・ヘムズワース フラン・クランツ リチャード・ジェンキンス ブラッドリー・ウィットフォード