Nov 29, 2006
堀田清成作品について
かつてのブームの中で雨後の筍のように次々に発刊、発表されては消費され使い捨てられた競馬マンガ雑誌と作品の数々。
競馬マンガというものは極論すればよしだみほさんだけが別格で愚にもつかない代物が多く、メジャーですら「この作者、競馬をぜんぜん知らないのでは?」という作品が散見される始末。
かの福本伸行さんでさえ、そのロジックが構築される前であったとはいえ、「無頼な風 鉄」というお粗末なものを描いてしまった過去があるわけですしね。
そうして、競走馬やその周囲の人間模様を陳腐に浅薄に描いたドラマもどきばかりだった中で、異彩を放っていたのが堀田清成さんの作品。
むしろスポットライトを浴びることなどない世界、競馬をめぐる隙間の物語をきっちりと描いていたその作品群は、愚作ばかりの中で鮮烈に輝いていました。
予想がまるで当たらない競馬記者とノミ屋の対決。
大学を卒業したばかりの若者を待ち受けるウインズの魑魅魍魎、「社会」の洗礼。
競馬場の清掃のパートをしていたおばさんが、ゴミとなった馬券に見た人間模様。
コーチ屋に身を落とした男は、もう一度華のある予想屋に戻れるのか?
ありえないツキが訪れたときに、人はどこまで張ることができるのか?
ルドルフとノミ屋の闘いの結末。競馬に「絶対」はあるのか?
Sports Graphic Numberが、やはりこのような切り口の特集をしていたことが思い出されますが、ともあれウインズや競馬場の風景、学校や職場や雀荘といった此岸の人々を、「競馬」や「馬券」を熟知しているが故の洞察とセンスで丁寧に描いた物語が面白くないわけもありません。
また、この名前を見たときに「ヒカルの碁」や同人誌即売会「コミックカーニバル」を想起した人も少なからずいるかと思います。
その点についてはWikipediaに詳しいので割愛、また、私が読んだ「JET PLOPOST」に作品は掲載されていなかったように思うのですが、森博嗣さんやささきすばるさん、山田章博さんらとともに物語世界を紡いでいた人なのですから、志のないマンガをもはや営業という意味でのみ描いていた作家たちとは一線を画したものとなるのは当然のことでしょう。
しかしその作品は単行本化されることのないままで、野に置いたままにしておくにはあまりにも惜しいよなあ・・・と思いながら、だから私は切り抜きをいつまでも捨てることができないのでした。