Nov 15, 2006
マニアック
この作品が紹介されるときの常套句は言わずもがな、トム・サヴィーニの手による特殊メイク、その匠の技。
今ではもう、偉大なる先達の意志を継ぐフォロワーの活躍、あるいは時として唾棄すべきCGの進歩によって、特殊メイクが殊更に強調されることは少なくなってきたようにも思えるのですが、ともあれ「スキャナーズ」もかくやという頭部破壊シーンや、「死霊のえじき」なクライマックスについては、嘆息すらしよう技術の粋を堪能できるものと言えるでしょう。
しかし、作品そのものの按配はどうにも・・・といったところで。
物語のテンポや構成が悪すぎて、特にアンナが登場するまでがいかにも冗長。
また、大都会に繰り広げられる無差別殺人の狂気や恐怖は、もっとドラスティックに描いてこそ観客を高揚させつつラストシーンへと誘えるものだろう、と。
連続殺人の背景にあるものがマザー・コンプレックスであることはまあともかくとしても、その描写が甘いものであれば凡庸に堕するというもの。
あるいは、看護婦やファッション・モデルといった犠牲者、殺人の舞台や手口にバリエーションがあることには工夫が認められるものの、とりあえず脚本や演出はもっと練ろうよ・・・とか。
「僕なら永久に保存するね。」
「そのまま保存する。永久に。」
いかにジョー・スピネルが偉大であろうとも、殺人鬼が小太りというのは萎えるものがあるし、ヒロインにもいまひとつ魅力がなく、そうしてキャラクターの妙を欠くのもよろしくないところ。
そうはいっても、ディスコ・ボーイが魔の手にかかるシーンには「よっしゃ!」と思うし、人形たちに復讐されるクライマックスは否定するものではありませんが、やはりサヴィーニの特殊メイクを味わうこと以外にこの作品の意義は・・・というのが正直な感想で。
少なくとも「『ゾンビ』『サスペリア』を凌ぐ超残酷の極め付け!」と煽るコピーは勘弁、ではありますね。
マニアック MANIAC
1980年 アメリカ
配給 日本ヘラルド映画(1982年日本公開)
監督・製作 ウィリアム・ラスティグ
出演 ジョー・スピネル キャロライン・マンロー ゲイル・ローレンス ケリー・パイパー トム・サヴィーニ