Nov 24, 2007
ゾンビーノ
人間を襲わないように制御するゾムコン社の首輪によって、人間とゾンビが共存できる世界。
そこではゾンビはペットであり労働力であり恋人でさえあり・・・と、「名犬ラッシー」を意識して製作されたというカナダ発のゾンビ・コメディのまなざしは確かに高く、1950年代のアメリカをイメージしたのどかな街で繰り広げられるストーリーは機知に富んだものだったのですが・・・
いや、煙草を吸うゾンビ、ヤキモチを妬くゾンビ、はたまた飼い主がゾンビ化してしまい困惑するパピヨンなどの小技は利いているし、ゾムコン社をクビになったテオポリスといった脇役も上々。
そして、なんといっても少年のママは、むしろ彼女が主役なのでは?と錯覚してしまうほどにクールでキュートで。
野生ゾンビによって街に脅威が広がるシーンなどの、PG-12としては上々なゴアに感心もしたし、物語の中盤、首輪が壊れたのに少年やママを襲わないファイドは見せてくれたものの・・・
そうした諸々を描く演出が残念ながら稚拙、どうにもちぐはぐな印象が拭えなかったんですよ。
だからミュージカル風味のシーンなどはその典型、「ゾーン」の恐怖を描き、「死霊のえじき」のカタルシスを狙ったと思しきクライマックスは、ゾンビへのトラウマを抱えるパパが最後に活躍するかと思ったら・・・といった意味の上でも消化不良。
これでもかというほどの勧善懲悪は、こうしたコメディであれば外連味のないストレート、誉めるべきではあるのですが、ともあれ難点をあげつらうことが無粋に思えるような演出センスは伺えず、これならさすがに「ショーン・オブ・ザ・デッド」の方が上、ましてやデヴィッド・クローネンバーグと比較するなど・・・
隣人のアメリカを揶揄している云々の評価も、ジョージ・A・ロメロが社会風刺を織り込むことと比較したものでしょうが、それもこじつけではと思ってしまうほどに、なんかこうもやもやしたものが残る作品でした。
ゾンビーノ Fido
2006年 カナダ (2007年日本公開)
配給 ショウゲート
製作 ブレイク・コルベット メアリー・アン・ウォーターハウス
監督 アンドリュー・カリー
出演 キャリー=アン・モス ビリー・コノリー ディラン・ベイカー クサン・レイ ヘンリー・ツェーニー