Nov 30, 2008
ダイアリー・オブ・ザ・デッド
「我々」と「奴等」の狭間をたゆたう傍観者は、やがて当事者となって、ビデオカメラに記録される。
世界の終わりに、生き残れるか。世界の終わりに、何を遺すのか。
原点回帰。
リビングデッド・サーガの時間軸を巻き戻して、ジョージ・A・ロメロが紡いだ「世界の終焉」の物語。
主観映像で客観的に描写される終末、それがロメロの手によるものとあっては、凡百のフォロワーたちの凡庸な作品と異なるものになるのは当然のこと。
いや、「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」で脚光を浴びたP.O.V.(Point of View)の手法を誉めるつもりはありませんし、そうした点に否定的な感想を抱くのは極めてもっともなことと思います。
ザック・スナイダーの「ドーン・オブ・ザ・デッド」や「バイオハザード」シリーズを好む向きが、ロメロの作品をお気に召さないのも今にはじまった話ではありませんしね。
しかし、68歳にしてまったく新しいゾンビ映画を提案したことはまず評価されるべきでしょう。
そう、アクションやクライマックスが派手なだけの映画ばかりでは退屈というもの。
豪勢な作りではありながら、方向性が曖昧になった感のある「ランド・オブ・ザ・デッド」についての贖罪、この作品をそう捉えたとしたら尚更のことに思えるのです。
さらに、ゾンビの頭部が酸でゆっくりと破壊されたり、自分もろともゾンビを斧で貫いたりといった新機軸のゴアは嘆息もの、「28日後…」のようなロードムービーにありがちな散漫さも皆無。
最後に生き残るメンバーが意表を突いているのも心憎い限りで・・・
ああ、なんという愉悦!
ロメロは老いてなどいなかった。
それどころか、彼はフォロワーたちに「どうだい?もっと頑張れよ」と、笑いかけているのかもしれません。
ダイアリー・オブ・ザ・デッド DIARY OF THE DEAD
2007年 アメリカ
配給 プレシディオ
製作 ピーター・グルンヴォルド サム・エンゲルバール アート・シュピーゲル
監督 ジョージ・A・ロメロ
出演 ミシェル・モーガン ジョシュ・クローズ ショーン・ロバーツ エイミー・ラロンド
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