Jul 8, 2012
先生を流産させる会
退屈な思春期。
田舎町の女子中学生にとって、女教師の妊娠はニュースだった。
ミヅキは学校の飼育小屋で餌を食むウサギを殺す。笑う少女たち。
「何が可笑しいの?」と、グループのリーダーである彼女は応えて、そして訊く。
「サワコ、セックスしたんだよ。気持ち悪くない?」
愛知県半田市の中学校で11人の男子生徒が起こした実際の事件を、女生徒にアレンジして製作された物語はオープニングの不快なシーン、何処か錆び付いたような田園を少女たちが歩く光景にはじまって、さて、どのように「最凶の、教育映画」を見せてくれるのか。
サワコは決していい教師ではなく、そうであろうと努力する風情もなく、女生徒たちとの対峙はまず「女」としてのそれが描写される。
「先生を流産させる会」の隠れ家は廃墟のラブホテルであり、ミヅキの生理のシーンを汚いものとして描き、グループの離散の理由が男性教師であることは、もちろん「性」を意識していよう。
しかし、オープニング、スーパーで幼女にカートをぶつけようとするシーン、そしてあの結末は。
電話が繋がらない家庭に暮らすミヅキと、生徒だからと容赦することのないサワコの対決。それは「人間」と「生」を問うものだったはずだ。
「生まれる前に死んだんでしょ。いなかったのと同じじゃん」
ミヅキが殺そうとしたものは何か。この作品はそれを描こうとしたのではなかったか。ならば曖昧だ。
生理的に不快な物語に慣れている、女生徒たちの残酷さに嫌悪感を抱けないという私見はあろうが、学校が学校であろうとする、モンスターペアレントのシーンなどは蛇足に思えてならない。ならば尺を長くして、いじめの問題もきっちりと盛り込めばいいじゃないか。しっかりとした脚本と演出で、そこだけがまた凡庸な描写にならないように。あるいは指輪のくだりのように、とってつけたような伏線を張らずに。
そう、実話が基であればドキュメンタリーの体で、緊張感の途切れない構成であればよいものを、スクリーンに映されていたものはそんな凡百のフィクション、魅せられることのないファンタジーだった。
先生を流産させる会
2011年 日本
配給 SPOTTED PRODUCTIONS
監督 内藤瑛亮
出演 宮田亜紀 小林香織 高良弥夢 竹森菜々瀬 相場涼乃 室賀砂和希