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May 9, 2013

死霊のはらわた

死霊のはらわた壊れてしまった兄妹の絆。
荒んだ生活を送る妹、薬物依存症のミアの治療のため、関係を修復するために兄のデビッドは友人たちと森の中の山小屋にやって来る。そこは兄妹が母と暮らした思い出の場所だった。
ところが地下室には猫の死骸、呪術的な儀式の痕跡。「何か」が燃やされた跡。

そして、有刺鉄線で縛られた「死者の書」。

世界が熱狂したスプラッタの傑作が三十余年の時を経て今、蘇る!


キービジュアルやプロモーションから新しい設定とストーリーが提示されることは分かっていて、焦点はオリジナルの絶対的なパワーがスクリーンに再現されるか否か。
だから、あのテープレコーダーの惨劇が描かれるオープニングには高まるというもの、映像の精緻と相まってオリジナルを知っていようとなかろうと、死霊の棲む森の物語に否応なしに、観客はアッシュのように引きずり込まれるはず。

その森の木々が女性を襲うシーンは流石に再現されたものの、オリジナルを徒に踏襲しない脚本、美術や音響は丹念な仕事。鼻につかない程度にオリジナルのパロディを盛り込んだ点にも作り手のセンスが窺えるというもので、だからクライマックスやラストシーンまでしっかりと、新しい"EVIL DEAD"を供しているとは言えるでしょう。
ただ、オリジナルにあまり思い入れのない私のような観客が冷静に客観的に、このリメイクに意見をするとすればまずはゴア描写、スプラッタの甘さ。とはいえR18+のレイティングへの文句は私見でしょうからさておいて、議論されるべきはオリジナルの

アッシュという存在。

そう、再現されなかった恐怖については是としよう。不平を述べる原理主義者は老害と誹ったっていい。それでも、『死霊のはらわた』(1981)と続編への熱狂は彼についてのものではなかったか。
オリジナルを知らない観客であればいい、繰り返すけれどこれはよく纏まった作品だ。しかし、纏まっていていいのか。アッシュのポジションを女性が演じるのなら、ホラー映画の金字塔たる作品をリメイクするのであれば、ミアが新たなアイコンになるようなスラップスティックが要求されていいはずだ。そこだけが食い足りない。

だから手放しに"Groovy!"とまでは言いづらい作品ではあるけれど、パンフレットの解説や小ネタを確認するためにもう一度観たいと思わせる狡猾さもあって、サム・ライミが認めた才能は肯定するべきものではありました。
あるいはファンなら"Within the Woods"(1978)でこれからも迷い続けるのかもしれません。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

死霊のはらわた  EVIL DEAD
2013年 アメリカ
配給 ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント
製作 ロブ・タパート サム・ライミ ブルース・キャンベル
監督 フェデ・アルバレス
出演 ジェーン・レヴィ シャイロー・フェルナンデス ルー・テイラー・プッチ ジェシカ・ルーカス エリザベス・ブラックモア

Mar 10, 2013

キャビン

キャビン「山奥の湖畔に立つ山小屋へ、バカンスへと向かった5人の若者。地下室に隠された古びた本の呪文を読んだとき、森の中の何かが目覚め、彼らに襲いかかる・・・」

そんなベタな粗筋とスチールは、原題の『キャビン・イン・ザ・ウッズ』のままで上映された昨秋の映画秘宝まつりのときのもの。
内容に迂闊に触れれば即座にネタバレな作品であり、ゾンビ手帖の昨春の記事のトレーラーでも強調されなかった本当のプロットには、日本公開を目前にして公式が挑発的な惹句とともに言及。そう、「よくある」スラッシャーのはずが「監視カメラ」「仕掛け」「罠」「脱出」「生中継」「ゲーム」と来れば最近のスリラーに「よくある」展開、生き残りを賭けたゲームやスナッフビデオのような話なんだろうな、と思うはずの観客に突き付けられたコピーはと言えば。


「あなたの想像力なんて、たかが知れている」


・・・ふん。ただ徒に捻っただけの、作り手のマスターベーションをまた見せられるんじゃないだろうな。
そんな天の邪鬼な気分でスクリーンと対峙するや物語の冒頭がそもそも「よくある」スラッシャーに非ず、従い観客にいきなり提示されたのは、その先にある「絶対に予想できない」結末が分かるかい?という挑戦状。
とはいえ何も身構えて観る必要があろうはずはなく、それはもうキュートなヒロインのデイナに魅入って、登場するシーンからして死亡フラグが立っているお調子者、マーティの講釈になるほど、プロットを序盤で提示するわけだなと感心して、機知に富んだ科白とテンポのよい展開、パロディやオマージュを観客は楽しめばいいだけ。

しかし、若者たちが山小屋に到着したときの、そして地下室の扉が開いたときの、『死霊はらわた』との構図の相似に何かを推察できた人こそが真のホラー映画通。

それが観客の想像力の先を、と作り手が企図したもので、うん、クライマックスはもう一度劇場で、BDで確認したいなあ、と思うものではありました。
ただ、そのクライマックスだけがちょっと冗長、あるいは詰め込みすぎ、スラップスティックに突入する契機にこれ、組織が間抜けすぎないか?と思ったのもまた事実。シッターソンの最期の言葉や、シガニー・ウィーバー登場のサプライズには高まるけれど、それらをより巧みに織り交ぜて叩き付けて、ラストシーンに誘うようなグルーヴが欲しかったところ。そのラストシーンも何かこう・・・と貶そうと思えば貶せるものですが。

とはいえ、今年前半に公開されるホラー映画の注目作のひとつとしては上々の出来。
劇場には聞こえよがしに笑い声を上げるホラー映画通がいたけれど、さすがは『クローバーフィールド/HAKAISHA』のスタッフ、そこまでではないライトな層も、映画秘宝だからなあ・・・と懐疑的な向きも、楽しませてくれる作品とは言えるでしょう。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

キャビン  THE CABIN IN THE WOODS
2012年 アメリカ
配給 クロックワークス
製作 ジョス・ウェドン
監督 ドリュー・ゴダード
出演 クリステン・コノリー クリス・ヘムズワース フラン・クランツ リチャード・ジェンキンス ブラッドリー・ウィットフォード

Jan 21, 2013

ロンドンゾンビ紀行

ロンドンゾンビ紀行都市開発という名の、古き良き街の破壊。
その工事現場で発掘された集団墓地から災厄が解き放たれようとしていた時。
経営危機で閉鎖されようとしている老人ホームで暮らす祖父のために、冴えない生活を送っているマクガイヤー兄弟は従妹のケイティや地元のならず者たちと銀行強盗を企てていた。

そしてロンドンの街に、老人ホームに、ゾンビたちが襲いかかる。
大好きな祖父のための銀行強盗と救出作戦は成功するのか?


ヒューマントラストシネマ渋谷のトークショーでわたなべりんたろうさんが「Twitterで『紀行してないだろ』と言われてますが」と笑った、イギリス製のゾンビコメディが比較される作品はもちろん『ショーン・オブ・ザ・デッド』。ジョージ・A・ロメロが賛美したエドガー・ライトとサイモン・ペッグの感性に及ぶことができるかどうか、それが焦点だった観客は少なくないはずでかく言う私もそのひとり。

封印された死者を甦らせてしまったアバンタイトル、ブリティッシュロックが響くオープニング。
そして物語は『ショーン・オブ・ザ・デッド』よろしく情けない青年たちを中心にドタバタと、どこか間抜けに展開。『ブレインデッド』を連想する赤ちゃんゾンビのくだりでは劇場に笑い声が上がって、ゾンビの集団がフェンスを破壊して雪崩れ込むシーン、ヒール役を引き裂くシーンは『死霊のえじき』へのオマージュだろうなとマニアも納得、小技の効いたギャグもなかなか。ほとんど歩けない老人がゾンビから逃げるシーンの機知に感嘆した向きは多いようで、はたしてラストシーンまで楽しんで観られる作品だとは言えるでしょう。

ただ、手放しで誉めるのはどうか、食い足りない印象があったこともまた事実。
たとえば人物描写が甘いこと。映像とカット割りが多士済々な登場人物たちを捉え切れていない、だから観客が物語をただなぞるだけに陥ることが懸念される。無意味なスローモーションも疑問に思うところ。そもそもはCMディレクターだった監督の初の劇場用映画と聞けばなるほど、ザック・スナイダーのようなものかと納得する話ですが。プロパガンダで期待した、老人たちがゾンビを殺戮するシーンもそれほどのものではないですしね。
そして何より、老い先の短い老人と、もちろん死んでいるゾンビとの戦い、対比というコンセプトがあるのなら脚本と演出には丹念な仕事が要求されるというもの。さらに、人間にとって脅威であるゾンビを、街や生活を破壊しようとする経済社会の暗喩とするなら、ましてしっかりと絡めて描かなければいけない。そうした点については力不足であったことは否めません。

とはいえ全篇に漂うゆるさはとにもかくにも心地よくゴアも上々。ゾンビはのろのろと歩き、頭を狙うのは「常識よ」ではさすがに爆笑、ロメロ原理主義者なら腹が立つこともない出来ではあるので、『ショーン・オブ・ザ・デッド』のショーンとエドのように、ビールを飲みながらだらだらと観るのがお勧めの佳作です。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

ロンドンゾンビ紀行  Cockneys vs Zombies
2012年 イギリス
配給 彩プロ
製作 ジェームス・ハリス マーク・レーン
監督 マティアス・ハーネー
出演 ハリー・トリーダウェイ ラスムス・ハーディカー アラン・フォード ミシェル・ライアン

Nov 24, 2012

さようなら、シアターN渋谷。

館員さんに許可をもらって撮影しましたかねてから噂のあったシアターN渋谷の閉館が、日本出版販売から正式に発表されたのは9月20日(木)のこと。
嗚呼、その日がついに・・・とホラー映画マニア全員が悲観に暮れてから2か月あまり、12月2日(日)がやって来ようとしています。

ホラー映画なんて本来ニッチ。しようのない話ではありますが、カタギのみなさんが知らない、知る必要もないろくでもない、だけど愛すべき作品をかけてくれたここがなくなってしまうのは・・・「バイオハザード」や「パラノーマル・アクティビティ」は勝手にやっててくださいなとか言うつもりは毛頭ありませんが、どうしようもない絶望感がありますね。

そう、ホームシアターに毛が生えたような設備と残念な音響、前の座席に人がいるとスクリーンの字幕が余裕で読めない、空調の音がやかましい、シネマスコープの作品なのにビスタサイズのスクリーンになっていることに気付かない映写、等々は瑣末なこと。都内最悪の映画館と言われようと、春には桜が咲き誇る坂道を、我々は胸を躍らせて上ったものです。

核実験の被曝による畸形が映るオープニング、そうしたストーリーであるために日本での劇場公開が絶望的だったアレクサンドル・アジャの"THE HILLS HAVE EYES"の上映が決定したときの歓喜。
あるいは、ダリオ・アルジェントの"MOTHER OF TEARS"は一体いつになったら・・・あ!ロビーの自動販売機にさりげなくポスターが!といった驚愕。

そんなときめきがこの映画館にはあったのです。

この坂をー上るたびーホラー映画なんて悪趣味なもん観ねえよと仰るシネフィルのみなさんも、そこのところは同意してくださることでしょう。
ここがなくなってもうすぐ銀座シネパトスもなくなって、テアトルシネマグループにはいまひとつ期待できない、ミニシアターが斜陽の状況下でシネマカリテをオープンさせる武蔵野興業も気まぐれでは、マイナーなホラー映画をマメに上映してくれる映画館なんかもう!ロブ・ゾンビの"THE LORDS OF SALEM"はどこがかけてくれるのかな・・・とかさ!

それはそれとして。

7年間、お世話になりました。ホームシアターに毛が(中略)だけど、我々はほんとうに楽しませてもらいました。
シアター2が満席になったのは「ゾンビ HDリマスター/ディレクターズ・カット版」のトークイベントがあった回と、あとはあの「隣の家の少女」しか覚えがなくて、「ここ数年の市況の厳しさとも相俟って、中期的な展望を見出すことは難しく、残念ながら事業撤退の決定に至りました」ももっともですね・・・とは思いましたが、またいつの日にか、お逢いできることを祈っています。

続きを読む "さようなら、シアターN渋谷。"

トールマン

トールマン閉鎖した鉱山、死んだような町。
そんな炭坑町コールド・ロックから子供たちが次々に消えてゆく。

陰鬱な陰に覆われた町で亡夫が遺した診療所を切り盛りするジュリアは、目の前で息子を連れ去った何者かを追いかける。
しかし、傷だらけになって辿り着いた町外れのレストランに集う見知った住民たちの態度は不可解で、そして息子が連れ去られた場所を突き止めた、その先に在ったものは・・・


シアターN渋谷クロージング作品。
ホラー映画が選択されたことは喜ばしいけれど、「マーターズ」のパスカル・ロジェ監督作品というのは、と思った向きは少なくないはず。オープニングと序盤の展開、そして物語に込められたまなざしの高さは認めようと、同作品の出来は誉められたものではありません。

ではこの作品はどうかと言えばまったく同じ。上述の拭えない先入観はあっただろうけど、オープニングは絵も構成も心憎いほどに巧いなあ、序盤の丹念な演出は物語への期待感を高まらせるよなあと思うも、いざ物語が加速を始めてからはどうしようもなく冗長。覆面を被った侵入者との追跡劇でそうした精緻をいきなり欠いてそのあとも、例えばこの構図は映画作品としてどうなんだとか、ただ不快感が募ってゆくばかり。

それは叙述トリックを織り交ぜたツイストが発生してからも同様、むしろ悪化。
そう、ただのスリラーからこの監督ならではの哲学や、性質を異にする物語に転化してからもなお畳みかけるようなスピード感はなく、さりとてフレンチホラーならではの空気も流れずでは辟易するしかないでしょう。

子供が失踪する意味を、だから「トールマン」は何者なのかを。そして「母」を。

もっと技巧に長けた監督が描いていたら傑作になったのに、と嘆息するしかありません。
ただ、新世代のホラーアイコンと言われるジョデル・フェルランドが演じるジェニーは出色のキャラクター、作品もまあ「マーターズ」より上とは言えるのでそこまで貶さなくてもいいかもしれません。次作以降の、ダリオ・アルジェントがプロデュースする予定のミステリーに期待をしてもいいでしょう。

でも、シアターN渋谷にはもう少しだけ持ち堪えてもらって、ロブ・ゾンビの"The Lords of Salem"がクロージング作品であったなら、というのが正直なところです。


(文中、ネタバレは背景色にしています)

トールマン  The Tall Man
2012年 アメリカ・カナダ・フランス
配給 キングレコード
監督・脚本 パスカル・ロジェ
出演 ジェシカ・ビール ジョデル・フェルランド スティーヴン・マクハティ

Jul 8, 2012

先生を流産させる会

先生を流産させる会退屈な思春期。
田舎町の女子中学生にとって、女教師の妊娠はニュースだった。

ミヅキは学校の飼育小屋で餌を食むウサギを殺す。笑う少女たち。
「何が可笑しいの?」と、グループのリーダーである彼女は応えて、そして訊く。

「サワコ、セックスしたんだよ。気持ち悪くない?」


愛知県半田市の中学校で11人の男子生徒が起こした実際の事件を、女生徒にアレンジして製作された物語はオープニングの不快なシーン、何処か錆び付いたような田園を少女たちが歩く光景にはじまって、さて、どのように「最凶の、教育映画」を見せてくれるのか。

サワコは決していい教師ではなく、そうであろうと努力する風情もなく、女生徒たちとの対峙はまず「女」としてのそれが描写される。
「先生を流産させる会」の隠れ家は廃墟のラブホテルであり、ミヅキの生理のシーンを汚いものとして描き、グループの離散の理由が男性教師であることは、もちろん「性」を意識していよう。

しかし、オープニング、スーパーで幼女にカートをぶつけようとするシーン、そしてあの結末は。
電話が繋がらない家庭に暮らすミヅキと、生徒だからと容赦することのないサワコの対決。それは「人間」と「生」を問うものだったはずだ。


「生まれる前に死んだんでしょ。いなかったのと同じじゃん」


ミヅキが殺そうとしたものは何か。この作品はそれを描こうとしたのではなかったか。ならば曖昧だ。
生理的に不快な物語に慣れている、女生徒たちの残酷さに嫌悪感を抱けないという私見はあろうが、学校が学校であろうとする、モンスターペアレントのシーンなどは蛇足に思えてならない。ならば尺を長くして、いじめの問題もきっちりと盛り込めばいいじゃないか。しっかりとした脚本と演出で、そこだけがまた凡庸な描写にならないように。あるいは指輪のくだりのように、とってつけたような伏線を張らずに。

そう、実話が基であればドキュメンタリーの体で、緊張感の途切れない構成であればよいものを、スクリーンに映されていたものはそんな凡百のフィクション、魅せられることのないファンタジーだった。


(文中、ネタバレは背景色にしています)

先生を流産させる会
2011年 日本
配給 SPOTTED PRODUCTIONS
監督 内藤瑛亮
出演 宮田亜紀 小林香織 高良弥夢 竹森菜々瀬 相場涼乃 室賀砂和希

Jul 1, 2012

1+1=1 1

1+1=1 1(イチタスイチハイチ イチ)なんでもない、いつもの1日。

光と陰。静寂と雑音。破壊と再生。
精緻な物語世界は、いつも混沌の中に浮かび上がる。


それが矢崎だ。


記憶喪失になった兄、恋人になりたかった妹。うさぎと少女の寓話。
ドイツからやって来たバレリーナ、日本から恋人を探しに来た女優。ロンドンで紡がれる「ジゼル」。
その公開を記念して上映された「三月のライオン」(1991)と「花を摘む少女と虫を殺す少女」(2000)との対比も愉悦、矢崎監督の新作には、たった66分であることを感じさせない濃密な時間が流れていた。

壊れそうなこの世界で、人間はただ生きている。

何処にも行けない風俗嬢も、愛する者が自殺した中年男も、毎日壊しているからこそ人に優しくなれる解体業者も。自分のことが嫌いだから、自分のことを好きだと言う男も嫌いな女子高生も。
どうしようもなく凡庸な人々の日常を描いているだけなのに、なぜ観る者の心を抉るのか。それは登場人物の内に在るものがオーバーラップするから、スクリーンに投影されている世界が絵空事ではない、リアルだから。

ハルオもアイスも、ヴェロニカもカホルもサイモンもカズオも、だからただのフィクションではないのかもしれない。特異な物語ではない、あなたたちとおんなじなんだ。矢崎作品は静謐で狡猾だ。
しかし、じゅうぶんに理解する暇など与えられないままに上映は終わり、はたして観客には暴力に遭ったような感覚が残る。そして舞台挨拶で矢崎監督はぼそぼそと、「私の作品は観てすぐに泣ける、何かを感じるものではありません」と語った。「何度も観てください」と、恥ずかしそうに言った。

ああ、そうだ。私が「風たちの午後」(1980)に涙を流したのは、2度目に観たときのことだった。


(文中、ネタバレは背景色にしています)

1+1=1 1(イチタスイチハイチ イチ)
2012年 日本
製作・配給 株式会社映画24区
監督 矢崎仁司
出演 喜多陽子 粟島瑞丸 松林麗 気谷ゆみか 田口トモロヲ

Feb 11, 2012

ゾンビ大陸 アフリカン

ゾンビ大陸 アフリカン死者が甦り生者を喰らう。
任務を放棄して脱出する米軍機は墜落、海辺に漂着した機械技師を軍人は見捨てて遁走する。
勇敢で賢明な西アフリカ軍人は故郷の惨劇と息子の無事を知る。

やがて邂逅するふたり、ゾンビが溢れる地獄に思想などいらない。
絶望的に広大なサハラ砂漠、終わりが始まった世界で、愛する者の元へ。希望を求めて。


「ドーン・オブ・ザ・デッド」アンチのゾンビ映画ファンは派手なドンパチなど求めない、「それはアクション映画にすぎない」と批評した、ロメロ原理主義者である監督たちのまなざしは確かに高い。
だから宣伝が謳うようにゾンビ映画の原点から終末を、人間の弱さと強さを描こうとした姿勢は理解するけれど、それは理解しようと務めればこそ、観客に響いているかどうかは疑問です。

物語の冒頭や、ブライアンとダニエルが出会うシーンは上々、飛行機の墜落やゾンビに襲撃される村のシーンと絡んで静かに残酷に展開するものの雑に感じた構成や演出、そして嫌な予感が的中して。
そのあとは、ゾンビがいないかどうか確認しては逃げるだけの起伏も妙もないふたりの道中が延々と続くだけ、技量を欠く演出では人間の傲慢や淘汰といった哲学が伝わって来ない、練られていない脚本は呪術医を登場させながらブードゥー教を織り込まない。
「28日後…」でさえ散漫と批判されることがあるのだから、ロードムービーの体であれば作り手にはより丁寧な仕事が要求されるはず、精緻に描かなければならない別離のシーンまでが唐突で間抜け過ぎでは誉めようがありません。

そう、ストーリーそのものはいいんだけど希望も絶望も達観も哀切も何もかもが薄い、スクリーンに浮かんで来ない。
クライマックスにしても基地のパニックを、アメリカの絶望を、妻子の悲報を畳みかけるように描写できていたなら、それでこそあのラストシーンが決まるというものでしょう。

予告編に惹かれなかったことも観終えてみればもっともだったなと思いながら、公開されて日が経つとはいえ観客が僅か8人だったシアターN渋谷のシアター2を出ると、レイトショー上映のみではあるけれどシアター1の「セルビアン・フィルム」は盛況、その対比にはただ納得するだけでした。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

ゾンビ大陸 アフリカン  THE DEAD
2010年 イギリス (2012年 日本公開)
配給 インターフィルム
監督・脚本 フォード・ブラザーズ(ハワード・J・フォード&ジョン・フォード)
出演 ロブ・フリーマン プリンス・デビッド・オセイア デビッド・ドント

Jan 30, 2012

セルビアン・フィルム

セルビアン・フィルム引退したポルノ男優。
現役時代の絶倫と喝采は昔話、今はよき夫でありよき父である彼に降って湧いた儲け話、それは海外市場に向けた大掛かりなポルノ映画への出演依頼だったのだが・・・

脚本もなく内容も明かされないままに始まった異常な撮影、男優にはその狂気を理解して、逃亡する暇は与えられなかった。


宣伝の惹句は「拷問ポルノ」、しかしR20のレーティングはゴアや性的な描写だけが所以ではなく、その倫理性。
映画祭での上映が中止になり、UK版DVDのリリースにあたってカットされたシーンがあることはもっともで、こうしたゲテモノ映画に慣れているであろうシアターN渋谷の観客がしばしば発した息を呑む音が、この作品の凄まじさの証明と言えるでしょう。

ただ、物語は静かにはじまります。異常性もそうは見せずに。
もちろんポルノがテーマであれば胡乱に進行するのですが、やがてゆっくりと異常性が発露する、少女に性的なシーンを見せつけることに激昂する男優はだから正常の象徴であるわけです。
そしてはじまる暴力と殺人は序章に過ぎず、「スクリーン」に投影されるまさかの光景・・・それは男優にとっても観客にとっても!

だってあんなシーン、数多のホラー映画にも!

そして物語は加速してクライマックスへ、それが男優のフラッシュバックとデジタルカメラのモニターに映し出される脚本と演出は見事、薄汚れた部屋のベッドの膨らみを見ただけで、これから繰り広げられるであろう悲劇を予想して反吐が出ようというものです。

では、異常者が制作しようとした「ポルノ」とは何なのか。
それがラストシーンであり、それは「ポルノ」が背徳であること、だから「ポルノ」で国家を破壊しようという


狂気。


ということでプロットと構成から「ホステル」を連想するわけですが、あちらには作り手のマスターベーションが垣間見えた以上本作のほうが上質、どうしようもない不快感だけを取ってみても明らかに上。
方向性がやはり類似する「マーターズ」は流石に難点があるからやむをえないところでしたが、この作品はレイトショー公開ではもったいない傑作だと褒めちぎることにします。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

セルビアン・フィルム  A SERBIAN FILM
2010年 セルビア (2012年 日本公開)
配給 エクリプス
監督・脚本 スルディアン・スパソイエヴィッチ
出演 スルディアン・トドロヴィッチ スルディアン・スパソイエヴィッチ セルゲイ・トリフュノヴィッチ エレナ・ガブリロヴィッチ

Jul 31, 2011

ムカデ人間

ムカデ人間シャム双生児の分離手術の権威、引退した外科医。
彼の夢は数人の人間の口と肛門を繋いで一個の生命体を、ムカデ人間を創ることだった。

そしてドイツ郊外の深い森に、外科医の屋敷に囚われたアメリカ人女性のふたり連れと日本人男性は・・・


そんなプロットなら観客が期待するのは過激なグロと強烈な狂気、喧伝されたカルト性。
だから静かなオープニング、繋ぎ合わせた犬の写真を外科医が鼻を鳴らしながら見つめているシーンはいい感じに思えたし、リンジーとジェニーの車がパンク、森の中で往生しているところにやって来た猥雑な中年男なども、これからはじまる悪趣味な物語への期待を高めるものだったのですが。

リンジーとジェニーに睡眠薬を盛って監禁するまでのシーン、すでに捕らえていた男性を手術に適合しないからと淡々と殺害するシーンで早々に湧いた嫌な予感は的中、どうにも薄いんですよね。
それだけの映画では詮ないけれど、スカトロでグロテスクな描写がもっとあってもいいと思ったし、何よりストーリーに相応しい狂気が描かれていない、そうした演出になっていないことが難点。

たとえば、シャム双生児の分離手術を施すうちに、人間を繋ぎ合わせたいという逆の欲求がどのように募ったのかの描写は必要だったように思うし、カツローの懺悔の所以、その過去を提示していないのではクライマックスの見せ場、外科医を絶望させる選択に唸ることなどできません。

また、劇場内に笑い声が上がるシーンはあったけれどコメディ要素も中途半端、ムカデ人間の逆襲で足を切られた外科医が自分まで這うしかなくなる展開も、いい加減疲れて観ていればそのアイロニーを楽しむ余裕はないというもの。刑事も間抜けすぎるしさ!

そうしてリンジーとジェニーが手を繋ごうとする健気、相当に上手いシーンまでもが観客に響くこともなく、脚本にもっと丹精を込めていたのなら、演出にもっと技量があったなら、それこそカルトな傑作になったろうにと溜息をつくしかありませんでした。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

ムカデ人間  The Human Centipede (First Sequence)
2009年 オランダ・イギリス (2011年 日本公開)
配給 トランスフォーマー
製作 イローナ・シックス トム・シックス
監督・脚本 トム・シックス
出演 ディーター・ラーザー 北村昭博 アシュリー・C・ウィリアムス アシュリン・イェニー

Jun 13, 2011

アリス・クリードの失踪

アリス・クリードの失踪綿密に準備された誘拐計画。
刑務所で知り合った中年男と青年は富豪の一人娘を、計画に微塵の狂いも生じさせることなく誘拐して監禁するのだが・・・

1発の銃弾、携帯電話。キス
それぞれの嘘。

200万ポンドを手に入れるための計画は、生と死と愛を賭けて次第に歪み、狂ってゆくのだった。


キャストは掛け値なしに3人、プロットはシンプル。
プロモーションでダニー・ボイルやクリストファー・ノーランの名を引いたことはあざとくはなく、過度な演出を排斥して、緊張感を高めるために普遍的な映画表現さえも省略したイギリス発のソリッドシチュエーション・サスペンスは、作り手のまなざしの高さが窺える作品ではありました。

オープニングの10分間のカメラワーク、演出の巧みさで物語に引き込まれた観客にその後サプライズを与えるタイミングが上々、光と陰を意識した撮影の丁寧さにも唸るところがあったので、私はいい気分でスクリーンに見入っていたのですが。
公開初日のヒューマントラストシネマ有楽町の最終上映、物語の終盤で欠伸や溜息が聞こえてきた、たしかに退屈に思う向きは少なくないだろうとは私も思った、その理由は何か。

物語の登場人物と舞台を限定することによる緊張感、それは有無を言わせない演出力、さもなくば他者が倣うことの叶わない感性があればこそで失敗すればただ退屈なだけ、あの「SAW」だってバスルームだけで物語が展開したわけではありません。
あるいはこの作品の惹句に躍る「嘘」、そのひとつひとつに拠ってヴィックの、ダニーの、アリスの内に猜疑心が湧いて・・・という展開も、登場人物たちがそれでいちいち右往左往するのはどうなんだと貶してもよいと思うのです。

そう、例えば身代金の交渉をヴィック一人でしていることも何かの「嘘」、物語の仕掛けなのではと思っていたらさにあらず、ミスリードで観客を陥れる狡猾さがあったほうがとも思ったし、中盤以降は劇的なツイストが繰り広げられていないのでは。
あの結末とクレジットにはなるほど、と感心はしたけれど、ならばアリスの人間描写、どんな生活を送っていたのかの明示が必要だったはず。それは1~2分程度の描写でじゅうぶん、映画表現とはそういうものでしょう。

ただ、たとえ「ハイテンション」が作品単体では批判されようともアレクサンドル・アジャの才能は否定できなかったように、紛れもない駄作の「ディセント2」(共同脚本)から進化を遂げたJ・ブレイクソンは肯定するべきではありましょう。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

アリス・クリードの失踪  The Disappearance of Alice Creed
2009年 イギリス (2011年 日本公開)
配給 ロングライド
製作 エイドリアン・スタージェス
監督・脚本 J・ブレイクソン
出演 ジェマ・アータートン マーティン・コムストン エディ・マーサン

Mar 6, 2011

コリン LOVE OF THE DEAD

コリン LOVE OF THE DEADその日、世界が終わり、僕はゾンビになった。
でも、僕は行かなければならない。死に満ちて、壊れた街を彷徨いながら、

あの場所に。


製作費45ポンドはその内訳、製作の過程を知るに眉唾でもなく、スタンダードサイズの映像が投写されるやこのご時世にHDですらないのかと吃驚して、なおのこと納得してしまうというもの。
16ミリで製作するには機材とフィルム代が大層だった時代を考えれば、こうして若い才能が突然脚光を浴びるためのハードルが低くなったことは、かつて老害が跋扈するのみだった映画界にとって喜ぶべきことでしょう。

ただ、本作の出来はどうか。
既存の作品とは違うものを作ろう、ゾンビになった青年の主観で物語を紡ごう、その発想は是としよう。
低予算だから、凝ったセットやギミックは使えないのだからとセンチメントを打ち出すのなら、では、数多のゾンビ映画が供してきた恐怖を踏まえた上で、何をどう描いたというのか。

なにより人間の醜悪と滑稽を描くことができていないでしょう。

そう、ゾンビの目線でという割には普遍的な、ストーリーを俯瞰した演出にしか見えない。コリンの家族が悲観に暮れるシーンですらそうでは才気がまるで感じられない。
ドラマ性の希薄さはあるいは意図したものかもしれないけれど、ならばコマ落としやブレる映像の処理、インサートされる風景の意味は何処にあるのか。

それでもラストだけは、なるほど、人間の儚さを描いた本作最大のセールスポイントだから唸るものではあったけれど、シアターN渋谷のトークイベントでの江戸木純氏の発言、「ロメロファンなら泣けるはず」までのものでは・・・と。
だからその江戸木純氏の手による日本語字幕、新聞記事の見出しに躍る“The Dead Walk!”が「死者が歩いた!だったことに苛立つほど狭量にもなろうというもの。

自主映画並みの低予算と言えば「パラノーマル・アクティビティ」、ゾンビ映画ですぐさま思いつくところでは「ミート・マーケット」。
それらの作品は声高に貶すことのない私ですが本作は、製作の特殊性という色眼鏡で見ようともどうにも口に合わず、だからたとえばサム・ライミの8ミリ作品“Within the Woods”を観た人ならどのような感想を抱くのかが気になるだけで、これ以上の感想はありません。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

コリン LOVE OF THE DEAD  COLIN
2008年 イギリス
配給 エデン
製作・監督 マーク・プライス
出演 アラステア・カートン デイジー・エイトケンズ タット・ウォーリー リアンヌ・ペイメン

Nov 6, 2010

実写映画「マリア様がみてる」

実写映画「マリア様がみてる」純粋培養されたお嬢様たちが集う私立リリアン女学園の「姉妹(スール)制度」。
ロザリオを絆として姉妹になることを誓って、姉である上級生は妹である下級生を指導して、そして妹は。


 祥子 「祐巳!あなたを私の妹にしてみせるわ!」


ふとしたことから全校生徒の憧れの的、小笠原祥子と知り合った福沢祐巳に非日常が降りかかる2週間の物語、ライトノベルの人気シリーズのこの第一作が刊行されたのは1998年のこと。
なんでいまさらとはファンの誰しもが思ったはずながらどのように実写化されるのかは興味深く、小さな箱とはいえ公開初日のテアトルダイヤのシアター2はしっかり満員。

だから開演して冒頭の、映画館でのマナーを祥子様が説くアニメ「マリア様のたしなみ」に館内にくすくすと笑い声が湧いたあとの本編、祐巳のモノローグが始まるや席を立とうとする人がいることもなく。
キャストの演技力に触れるのは野暮というもの、棚上げにしてしまえば原作にかなり忠実な実写化なので声高に不満を述べることもない出来ではありました。ただ、


「マリア様がみてる」とはどういう作品なのか。


多数のティーンズモデルを配したはいいけれど、髪型や制服をあまりにも忠実にスクリーンに投写してしまってはさすがに浮世離れに過ぎ、文字通りに絵空事であるアニメーションやコミカライズとは異なるアレンジが必要だったはず。
そして、少女たちの「こころの機微を」「精緻に詩情豊かに」描かなくてもいいから、そうした物語での凡百の表現に擬えなくていいから、この作品に内包されているエンターテインメントを表現できたなら。

低予算だから、短期間での製作だから、ジョリー・ロジャーだからというのは言い訳でしかなく、見え隠れするのは作り手の怠慢、脚本やコンテには丹精と意地を込めてほしかったところ。
校舎や講堂、教室や廊下といったリリアンの光景がパンする映像もなおざりで、撮影や照明の技量の欠如を嘆きこそすれ、観客がそれを看過しなければいけない筋合いはありません。木々の緑が綺麗に見えない映画なんて珍しいでしょう?

中原俊監督の「櫻の園」。
ベクトルはまるで異なれど、1990年のキネマ旬報ベスト・テンで小栗康平や松岡錠司、北野武を抑えて第1位を獲得した名作が引き合いに出されるような作品にできたかもしれないことを、エンドロールを眺めながらつい夢想してしまいました。


実写映画「マリア様がみてる」
2010年
配給 ジョリー・ロジャー リバプール メ~テレ
原作 今野緒雪
監督 寺内康太郎
出演 波瑠 未来穂香 平田薫 滝沢カレン 秋山奈々 坂田梨香子 高田里穂 三宅ひとみ

Oct 30, 2010

ソウ ザ・ファイナル 3D

ソウ ザ・ファイナル 3D
「ゲームオーバー」を最後に言うのは誰なのか。


ついに完結するソリッド・シチュエーション・スリラー「ソウ」。
奇跡のような第一作にはじまった、「生」をめぐってジグソウが、後継者が仕掛けるゲームの物語の結末はどのようなものになるのだろう?

映画会社にとってのドル箱の続編はたとえ凡庸に堕そうとも、ビリーがケラケラと笑い、「Hello Zepp」が流れるファンタスティックは、ハロウィンの季節にファンを楽しませてくれたわけですが、はたしてこの完結編は・・・3Dゆえの揶揄ではなしに、とにもかくにも平板で。

たとえば交錯する時間軸、ジグソウとアマンダのラブ・ストーリーを描いたIII、登場人物のトリックと、ジルとFBIがホフマンを追い詰める緊張感が心地よいVI。
物語の結末にはそうした奸計と精緻が求められたというのに、シリーズのテーマである再生をどのように描くかが注目されたというのに。


ジルとホフマン。
クレジットされたケアリー・エルウェズ=ドクター・ゴードン。


ジグソウの傀儡たる彼らのせめぎ合いをきっちりと構成できたなら、駄作が混じっていようともこのシリーズは喝采されたものをと、ただただ残念でなりません。

だから白昼に群衆の眼前で仕掛けられたゲームも、ホフマンの警察への侵入方法も小手先にすぎないもので、むしろ腹立たしく思えるほど。あと、「ホフマンを信用してはいけない」という教えを暗い瞳の中に宿していたジェフの娘はどこで登場するのだろう・・・と最後の最後まで期待していましたよ、私は!

まあ、ジルがホフマンに直接的には敗れるといった意外性や、3D作品にありがちなわざとらしい演出は少なめ、しかし観る人がみな期待したはずのモノが飛び出したことは上々とは言えますが、ともあれ最後に告げられた「ゲームオーバー」にはなんら感慨はありませんでした。


(文中、ネタバレは背景色にしています)

ソウ ザ・ファイナル 3D  SAW 3D
2010年 アメリカ
配給 アスミック・エース
製作 マーク・バーグ オーレン・クールズ
監督 ケヴィン・グルタート
出演 トビン・ベル ケアリー・エルウェズ コスタス・マンディラー ベッツィ・ラッセル

Jun 19, 2010

ハロウィンII

ハロウィンIIFAMILY IS FOREVER

マイヤーズ家の惨殺事件に始まるハドンフィールドの悪夢は終わったはずだった。
死体が消失しようと、シリアルキラーは葬られたはずだった。

だからローリー・ストロードが夜ごと見る夢は。
それはただの夢なのか。それとも血の絆なのだろうか。


マイケル・マイヤーズの慟哭、ロマンティシズム。

ロブ・ゾンビが描く「ハロウィン」はジョン・カーペンターへの、オリジナルへの敬意を欠くことなしに、新たな解釈を施した上で現代にマイケルを甦らせたもの。
そのまなざしは高く、だから前作も賛否両論はあろうけれど全否定できない作品ではありました。
ただ、個人的には喰い足りない思いがあって、この続編に期待はしていなかったのですが・・・やってくれましたよ。

幻想的な映像と叩きつけるような暴力描写、それらとサウンドとのコンビネーション。
イリノイ州の田舎町で繰り返される惨劇は、コマーシャリズムに堕した心理学者、ストロード家やローリーの女友達と交錯して、やがて兄妹には邂逅の時が来て・・・
スラッシャームービーの歴史に名を刻む傑作をリメイクすることに気負いがあったのか、その感性が縮こまった印象が強かった前作とはうって変わって、そうした全篇を通して溢れるロブ・ゾンビの真骨頂!

そして迎える血の物語の終焉は、ローリー・ストロード、いや、エンジェル・マイヤーズの瞳の中に・・・

チャールズ・マンソンやら「悪魔のいけにえ」やらといった遊び心も楽しく、だからあんまりな死亡フラグをはじめとした突っ込み所はあるけれど、看過しようと鷹揚な気持ちにもなれるというもの。
ただ、「白い馬」をめぐる映像はやはり好き嫌いが分かれるはずで、「デビルズ・リジェクト」よりも「マーダー・ライド・ショー」に惹かれた向きであれば楽しめるはずだけれど・・・と、いちおう難点にも触れてはおきますが、これだけは最後に言いたいのです。そう、


ロブ・ゾンビはついに「マイケル・マイヤーズ」を手に入れた。


(文中、ネタバレは背景色にしています)

ハロウィンII  HALLOWEEN II
2009年 アメリカ (2010年日本公開)
配給 ショウゲート
製作 マレク・アッカド アンディ・グールド
監督・脚本・製作 ロブ・ゾンビ
出演 スカウト・テイラー=コンプトン タイラー・メイン マルコム・マクダウェル シェリ・ムーン・ゾンビ

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デビルズ・リジェクト~マーダー・ライド・ショー2
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Jun 12, 2010

サバイバル・オブ・ザ・デッド

サバイバル・オブ・ザ・デッド死者と生者、生者と生者が殺戮を繰り返す世界。
疲弊した州兵は隊を捨て、強盗すら厭わずに安寧の地を求め彷徨い、ある島では死者の対処を巡って島民同士が、有力者同士が諍いを苛烈にして。

生き残れ、世界の終わりを。

でも、「生きる」とはどういうことなのか?


「ダイアリー・オブ・ザ・デッド」に記録されたキャラクターで紡ぐリビングデッド・サーガの新作は、ファンのアイデアやリクエスト、西部劇のテイストを盛り込んだ、サービス精神旺盛なものだという前評判。
そこにロメロならではの語り口の妙が加わって、ファンを魅了してやまない物語世界がまた供されることになるだろう、ゾンビ映画の神に心酔している向きはみなそう期待していたはず・・・・・・なのに、


いったいこれは何事なんだ?


ロメロがまず重視することは「チケット代金に見合うエンターテインメント」。
だけどその作品において、ゾンビはトリックスターにすぎないのではないか、スクリーンに繰り広げられるファンタスティックは、じわじわと終末に向かおうとしている現代社会のメタファーではないのか?
それは本人の弁にもあるように明白で、だからこそ熱烈な支持を受けてきたというのに。

崩壊してゆく世界で絶望する人間、強くあろうとする人間。
その絶対的相対的描写を放棄してはドラマ性は甚だ希薄、ましてこのタイトルで!
滔滔と粛々と、人間の矜持を描き続けてきたストーリーテラーが何故こんな凡庸、愚鈍に堕するのか?

本作で描こうとした戦争の滑稽や、そんな世界を生き残ることの意味はおそらくは観客には伝わらず、だから新機軸のゾンビ破壊シーンも、知能を有するゾンビも動物を食べるゾンビも、「死霊のえじき」を想起するクライマックスもただただ空しいだけ。
母が編んでくれた帽子云々のエピソードはああ、上手いなとは思ったけれどそんなこと、ロメロなら当然でしょう!

さらに言えば、厭世的な主人公に特段の魅力などなく、だからまた「ダイアリー・オブ・ザ・デッド」からのスピンオフが製作されようと期待など抱きようがなくて・・・
それでも、上映後のしんとした、観客の少ないシネマサンシャイン池袋で私は、次作がこんな凡作にならないことを祈っていたのでした。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

サバイバル・オブ・ザ・デッド  SURVIVAL OF THE DEAD
2009年 アメリカ (2010年日本公開)
配給 プレシディオ
製作 ポーラ・デボンシャー ピーター・グルンヴォルド アート・シュピーゲル
監督・脚本・製作 ジョージ・A・ロメロ
出演 アラン・ヴァン・スプラング ケネス・ウェルシュ キャスリーン・マンロー デヴォン・ボスティック リチャード・フィッツパトリック


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Mar 14, 2010

隣の家の少女

隣の家の少女交通事故で両親を失った姉妹が引っ越してきたその夏。
少年が淡い恋心を抱いた可憐な少女は、夜の観覧車で呟いた。

 「世界がすべて見えそうね」

郊外の閑静な町は、けれど少女に新しい世界や眩い未来を見せることはなく、姉妹を引き取った伯母と少年たちの狂気に覆われてゆくことになるのだった。


アメリカで実際に起こった少女監禁、バニシェフスキー事件をもとにした凄惨な物語であれば、ホラーやスリラーに分類されるのはもっともですが、これはむしろ青春映画。
しかし、少年だった日々を懐かしむことなど決してできない、悔恨の念に囚われ続ける中年男性の追憶が描かれる物語はただただ不快、観客には忍耐力が要求されるかもしれません。

監禁と凌辱、拡散する暴力。
伯母は少年たちにビールを、背徳を植え付けて、そして蝕まれる倫理観と崩壊する情緒。
そう、この作品がひたすらに描いているものはリアル、迷走する現代社会の暗喩とも言え、その先にはたして救いはあるのか。


 「あなたは夢だと思った」


傷ついてゆく体と心、逃げ出すことのできない地下室の絶望は、警察が踏み込んで悪は裁かれて、メグとデヴィッドにはほんの僅かだけ言葉を交わす時間があったから、おそらくは。

だから原作であれこの映画化であれ、観客にもうひとつ要求されるものは想像力だと思うのです。
それは、生涯癒えることのない傷を負ったデヴィッドの心を思い、すぐそばにある狂気に揺らぐことのない強い意志。

そして、メグが遺した「気持ちが大切なの」という言葉が儚いままでないことを。


(文中、ネタバレは背景色にしています)

隣の家の少女  Jack Ketchum's The Girl Next Door
2007年 アメリカ (2010年日本公開)
配給 キングレコード+iae
製作 ウィリアム・M・ミラー アンドリュー・ヴァン・デン・ホーテン ロバート・トニーノ
原作 ジャック・ケッチャム
監督 グレゴリー・M・ウィルソン
出演 ブライス・オーファース ダニエル・マンシェ ブランシェ・ベイカー グラント・ショウ

Mar 10, 2010

ゾンビ HDリマスター ディレクターズ・カット版&公開記念トークイベント

ゾンビ HDリマスター ディレクターズ・カット版数多のフォロワーを産み落としたゾンビ映画の金字塔、そんな形容などとうに手垢にまみれたジョージ・A・ロメロの偉大な仕事。
ああ、「ゾンビ」をまたスクリーンで拝める愉悦たるや!

レーザーディスクボックスのリリースにやはり合わせて、1994年に新宿シネパトスで上映された折にも喜び勇んで観に行って、そのとき買った豪華なパンフレットはそれはもう大切な宝もの。
今回それがないことは残念で、15種類のTシャツやトランプ、リストバンドや財布といった物販にも食指は動かなかったけれど、なにも買わずに帰ったら信者の名折れというものだろう!

だからまずポストカード、あとはまだ注文していなかった通信販売限定の「ザ・クレイジーズ」のDVDを買って胸を高鳴らせて上映を待った渋谷の夜・・・そう、トークショーが催される公開初日の最終回、シアターN渋谷のロビーは整理番号順での入場を待つ同志でごった返していたのですが、

公開当時はそんな熱狂などあろうはずはなく。

葉書・オブ・ザ・デッドたとえば、フランス映画社が配給するような文芸映画を殊更に賛美する中二病な評論家たちは、やれ悪趣味だゲテモノだと挙って酷評したもの。

なるほど、アクション要素を強調したダリオ・アルジェント版をそう評することは理解しよう。では君たちは、ディレクターズ・カット版にどのような感想を抱くのか。
カンヌ国際映画祭のために突貫工事で編集されたこのバージョンはロメロも不服に思っているようだけど、そこに溢れるアイロニーと終末感、滅亡の淵に喘ぐ人間の儚さまで否定するというのか。

「ゾンビ」との出会いを語るところからはじまったトークショーでは、もちろんそうしたロメロ作品ならではの魅力にも触れられることになるのですが、

 江戸木純さん 「有楽座のロードショーの初日か2日目にまず観たんだけど、
          名画座に追いかけるたびにエンディングのヘリが飛ぶシーンが短くなっていって」
 伊東美和さん 「悲しいですね(笑)」
 中原昌也さん 「有楽座でチラシとか観て、ぐわ、なにこれ最悪。こんな映画観たくない。
          とか思いながら9歳のときに姉貴の同級生のお兄さんと観に行って熱中して」
 伊東美和さん 「僕は田舎だったのでビデオになってからなんですよね」


・・・。


伊東美和さんがそんなヌルい人だったなんて!

続きを読む "ゾンビ HDリマスター ディレクターズ・カット版&公開記念トークイベント"

Jan 30, 2010

パラノーマル・アクティビティ

パラノーマル・アクティビティ何かがいる。子供の頃から。

平凡な一軒家、しかし家の様子が毎夜どこか変わっている。
だから若いカップルはビデオカメラを買ってベッドルームを、自分たちの生活を撮影することにした。

 「ようやく『何か』を撮影して解き明かせる」

はたして記録されたものは衝撃の映像、「家が・・・私に出て行けと怒っている」と霊能者でさえ解明できない恐怖、彼女に憑いているものは何なのか?


制作費135万円にして全米1位を獲得、興行収入95億円を叩き出したアメリカン・ドリーム。
日本でもついに劇場公開された今日、満席の映画館が続出したのはそうしたプロパガンダに拠るところが大きいとは思います。

しかし、「フォース・カインド」なんかどうでもいいから「パラノーマル・アクティビティ」を一日も早くと、公開を待ち侘びた向きの期待は裏切らない出来。
ビデオカメラやパソコンの購入費用が制作費の半分を占め、映像は自主映画レベルなのですが、だからこその不気味さ、普遍的な娯楽映画とは異なるリアリティこそが、この作品の白眉と言えるでしょう。

アイデア勝負の低予算映画においては当然と言えよう脚本の練り込みも十分、次第に加速する恐怖はしっかりと観客に供されていて、なにより監督が拘った「静止ショット」の巧みさと、「静寂」を丹念に描写しているが故の小さな物音の脅威たるや。

そう、ドアがただ開いているだけのベッドルームが怖い映画などあったでしょうか?

もちろん、全てを肯定するほど精緻な作品ではなく、監督の手腕も手放しで誉めるものではありません。
P.O.V.(Point of View)作品であれば「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」のエピゴーネンとの誹りは免れないところですし、やはり低予算だった「REC/レック」のような衝撃もないですしね。

ただ、シネマサンシャイン池袋では、私のとなりの少年は「嘘・・・嘘・・・」と嗚咽のような声を漏らしながらスクリーンを見つめていたし、女子高生の集団が、

 女子高生A 「ヤバイ怖い!ヤバイ怖い!」
 女子高生B 「うるさいwww

と微笑ましい、トレーラーのような光景を繰り広げていたので、やはり楽しめる作品ではあるでしょう。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

パラノーマル・アクティビティ  PARANORMAL ACTIVITY
2007年 アメリカ (2010年日本公開)
配給 プレシディオ
製作 ジェイソン・ブラム
監督 オーレン・ペリ
出演 ケイティ・フェザーストーン ミカ・スロート

Oct 21, 2009

カイジ 人生逆転ゲーム

カイジ 人生逆転ゲーム原作がギャンブル漫画の金字塔だからこそ映画化に向くかどうかは甚だ疑問、碌でもないものになるのが相場じゃないか?


さて、公開初日のヒューマックスシネマ池袋はほぼ満席の人いきれ、もう夕方ということもあって売店のグッズはEカードをはじめ完売の札がちらほらと。
やがてはじまった福本伸行ワールド、実写化された「カイジ」の物語は、だからちょっとだけ高揚した気分で観ることになって、そして限定ジャンケンの制限時間が30分という設定にまず吃驚したのですが。

ああ、そうか。そういうふうに作るのか、と。

予告編を観たときに抱いた、限定ジャンケンから鉄骨渡り、Eカードまでを詰め込むのは無謀だろう、さぞかし酷い出来になるだろうという予想は、はたして見事に外れることになるのでした。

そう、これは脚本の勝利。

「映画」なのだから、原作が「漫画」としての特異性が著しいのだから、仔細は端折ってエンターテインメントをひたすらに追求しよう。
物語のエッセンスを凝縮して、異なるエピソードからの改変も織り込んで、見せるべきところはしっかりと見せよう。
そうしたロジックを積み重ねた、作り手のまなざしの高さこそが、この作品を傑作に仕上げた所以なのでしょう。

いや、原作のロジックの積み重ねを丹念に描くべきだ、限定ジャンケン編はだからこその名作だろう、という向きもやはりあろうかとは思います。
たしかに興趣はそそられるけれどインディペンデントならという話で、なんていうか、それでは文芸映画のようになってしまう懸念があるんですよね。

コーラとポップコーンを抱えて、いや、できればキンキンに冷えたビールとほかほかの焼き鳥を口にしながら観たい映画なのだから、私はこれで正解だと思うのです。

だから原作の毒気、文法にあるいはそぐわないラストにも快哉。
美青年すぎるだろうと思った藤原竜也さんは好演だし、松尾スズキさんの班長役は途轍もなくハマっているしとキャスティングは上出来、細部に粗があるにはあるけどことさら貶すほどには非ず。

上映後の映画館のざわ・・ざわ・・は、だから喝采を意味する喧噪に違いありません。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

カイジ 人生逆転ゲーム
2009年
配給 東宝
製作 堀越徹 堀義貴 島谷能成 村上博保 平井文宏 阿佐美弘恭 入江祥雄 山口雅俊
監督 佐藤東弥
出演 藤原竜也 天海祐希 香川照之 松尾スズキ 山本太郎 光石研 吉高由里子 松山ケンイチ

Jul 8, 2009

レック/ザ・クアランティン

レック/ザ・クアランティン [DVD]リメイクにはオリジナルへの敬意と、観客へのサービスが要求されていい。
それは私見、あるいは理想論でしかないのでしょうか。

ロブ・ゾンビが凡庸に堕した「ハロウィン」にしても、マイケル少年を丹念に描いたことはその是非はさておき新鮮ではあったし、ジョージ・A・ロメロやジェームズ・ガンへの敬意など皆無であれ、ザック・スナイダーの「ドーン・オブ・ザ・デッド」が浴びた喝采はもう否定はできません。

しかし、このリメイクはあまりにも商業的で、そこに哲学や意志など存在しない。
低予算でも観客に恐怖と驚愕、とびきりのエンターテインメントを提供しようとしたオリジナルのまなざしの高さなどなく、P.O.V.(Point of View)にしてもただP.O.V.であるというだけ、だからこその恐怖など微塵も感じられない。
リメイクだからこそ、たとえば俯瞰した映像とカメラの映像が交錯する展開にして、新しい「REC/レック」を描く方法だってあったように思うのです。

オリジナルが米国ではDVDスルーであれば、製作者の「ほとんど同じで構わないだろう」という志の低さもしようのない話なのかもしれません。
しかし、アパートの構造や諸々の構図はただオリジナルに倣っているだけ、ならばあの絶品のクライマックス、螺旋階段に広がる地獄絵図くらいはより凄いものにしよう、そのくらいの心意気すらないのかと溜息しか出ないというものです。

また、ヒロインに魅力がない点もよろしくないところ。
あの「デイ・オブ・ザ・デッド」にしても、キュートなミーナ・スヴァーリだけは貶すことができないのだから、せめてキャスティングくらい如才なくやりなよ、と。
ヒステリックにただ叫んでいるだけで、カメラにすべてを記録しようという執念を描く演出が希薄ではラストも甘くなろうというもので、さらに乳までがヌルいのでは擁護のしようがありません。

これでは日本でDVDスルーとなったのもしようのない話、偽物ではない、本物の続編は予告編を見るに相当派手なものになりそうですし、スパニッシュホラーの次の一手を心待ちにするといたしましょう。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

レック/ザ・クアランティン  QUARANTINE
2008年 アメリカ (日本劇場未公開)
製作 ダグ・デイヴィソン ロイ・リー セルヒオ・アゲーロ
監督 ジョン・エリック・ドゥードル
出演 ジェニファー・カーペンター スティーヴ・ハリス ジェイ・ヘルナンデス ジョナサン・シェック

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Apr 25, 2009

サスペリア・テルザ 最後の魔女

サスペリア・テルザ 最後の魔女ため息の母、暗闇の母。

そして、涙の母。

生命を産み育てるどころか、それを奪う存在である三人の母。
イタリア教皇庁が葬った災厄が1000年の時を経て蘇り・・・ローマは発狂する。


「サスペリア」から30年、アルジェントの闇を愛する者すべてが待ち望んでいた魔女トリロジーの完結編。
予告編の映像も期待をさらに昂ぶらせてくれるもので、さて、最後の魔女はどのような恐怖を供してくれるのか。

悪魔や魔女の絵画の映像、ゴブリンのクラウディオ・シモネッティの旋律のアバンタイトルには、上映がはじまるや陶酔しようもので、そしていきなり繰り広げられる惨劇、ヒロインをめぐる謎にはもう胸を躍らせたのですが・・・うーん。

矛盾があろうが脈絡がなかろうが、恐怖をひたすらに叩き付けてくるアルジェント「ならでは」が本作ではどうにも希薄、映像もあまりにも普遍的。
それが意図したものであろうとも、では謎に挑む、魔女と戦おうとするアーシアの奔走の中に、どれだけの恐怖が描かれていたと言うのでしょう。

そもそもこれは魔女トリロジー、我々がいったい何を求めていたか?

狂気と暴力に包まれるローマの描写も甘く、だからクライマックスへと向かう終盤の展開はもはや惰性。
それでも、錬金術師が登場して、隠された書庫から取り出されたのがヴァレリの「三母神」では、流石に快哉を叫ぶというもの。


 「見えるものは存在せず、見えぬものこそが真実」


さらに、アイリスを想起する闇の世界への入口に嘆息したのも束の間、そうして己を鼓舞しながら迎えたラスト、その仕打ちたるや。「インフェルノ」より酷いぞ、これは!

公開初日のシアターN渋谷、初回の上映から退出してきたアルジェントフリークたちの表情に嫌な予感はあったのですが、あるいは老いを云々するつもりはありませんが、緊張もストレスも皆無の凡作だったことには、やはり「ため息」が出ようというものでした。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

サスペリア・テルザ 最後の魔女  MOTHER OF TEARS/La Terza Madre
2007年 イタリア・アメリカ (2009年日本公開)
配給 キングレコード+iae
製作 ダリオ・アルジェント クラウディオ・アルジェント
監督 ダリオ・アルジェント
出演 アーシア・アルジェント クリスティアン・ソリメーノ アダム・ジェームズ ダリア・ニコロディ ウド・キアー

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サスペリア (サスペリア アルティメット・コレクション DVD-BOX)
インフェルノ

Feb 13, 2009

グロテスク

グロテスク初めてのデート、待ち合わせをした喫茶店。カップルは俯いたり戸惑ったり。

 女 「私のために死ねますか?」
 男 「・・・がんばります」

そんな他愛のない会話をして、笑って、手を繋いで歩きだそうとした仄暗い道で、不審なバンからハンマーを持った男が飛び出してきて・・・

ふたりが目を覚ましたのは、そこが何処か知る由もない暗い部屋、手足は拘束され、口には猿ぐつわ。
そして、いくつもの拷問用具が鈍い光を放っていた。


プロデューサーの言にあるように「振り切っちゃって」いるかどうかはともかく、タイトルの通りにグロをプロモーションしたジャパニーズホラー。
上映時間が73分であれば、はじまってすぐにファンタスティックが展開することはするのですが、そこで観客が否応なしに物語世界に引きずり込まれるかと言えば・・・ なんだこのAVは、と。

このプロットであればもっともではあるけれど、なんでこんなに延々と見せる必要があるんだと辟易した人は少なくないのではないでしょうか。男性でも。

ただ、そのあとできっちりと描かれるのは、絶対的な暴力とゴア。
「僕を感動させてほしい」と、暗い瞳を向ける狂人の人体破壊ショーが繰り広げられることになるので、残酷描写が駄目な人は観ないほうが無難です。特に、男性なら。

大丈夫な人でしたら、特殊効果はちょっとチープながらも映ってはいけないものも映っていることですし、映倫を通さずに公開されたUNRATED VERSIONは観て損はないとは思います。

出来はジャパニーズホラーとしては悪くはないから、という意味でも。

いや、物語としてやはり薄いとは思うのですが、束の間の安堵と絶望のくだりは悪くないし、ラストもちゃんと纏まっているし。ハッピーエンドと言えなくもないですしね。

ただ、タイトルがゴアだけを喧伝するためのものではなく、狂人の「グロテスク」な心も指すのであれば、作り手にはもう少し技量が欲しかった、とは言えますが。

ともあれ、その短い尺にもかかわらず観客に強烈なストレスを与える作品であることは事実、消耗することを覚悟した上で鑑賞することをお勧めします。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

グロテスク
2009年
配給 ジョリー・ロジャー
製作 大橋孝史 小林洋一
監督 白石晃士
出演 長澤つぐみ 川連廣明 大迫茂生

Dec 17, 2008

REC/レック

REC/レック スペシャル・エディションドキュメンタリー番組の取材で消防署を訪れた、女性レポーターのアンヘラとカメラマンのパブロ。
彼女たちが報道するのは、深夜のアパートで異常な叫び声をあげている老婆の救出活動のはずだった。しかし、


「いま」、「ここで」、「何か」が起こっている。


リアルな絵空事。

本作の白眉はP.O.V.(Point of View)が観客に叩き付ける不安感と不快感。
テレビクルーのカメラが捉える「ドキュメンタリー」には緻密で狡猾な演出が施され、どうしようもない恐怖と絶望がダイナミックに描かれて。

そう、監督たちの奸計に嵌ったら最後、シッチェス映画祭で喝采を浴びたファンタスティックに酔わずにはいられないことでしょう。

封鎖されたアパート、拡がっていく感染。
すぐそばに瀕死の重傷者がいる非日常、吹き抜けに響く銃声、血に汚れた生存者たちの諍い。

窓の向こうの惨劇、こじ開けられようとしているシャッターの脅威、そして階段の踊り場に広がる地獄の光景たるや!


 「すべて録画するのよ。絶対にね!」


はたして録画されたものは、たった75分とは思えないほどの悪夢と消耗。
その絶対性は、メディアミックスの勝利とも言えよう「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」を大きく凌駕しているように思います。
また、「28日後…」シリーズと同様にウィルスの感染者だから厳密には違うけれど、ゾンビ映画の新たな傑作の誕生は祝うほかはありません。

だからこそ続編には、「取りつかれた少女」についての解明やスピンオフといった凡庸に堕することなく、本作が観客を惹きつけた理由をゆめゆめ取り違えることもなしに、さらなるセンセーションを供してほしいところ。

今年日本で劇場公開されたホラー映画のナンバーワンと評価する、人々みながそう期待していることでしょう。


(文中、ネタバレは背景色にしています)

REC/レック  ●REC
2007年 スペイン (2008年日本公開)
配給 ブロードメディア・スタジオ
製作 フリオ・フェルナンデス
監督 ジャウマ・バラゲロ パコ・プラサ
出演 マニュエラ・ヴェラスコ フェラン・テラッツァ ホルヘ・ヤマン カルロス・ラサルテ パブロ・ロッソ

【関連リンク】
ハリウッド・リメイク「Quarantine」公式サイト

Nov 30, 2008

ダイアリー・オブ・ザ・デッド

ダイアリー・オブ・ザ・デッド情報とネットワーク。

「我々」と「奴等」の狭間をたゆたう傍観者は、やがて当事者となって、ビデオカメラに記録される。
世界の終わりに、生き残れるか。世界の終わりに、何を遺すのか。


原点回帰。

リビングデッド・サーガの時間軸を巻き戻して、ジョージ・A・ロメロが紡いだ「世界の終焉」の物語。

主観映像で客観的に描写される終末、それがロメロの手によるものとあっては、凡百のフォロワーたちの凡庸な作品と異なるものになるのは当然のこと。

いや、「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」で脚光を浴びたP.O.V.(Point of View)の手法を誉めるつもりはありませんし、そうした点に否定的な感想を抱くのは極めてもっともなことと思います。

ザック・スナイダーの「ドーン・オブ・ザ・デッド」や「バイオハザード」シリーズを好む向きが、ロメロの作品をお気に召さないのも今にはじまった話ではありませんしね。

しかし、68歳にしてまったく新しいゾンビ映画を提案したことはまず評価されるべきでしょう。

そう、アクションやクライマックスが派手なだけの映画ばかりでは退屈というもの。
豪勢な作りではありながら、方向性が曖昧になった感のある「ランド・オブ・ザ・デッド」についての贖罪、この作品をそう捉えたとしたら尚更のことに思えるのです。

さらに、ゾンビの頭部が酸でゆっくりと破壊されたり、自分もろともゾンビを斧で貫いたりといった新機軸のゴアは嘆息もの、「28日後…」のようなロードムービーにありがちな散漫さも皆無。
最後に生き残るメンバーが意表を突いているのも心憎い限りで・・・


ああ、なんという愉悦!


ロメロは老いてなどいなかった。
それどころか、彼はフォロワーたちに「どうだい?もっと頑張れよ」と、笑いかけているのかもしれません。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

ダイアリー・オブ・ザ・デッド  DIARY OF THE DEAD
2007年 アメリカ
配給 プレシディオ
製作 ピーター・グルンヴォルド サム・エンゲルバール アート・シュピーゲル
監督 ジョージ・A・ロメロ
出演 ミシェル・モーガン ジョシュ・クローズ ショーン・ロバーツ エイミー・ラロンド

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ハロウィン

ハロウィンイリノイ州の片田舎、ハロウィンの惨劇。
精神病院に収容された少年は、その魔性を理解する医師の治療を受けながら闇の世界から帰って来ることはなく・・・そして17年後、怪物となった。


ホラー映画の金字塔、ジョン・カーペンターの「ハロウィン」は1978年の公開。
「マーダー・ライド・ショー」「デビルズ・リジェクト」で一躍ホラーメーカーとしての名を成したロブ・ゾンビが、30年の時を経てマイケルを蘇らせたこのリメイクは、事件だったとさえ言えるでしょう。

しかし、オリジナルのメインテーマがオミットされることもなく、彼ならではの楽曲へのこだわり、そのサウンドは観る者を魅了するはずだったのに・・・グルーヴ感を欠いたのは何故なのか?

いや、マイケルの狂気を、大虐殺の夜を、オリジナルとは趣を変えてじっくりと描いた前半については、さすがゾンビと唸らせてくれるものではあったんですよ。
唐突にはじまる殺人も、だからこそ彼の異常性をじゅうぶんに表現した憎い演出と言えるでしょうしね。

ただ、母親の自殺については演出が淡泊、むしろ陳腐。
そして、精神病院での圧倒的な暴力は見事だったものの、成人したマイケルが殺人を繰り広げる後半がスラッシャームービーとしての常道に過ぎ、どうにも退屈、どうにも食い足りない思いが拭えなくて・・・


マイケル・マイヤーズはなにを渇望したのか?


彼と妹が織りなすクライマックスは、だからやや浅薄なものとなって、あのクールなラストシーンで流石のセンスを見せてくれようとも、カタルシスを欠いたものになってしまっているのです。
そう、ロブ・ゾンビならもっと新しい解釈の「ハロウィン」を提示してくれると思っていたのに、と。

あるいはカーペンターへの敬意が枷となったのか・・・そう思うのはさすがに穿ちすぎでしょうか。

ともあれ、公開初日のシアターN渋谷では予告編フィルムを使ったしおりがプレゼントされたり、マイケルのマスクを被った関係者がいたりとプロモーションが賑やかだったのですが、観終えたあとではそれらもちょっと空虚に思えてしまったのでした。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

ハロウィン  A ROB ZOMBIE FILM HALLOWEEN
2007年 アメリカ
ハロウィン配給 ザナドゥー
製作 マレク・アッカド アンディ・グールド ロブ・ゾンビ
監督 ロブ・ゾンビ
出演 マルコム・マクダウェル シェリ・ムーン・ゾンビ タイラー・メイン スカウト・テイラー・コンプトン

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ゾンビ・ストリッパーズ

ゾンビ・ストリッパーズ慢性的な兵力不足を打破するために、米政府が開発した死人を蘇らせるウィルス。
それが研究所で蔓延する事件が発生して、事態の解決に乗り込んだ兵士までもが感染、やがて場末のストリップ・クラブへと伝播して・・・


ポール・ダンスの躍動感しかり、女同士の諍いしかり、ゾンビになったストリッパーのほうが生き生きとしているというセンス・オブ・ユーモアが本作の白眉。

そうしたストリップ・クラブの面々が繰り広げるサバイバルとスラップスティック、そして全編に溢れるアイロニーはジョージ・A・ロメロの文法を踏襲したもの。

ただただ単調なドタバタになりかねないプロットのホラー・コメディであれば、だから実に安心して観ることができるのも上等、もう少しはっちゃけてもよかったのではとも思うけれど、過ぎたるはなんとやら、それは作り手のバランス感覚だったのでしょう。

ただ、クライマックスは若干冗長。
ストーリーの当然の帰結としてストリップ・クラブに突入するSWAT部隊は面白味を欠き、科学者の奸計が結末というのもやや凡庸であったかもしれません。
田舎娘はなんだったのさ、もうひとりのヒロインじゃなかったの?といったあたりも気になりましたしね。


 「この役立たずめ!お前は死人以下だ!」


とはいえ、地雷になりかねないこの手の作品としてはかなりの出来、狙った感のある「ショーン・オブ・ザ・デッド」よりも、ただただおバカなこちらのほうが好みという人も少なくないのではないでしょうか。

そうそう、もちろんR18であるがゆえにゴアはもうやりたい放題、頭部は破壊され内臓が引きずり出されてこそホラーだ!という向きもきっと満足したことかと思います。

ともあれ、プロモーションでインリン・オブ・ジョイトイさんが評した「チャーミングなゾンビ」たちは必見、今秋公開されたホラー映画における思わぬ掘り出しものであることは間違いないでしょう。

また、蛇足ではありますが、私が観に行ったのは銀座シネパトス。
綺麗な映画館で観るよりも、B級臭の香しい本作については似つかわしかったとは言えますね。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

ゾンビ・ストリッパーズゾンビ・ストリッパーズ  ZOMBIE STRIPPERS
2008年 アメリカ
配給 ソニーピクチャーズ エンタテインメント
製作 アンジェラ・リー アンドリュー・ゴロフ ラリー・シャピロ
監督 ジェイ・リー
出演 ジェナ・ジェイムソン ロバート・イングランド シャムロン・モア ジョイ・メディナ

SAW5 ソウ5

SAW5 ソウ5目覚めれば廃墟、コンクリートの台の上。
首と両足は固定され、両手は鎖で繋がれて、天井には巨大な刃のついた振り子。
「やあ、セス。ゲームをしよう」

目覚めれば暗い密室、首輪で拘束された5人の男女。
部屋の壁にはV字型の大きな刃、ケーブルで繋がった首輪と刃。
「ようこそ。5人が一緒になって生き残り、これまでと違う生き方を選んでほしい」


新しいゲームがはじまった。


ギデオンから生還したホフマン刑事、そして水槽のゲームで九死に一生を得たFBIのストラム捜査官。
本作はどちらかと言えば、そのふたりを中心とした普遍的な刑事ものといった印象。

そう、時間軸の交錯、パラレルに進行するゲーム。あるいは、レトリックの妙こそが「SAW」でありながら。

元々はデザイン、美術畑だったデイヴィッド・ハックルに監督が代わり、冒頭から映像に違和感や稚拙さを感じていたのですが、それがあるいは本作のすべて。
シリーズで最悪の仕事と言ってしまっても過言ではないでしょう。

たとえば、ホフマンが「ソウ」の剃刀のゲームからジグソウと行動していたというのなら、演出は「ソウ3」のアマンダのそれにきっちりと合わせるべき。色彩もアングルも、微妙な間に至るまで。

だから、ゲームの意味が希薄であるのみならず、ホフマンとストラムのせめぎ合いにも緊張感を欠き、このクオリティでは「ソウ6」への繋ぎというエクスキューズも許されないと思うのです。それでも、


法律事務所、ジョンがジルに宛てた遺言のビデオテープと大きな箱。
「よく来てくれたね。君に渡したいものがある。君なら使い方が分かるはずだ」


エリクソンがストラムを追った理由のひとつ、物語の矛盾。
その謎解き、そして真の「後継者」は誰なのかについて、「ソウ6」はやはり観ないわけにはいかないのですが、もうそろそろゲームから解放してほしいというのが正直なところです。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

SAW5 ソウ5
2008年 アメリカ
SAW5 ソウ5配給 アスミック・エース
製作 グレッグ・ホフマン オーレン・クールズ マーク・バーグ
監督 デイヴィッド・ハックル 
出演 トビン・ベル コスタス・マンディラー スコット・パターソン ベッツィ・ラッセル

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Sep 21, 2008

フロンティア

フロンティア 「なにもかも元通りにしてよ!」
 「俺たちはもうあとには退けないんだ!」

大統領選挙の決選投票に極右勢力が残ったことで暴動に揺れるフランス。
移民の家庭に生まれた5人の若者はオランダへの脱出を計画、混乱に乗じて強盗事件を起こし、国境へと逃亡するのだが・・・

彼らが見つけた小さな宿屋は、この世の果ての絶望だった。


オープニングの胎動、暴動のシーンから物語の序盤、その映像の妙はたしかにアレクサンドル・アジャを連想させるもの。
うん、「リュック・ベンソンが発見した天才の衝撃的デビュー作!」というコピーも眉唾じゃあなさそうだ。

そして緊張感と閉塞感を緩ませることなく狂気と恐怖と絶望を描き、人物描写もなかなかに巧み。
「マーダー・ライド・ショー」や「ヒルズ・ハブ・アイズ」といった殺人一家ものを見慣れていても、飽きることなくクライマックスへと誘われることになるのですが・・・

多民族国家であるフランスの暗部、その不安と、ナチス思想の狂気をかけて、そこからの脱出を描こうとしたのならやや力不足、カタルシスがもうひとつ。

108分という上映時間がちょっと冗長にさせたのか、「ホステル」は見せなかったアキレス腱切断シーンといったゴアは上々だったけど、頭部破壊はトム・サヴィーニの匠の技をさんざん拝んでるからなんか余計とか、ヒロインに銃弾が絶対に当たらないのは見事だねとか、悪意すら湧いて来ようというものです。


そう、ヤスミンの狂気をこそもっと前面に、もっと丹念に描けばいいものを、と。


なにもかも失ってしまった。
両親が迎えに来てくれることを信じて、どこにも行くことのできないエヴァを救うこともできなかった。


とはいえやはりプロットの勝利、どうしようもなく空虚なラストも好みではあり、アレクサンドル・アジャほどの才気があるかどうか本作では判断できませんが、フレンチ・スリラーの佳作ではあるでしょう。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

フロンティア
フロンティア  FRONTIER(S)
2007年 フランス
配給 トルネード・フィルム
製作 ローラン・トロン
監督・脚本 ザヴィエ・ジャン
出演 カリーナ・テスタ サミュエル・ル・ビアン オルレアン・ウィイク エステル・ルフェビュール

Aug 30, 2008

デイ・オブ・ザ・デッド

デイ・オブ・ザ・デッド24時間に及ぶ検疫隔離演習、州兵によって封鎖された町。

インフルエンザに似た症状に苦しむ人々で溢れかえる病院、町を覆い尽くそうとしているのは新種のウィルスなのか?
そして、感染者たちはゾンビと化して人肉を求め、破壊と殺戮が繰り広げられる・・・これは演習なんかじゃない!


レイティング問題によって葬られたシナリオ。
「死霊のえじき」がリメイクされると聞いてファンがまず期待してしまったのは、23年の時を経た今それがスクリーンに供されること。

それが叶わないことはともかくも、いざこの作品を観てまず思ったことは、リメイクだのリエンビジョニングだのとほざくな、といったあたり。

終末観も絶望も、滅亡しようとしている人間の儚さも描かれることはなく、そこにあるのは緊張感や閉塞感を欠く、ただただ凡庸なアクションだけ。
インディペンデントとしてのゾンビ映画であるのなら単純に駄作と言われるだけですが、この酷さではことさらにマニアの反感を買うというものです。

人体やゾンビが破壊されるシーン、ゴアもバリエーションがないのでだんだん飽きてくる始末、しかもスピードだけは意識した演出だから滑稽ですらありうんざり。
「死霊のえじき」のバブにあたるバドが菜食主義者という伏線や、ローガンが餌食になるシーンでは劇場内に笑い声があがって確かに面白かったのですが、終盤でこれはコメディですと言われてもちょっと・・・

ともあれ、どうして「13日の金曜日PART2」のスティーヴ・マイナーと、「ファイナル・デスティネーション」のジェフリー・レディックでこんなことになるんだとはやはり思ってしましました。

あるいは、観ている最中に駄作繋がりで「ハウス・オブ・ザ・デッド」をやたらと連想してしまったり。
ただ、オナ・グローアーの乳は素晴らしいけれど、ミーナ・スヴァーリは・・・いや、このサラは実にキュートなので、この作品で唯一誉められるところなのですけどね。

そしてラストがまた陳腐、エンドロールが流れ始めるや憤然と席を立つ人が少なくはなかったのですが、それはホラー映画ではまして御法度。
ただ、最後まで座っていた観客にしても、予告編が上映されたロブ・ゾンビの「ハロウィン」や、ジョージ・A・ロメロの「ダイアリー・オブ・ザ・デッド」への思いを馳せていただけなのかもしれません。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

デイ・オブ・ザ・デッド  DAY OF THE DEAD
2008年 アメリカ
配給 ムービーアイ
製作 ボアズ・デヴィッドソン ジェームズ・ダデルソン ランドール・エメット ジョージ・ファーラ
監督 スティーヴ・マイナー
出演 ミーナ・スヴァーリ ニック・キャノン ヴィング・レイムス マイケル・ウェルチ アナリン・マッコード


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Dec 16, 2007

アイ・アム・レジェンド

アイ・アム・レジェンド癌の特効薬として開発されたウィルスの副作用で滅亡しようとしている人類。
凶暴化した感染者たちは暗闇に潜み、軍人であり科学者であるネビルはニューヨークでたったひとり、治療法の研究を続ける・・・

正月映画の本命では?と言われながら、公開を間近にしてかなりの悪評。
SFにはまるで興味がない私ですが、「後半がゾンビ映画」であることが貶されている理由のひとつなら・・・バッチこーい!と、ホラー映画好きとしては観ることにしましたよ。

また、ホラー映画好きなので満員の映画館で鑑賞する機会などそうはなく、そしてエンドロールが流れ始めるや場内に凄まじいどよめきと乾いた笑いが満ち溢れた光景は、かなり久々に味わうものでした。

いや。
ゴーストタウン描写は頗る上等、「28日後…」のロンドンを凌ぐその荒涼感については、観る価値が大いにあると言えるんですよ。

色とりどりの缶詰や調味料が並べられたキッチン、レンタルビデオショップでのマネキンとの会話。
さらに、愛犬のサムはどうしようもなく素晴らしく、ネビルと一緒にルームランナーをしたりバスタブの中で眠ったり、戦闘機の翼の上から摩天楼に向かってゴルフの練習をするシーンでは興味なさそうに、それでもすぐそばで付き合っていたり。

そして、ウィルスを治療するための研究に懸命になりながら、しかし自分が救おうとしている感染者たちに命を奪われるかもしれないジレンマ。
妻や娘との別れ、悲劇を織り交ぜて描かれる、そうした空虚な世界の描写は素晴らしいのですが・・・
そこまで。

いかんせん、サムを失ったあとに精神の変調に見舞われて、安息の地を目指す母子と出会ってからの展開は、伏線もなんの説得力もない代わりにツッコミどころ満載、ぶっちゃけぞんざい過ぎで・・・

だから、ゾンビ映画好きとしてはダーク・シーカーズに「走んじゃねえ!」と言いたいのはともかく、中盤までがいくら重厚であろうとも、全体については薄いなあ・・・という感想になってしまうのです。

たとえば、ゼノフォビア(外敵恐怖症)をダーク・シーカーズに拠らず殊更なメタファーとして描き、前半の緊張感を持続したままで人類とネビルの再生の物語、新しい解釈の「地球最後の男」を描いたなら、もちろん批判はあろうけれど、それだけではなかったろうに、とも。

なにはともあれ、孤独の描写の巧みさですべてを許せる寛容な精神を持っている人と、犬が好きな人にしかお勧めできないホラー映画の凡作であるように思います。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

アイ・アム・レジェンド  I Am Legend
2007年 アメリカ
配給 ワーナー・ブラザース映画
製作 アキバ・ゴールズマン ジェイムズ・ラシター デイビッド・ヘイマン ニール・モリッツ
監督 フランシス・ローレンス
出演 ウィル・スミス アリーシー・ブラガ ダッシュ・ミホック チャーリー・ターハーン

Dec 9, 2007

スリザー

スリザー鹿狩りの解禁を間近に賑わう田舎町に落下した隕石、そしてはじまった宇宙生命体=スリザー<ずるずると滑って忍び寄る者>の侵略。
生きる者の脳を支配するパラサイト攻撃によって増殖を続ける生命体から逃れ、生き延びる術ははたしてあるのか?

手がけた作品は悉く興行収入の上で成功を収め、脚本家としての力量は疑うべくもないジェイムズ・ガンの初監督作品。

「ドーン・オブ・ザ・デッド」に注いだゾンビ映画への愛情、ジョージ・A・ロメロへの敬意を理解できなかったザック・スナイダーについて、「一緒に仕事をすることは二度とないだろう」と吐き捨てた気骨と、今秋日本で公開されたホラー映画としては「ヒルズ・ハブ・アイズ」と並んで高かった前評判。
公開初日の新宿ヲデオン座には年嵩の観客が多く、それはマニアがどれほど待ち望んだ作品であったかの現れと言えるでしょう。

しかし、プロットから想像された数多のホラー映画へのオマージュや、センス・オブ・ユーモアのひとつひとつは上々ながら、ストーリー展開のテンポが誉められたものではなく、観ていてどうにも疲れてしまったんですよ。
シーンが切り替わるときにいちいち暗転するのも不快で、とにかくコメディもアクションもシリアスも、それぞれが乖離しているのでは・・・と。

そして、ナメクジが大量に発生してからは物語が加速して、たたみかけるように見せるべきものを見せてくれるかと思えばテンポは好転することがなく、ゾンビ化した市民の群れが襲いかかってくるシーンでは胸を踊らせるべきなのに、そのころにはもういいかげんうんざりしていて・・・

 「君の方が俺よりも強い」

とはいえ、たとえば私の場合、バスタブの女子高生・カイリーに迫るスリザーや、ラストで彼女がソファーの陰からひょっこりと現れるシーンにはついニヤッとしてしまったわけで、ホラー好きなら楽しめるシーンが随所にありはしたものの・・・

ガンが描こうとしたオリジナルの世界観は解るけれど、それも善意をもって観てあげればこそ。
だから、劇場には乾いた笑いしか漏れることがなく、ともあれこれでは「ドーン・オブ・ザ・デッド」と大差ないだろうと思ってしまいました。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

スリザー  SLITHER
2006年 アメリカ (2007年日本公開)
配給 東宝東和
製作 ポール・ブルックス エリック・ニューマン
監督 ジェイムズ・ガン
出演 ネイサン・フィリオン エリザベス・バンクス グレッグ・ヘンリー マイケル・ルーカー タニア・ソルニア

Dec 2, 2007

XX エクスクロス 魔境伝説

XX エクスクロス 魔境伝説傷心を癒すために女子大生たちが訪れた人里離れた温泉地、インターネットで検索してもなんの情報もヒットすることのない阿鹿里村は、旅の女の足を切り落として生き神にする狂気の因習が密かに残された土地だった・・・

「今すぐ逃げろ!足を切り落とされるぞ!」や「ガールズ・スリラー」はいいけど、監督が所詮・・・と思った人は少なくないでしょうし、ホラーを期待して観たらやはり憤然とするかとは思うのですが、いや、これはちょっと評価の難しい作品ですよ。

演出については、気負うことも奇を衒うこともなく、主演の2人に襲いかかる恐怖、そのパラレルな時間軸を表現する映像のリバースが鬱陶しいくらい。
ストーリーそのものは面白く、不快にもならずに観ていたものの、鈴木亜美がチェーンソーで眼帯ゴスロリ女に反撃するシーンでは・・・さすがに頭を抱えてしまいましたが。
彼女の好演はこの作品の見どころのひとつなんですけどね。

それはそれとして、松下奈緒サイドの展開はホラーとしてはごく普遍的なもの、じゅうぶんに見せるものではあり、

 「いいな・・・しよりは。」

恐怖の村の物語は、やがてクライマックスへと向かうのですが・・・やっぱドタバタになるのかよ!と。

原作を読んだ人なら想定のうちだったでしょうけれど、いずれにせよ「ああ、これはコメディだったのか」と思えば不思議と腹は立たないというもの。
劇場では中盤以降笑い声が絶えることがなく、みんな楽しんで観ていたし、ジャパニーズ・ホラーが嫌いな私にしても、「呪怨」や「サイレン」と比べればむしろ上々では?と思ったし。

もちろん、よりパワフルであってほしかったとは思うけれど、それは現時点の監督の技量を考えればしょうがない話ではあり、むしろ深作健太の新たな方向性を示したという意味で、興味深い作品になったと言えるのではないでしょうか。

ところで、劇場が大きくどよめいたラストの驚愕について。
いや、これはストーリーそのものがどうこうといった話ではないのですが、とにかくあれは反則。

ただ、この作品がコメディであるのなら認めるしかなく、ともあれこれから観に行こうという人はポスターや公式サイトをチェックせずに劇場へ足を運ぶことをお勧めします。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

XX エクスクロス 魔境伝説
2007年
配給 東映
製作 千葉龍平 樫野孝人
監督 深作健太
出演 松下奈緒 鈴木亜美 中川翔子 小沢真珠 池内博之

Nov 24, 2007

SAW4 ソウ4

ソウ4 ジグソウす。

誰が新たなゲームを仕掛けているのかはもちろん、本作を観終えたときに観客たちはキャッチコピーのほんとうの意味を理解するわけですが、上映後の劇場ではストーリーがよく分からなかったという声が少なからず聞こえてきて。

それは、シリーズをすべて観ている人をどのように楽しませるか、どうやって驚かせるかを殊更に意識してしまった、作り手の傲慢さに拠るものなのかもしれません。

大体、リッグやSWAT隊がドタバタと駆け回り、次から次へとゲームをただ見せているだけでは恐怖感や緊迫感が盛り上がらないというもの。
さらには拘束されたエリックとホフマン、そしてジルが語るジョン・クレイマーを描くからとは言っても、登場人物の複雑さが相まって、ストーリー展開がどうにも冗長に思えてしまいました。

あるいは、最前列はいいけど、アマンダほどのインパクトはない後継者がまた賛否両論の種。
その背景にあるものは次作で明らかにされるとは思うのですが、ともあれそうしてこの作品自体の絶対性をなおざりにしてしまっていいのでしょうか?

 「ゲームは始まったばかりだ」

パラレルな時間軸を巧妙に利用したシリーズならではのトリックは健在ながら、映像も音楽も凡庸、アマンダのゲームではないから・・・というのは冗談だけど、ゴアが控えめなのもインパクトを欠くところ。

また、これは日本公開版に限った話なのかもしれませんが、フィルムの編集がおかしいところがあって、シーンの繋ぎがブチッとなることしばしばだったのが不快、といった余談はさておくとしても。

シリーズはパズルのピースなんだとうそぶくスタッフは、奇蹟とさえ称えられよう第一作の呪縛から逃れられず、ジグソウの罠に嵌ってしまっているような気がするのです。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

ソウ4  SAW4
2007年 アメリカ
配給 アスミック・エース
製作総指揮 ダニエル・ジェイソン・ヘフナー ジェームズ・ワン リー・ワネル 他
監督 ダーレン・リン・バウズマン
出演 トビン・ベル スコット・パターソン ベッツィ・ラッセル コスタス・マンディラー リリク・ベント

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ゾンビーノ

ゾンビーノ友だちのいない少年とゾンビの友情と冒険。

人間を襲わないように制御するゾムコン社の首輪によって、人間とゾンビが共存できる世界。
そこではゾンビはペットであり労働力であり恋人でさえあり・・・と、「名犬ラッシー」を意識して製作されたというカナダ発のゾンビ・コメディのまなざしは確かに高く、1950年代のアメリカをイメージしたのどかな街で繰り広げられるストーリーは機知に富んだものだったのですが・・・

いや、煙草を吸うゾンビ、ヤキモチを妬くゾンビ、はたまた飼い主がゾンビ化してしまい困惑するパピヨンなどの小技は利いているし、ゾムコン社をクビになったテオポリスといった脇役も上々。
そして、なんといっても少年のママは、むしろ彼女が主役なのでは?と錯覚してしまうほどにクールキュートで。

野生ゾンビによって街に脅威が広がるシーンなどの、PG-12としては上々なゴアに感心もしたし、物語の中盤、首輪が壊れたのに少年やママを襲わないファイドは見せてくれたものの・・・
そうした諸々を描く演出が残念ながら稚拙、どうにもちぐはぐな印象が拭えなかったんですよ。

だからミュージカル風味のシーンなどはその典型、「ゾーン」の恐怖を描き、「死霊のえじき」のカタルシスを狙ったと思しきクライマックスは、ゾンビへのトラウマを抱えるパパが最後に活躍するかと思ったら・・・といった意味の上でも消化不良。

これでもかというほどの勧善懲悪は、こうしたコメディであれば外連味のないストレート、誉めるべきではあるのですが、ともあれ難点をあげつらうことが無粋に思えるような演出センスは伺えず、これならさすがに「ショーン・オブ・ザ・デッド」の方が上、ましてやデヴィッド・クローネンバーグと比較するなど・・・

隣人のアメリカを揶揄している云々の評価も、ジョージ・A・ロメロが社会風刺を織り込むことと比較したものでしょうが、それもこじつけではと思ってしまうほどに、なんかこうもやもやしたものが残る作品でした。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

ゾンビーノ  Fido
2006年 カナダ (2007年日本公開)
配給 ショウゲート
製作 ブレイク・コルベット メアリー・アン・ウォーターハウス
監督 アンドリュー・カリー
出演 キャリー=アン・モス ビリー・コノリー ディラン・ベイカー クサン・レイ ヘンリー・ツェーニー

Nov 23, 2007

モーテル

モーテル子供を不慮の事故で亡くしたことで、心が通い合うことのなくなってしまった夫婦。

やがて離婚することをお互いに同意している2人が、これが最後になるかもしれないドライブの途中で車のトラブルに見舞われて、やむなく一夜を過ごすことになったモーテルの4号室、「ハネムーン・スイート」と名付けられたその部屋は・・・スナッフ・フィルムの舞台だった。

宿泊料、イノチ。」というあまり気が利いているとは言えないキャッチコピーと、予告編の映像の安っぽさ。
大したものではなかろうと高を括って劇場に足を運んで上映が始まるや、古き良きハリウッドを想起するクレジットのアニメーションと趣味のよい音楽のオープニング、いい意味で予想を裏切られるのでは・・・と期待した人は少なくないでしょう。

そして序盤ではや、リンゴや花火といった小道具をうまく使っていることに監督の技量を垣間見て、ドアを激しくノックする音、ラベルが剥がれたビデオテープに記録された生々しい殺人の映像と、物語が加速をはじめる時にはもう秀逸なサスペンスに主人公たちといっしょに引きずり込まれることになるのです。

 「必ず助かる」
 「約束よ」

外へと繋がることのない電話、救いのない閉鎖された空間。
殺人鬼たちとの戦いの中でカットインする、スナッフ・フィルムの中で絶叫する女性といった丁寧な演出も光り、ここまで良質であるのなら予定調和でもいいかなと思っていると、はたしてシンプルに、だからこそ悪夢の終焉がしっかりと描かれるラストシーン。

夫婦の「空虚」な心を、モーテルの「空室」と掛けたと思われる原題「VACANCY」から「ディセント」を連想したのはともかく、静と動をこうして描ききった力量はお見事で、フィルムメーカーはかくあるべし、似たようなタイトルの某シリーズの作り手たちにとっては学ぶべきところがあるのではないでしょうか。

そう、スタッフが目指したものは、ただ消費されるだけのスラッシャー映画でも「ソウ」でもなく、腰の据わったクラシックなスリラーで、それはスクリーンの中から確実に観客たちに供されているのでした。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

モーテル  VACANCY
2007年 アメリカ
配給 ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
製作 ハル・リーバーマン
監督 ニムロッド・アーントル
出演 ルーク・ウィルソン ケイト・ベッキンセール フランク・ホエーリー イーサン・エンブリー

Nov 10, 2007

超立体映画 ゾンビ3D

超立体映画 ゾンビ3Dホラーのカテゴリーでは「13日の金曜日PART3」(1981)がやはり3D映画であり、四半世紀前ですら偏光グラスをかけて鑑賞する方式だったのだから、いまの時代に赤青メガネというのは・・・どうなのさ?

そう思う向きは少なくないだろうけど、「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」のリメイクなんだからアナクロさも味というもの、かえって相応しいのでは?と、プロモーションや予告編を見て思っていた私。

池袋シネマサンシャインの発券窓口の片隅に飾られていたシド・ヘイグのフィギュアに心を惹かれながら地下に降りて、叔母の葬儀に参列するために郊外の墓地へとやって来た兄妹と突如襲いかかるゾンビ、そして一軒家に立て籠もる家族やカップルという、NOTLDの新たな世界を堪能することにしたのですが。

ベンが白人なのって・・・おい!
彼が名乗るシーンでは、劇場内にはやはり小さな笑い声を上げた人がいたし、ヒロインは「バーバラじゃなくてバーブよ」だし、トムとジュディはほとんどバカップルだし・・・

オリジナルやリメイクをさんざん観た者にとって、これはこれで趣があるのでそれはまあそれとしても、肝心の作品のデキはと言えば・・・やっぱちょっとなあ、と。

3D映画だからイロモノとして楽しむのが正しいとは思うのですが、臓物が派手にスクリーンから飛び出してくることもなく、多勢のゾンビに襲われるシーンを立体感溢れる映像で見せてくれることもなく。

NOTLDや「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド 死霊創世記」とは違って、本作ではエゴイズムの象徴として描かれていない父親の娘への思いや、せっかくシド・ヘイグを配したのだから、墓地の管理人の狂気をもっと強烈に描いていたのなら、ただの企画モノと片づけられない評価も与えられようものを、と思ったり。

だから、「最後の審判」や「宿命」といった台詞は空回りするだけ、死者が蘇った理由を明確にしたこともお気に召さないであろうゾンビ映画フリークもいることでしょうし、これでもしシド・ヘイグがいなかったら、怒ってとなりの観客の首筋に噛み付こうとするマニアがいてもおかしくはない気がするんですよね。

とまあ、ただ単純に久々の3Dホラーを楽しむ、あるいはマニアがやはり義務として観ておくといったネタでしか、本作を観る意味はないように思います。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

超立体映画 ゾンビ3D  NIGHT OF THE LIVING DEAD 3D
2006年 アメリカ (2007年日本公開)
配給 トルネードフィルム
製作・監督 ジェフ・ブロードストリート
出演 ブリアンナ・ブラウン ジョシュア・デローシュ シド・ヘイグ グレッグ・トラヴィス

バイオハザードIII

バイオハザードIIIファンタスティックムービーの境界は曖昧だけど、このシリーズはやはりSFやアクションに分類するのが適切で、だからホラー映画マニアがなにかにつけて貶すことにはちょっと疑問を抱いています。

ロメロへのオマージュと思しきシーンはあるし、「ゾンビ映画大事典」に確かに掲載されてはいるけれど、ミラ・ジョヴォヴィッチ=アリスの活躍を描くファンタジーとすら言えるのだから、と。

そして、「これはなに?ビデオクリップ?それともゲーム?」と言いたくなるような映像を垂れ流す作品が、より賞賛されている風潮にはなにかが歪んでいるように思えてなりません。

いや、私にはそう声高に誉める思いなどなく、ただ、スタッフがきっちりとした仕事でもって「映画」を製作していることに好感を持っているだけなのですけどね。
今作のクライマックスで最後の敵のもとへと向かうシーン、照明は眼のあたりに当てられて、いちど振り返ったあとでまた前を向くアリス、といった細かな演出を観ていると、なおさらそう思えるんですよ。

たとえAMAZINGやSOMETHING ELSEがなくても、コーラとポップコーンを手に安心して観ることのできるエンターテインメント、じゅうぶんじゃないですか。

とはいえ、今作については全体的に散漫かつ冗長な印象があり、前2作よりちょっと落ちるかな・・・とは思ってしまいました。
クライマックスにしても、レーザートラップとクローンアリスはいいけれど、かなり呆気ないよなあ、と。
また、ラストの日本には、私も劇場内のどよめきに参加してしまいましたしね。

それはともかく、アンデッドと化したカラスの大群をアリスが一蹴するシーンはなかなかだし、またゾンビが走るのかよっ!とか思いつつも、ラスベガスの地獄はかなりの出来映え。
カルロスが「男」を見せてくれるシーンはやはり格好いいし、ともあれことさら貶すべき代物にまで堕していることはなく、今回もまたじゅうぶんに楽しめる作品になっているとは言えるでしょう。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

バイオハザードIII  RESIDENT EVIL: EXTINCTION
2007年 アメリカ
配給 ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
製作 ポール・W・S・アンダーソン ジェレミー・ボルト ロバート・クルツァー他
監督 ラッセル・マルケイ
出演 ミラ・ジョヴォヴィッチ オデッド・フェール アリ・ラーター イアン・グレン

Oct 28, 2007

インフェルノ

インフェルノ「暗黒の母」(テネブラルム)の存在に近付いてしまった女流詩人ローズ。
ローマで楽理を学んでいる弟のマークがニューヨークに駆けつけたとき、彼女が暮らす古いゴシック建築のアパートは魔女の恐怖で覆われていたのだった・・・

錬金術師であり建築家であるヴァレリが著した「三人の母」、災いをもたらす女神をめぐる怪異譚。

蛾を喰らう蜥蜴や鼠を食いちぎる猫、砕け散るガラス。赤や緑の原色を配したアルジェントカラーと神経を逆撫でする不協和音。
ひたすらに不安を煽り、不快感を叩きつける「ならでは」の演出は健在、「サスペリア」が白雪姫であるのに対して、本作は「ヘンゼルとグレーテル」を意識したというそのセンスはさすがなのですが、フライブルクの「嘆きの母」(サスペリオルム)ほどに賞賛されることがなかったのは、やはりやむをえないところかな、と。

どうして呪われた書が骨董屋や図書館であっさりと手にできるのさ、というのは無粋極まりないツッコミであるとしても、登場人物たちが脈絡もなく、機械的に次々と殺害されていくのは・・・やっぱどうなのさ?
とりあえず、古物商が惨殺されるシーンについては「はっ?」と思った人が少なくないでしょうし、個人的には「ルチオ・フルチだったらアリかもしれないけどさあ・・・」とか。

そして、問題はなんといってもラストシーン。ヴェロニカ・ラザールでもって・・・アレはないだろう、アレは!
もしかしたら演出までもがマリオ・バーヴァだったのかもしれませんが、なんにせよ失笑あるいは噴飯もので・・・

というわけで、ようやくDVDがリリースされたので久々に鑑賞したものの、やはりどうにも誉めづらい作品なんですよ。
「サスペリアPART2」や「サスペリア」と比較して落ちるのはやむをえないところだし、最近の作品で観たのがあの「ドゥー・ユー・ライク・ヒッチコック?」であるのはともかく、アルジェント作品にさして思い入れのない身としてはなおさら。

それでも「魔女三部作」の完結編、ローマの「涙の母」(ラクリマルム)を描く「LA TERZA MADRE」(米公開タイトル「MOTHER OF TEARS」)はとにもかくにもアーシア・アルジェントがヒロイン。
共演のウド・キアはともかく、ダリア・ニコロディは黙っちゃいないだろうし、楽しみにしているのですけどね。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

インフェルノ  INFERNO
1980年 アメリカ
配給 20世紀フォックス
製作 クラウディオ・アルジェント
監督 ダリオ・アルジェント
出演 リー・マクロスキー アイリーン・ミラクル サッシャ・ピトエフ ダリア・ニコロディ ヴェロニカ・ラザール アリダ・ヴァリ

【参考リンク】
angeleyes 「イタリアン・ホラーの帝王 ダリオ・アルジェント」
AVETE VISTRO 「インフェルノ」

【関連記事】
サスペリア (サスペリア アルティメット・コレクション DVD-BOX)

Oct 14, 2007

スポーツキル 地獄の殺戮ショー

スポーツキル 地獄の殺戮ショー誘拐と監禁と殺人ゲーム。

さらには、昏睡している美女をバックからレイプするシーンといった禁忌の数々によって、本国ではレイティングすらペンディングのまま未公開。
日本でもR-18である上にレイトショーのみの劇場公開と、そうした胡散臭さに期待した人は多いでしょうし、かく言う私もそうなのですが・・・

劇場公開ではもちろんDVDスルーだとしても観るべきには非ず、ましてスピンオフを製作しているなんて冗談じゃない、と吐き捨てたくなるほどにお粗末な代物でした。

とにかく、殺人賭博クラブをマネージメントしている組織、あるいは悪漢たちの背後や内にあるどす黒いものがまるで描かれていないので、物語がどうしようもなく浅薄。
ヒロインはがんばっているとは思うけれど、そうした演出や脚本の稚拙さによって、トンネルのシーンにしても恐怖感や閉塞感というよりは、その冗長さをこそ息苦しく思ってしまう始末で。

キャスティングは悪くないんですよ。クラブを主宰するアイヴァンや、管理人のオーヴィルはたしかに味のあるキャラクターだし。
ただ、不気味さやはっちゃけぶりが不足していて犠牲者たちを完全に喰ってしまうほどではなく、はじめはニヤニヤと傍観していながら、やがて殺人ゲームに巻き込まれる観客の描写にしても、「ホステル2」とさえ比べるべくもありません。

また、パンフレットの解説はスラッシャー映画の系譜を語るばかり、作品の出来にほとんど触れていないことにはライターの苦労を察してあげる寛容さも必要だったり。

それでも、低予算のインディペンデントを誉めることがまるで美徳であるかのように、この作品をそう悪くは評さない向きもあるかとは思うけれど、駄作は駄作と言い切らないと。
だって、だからこそのパワーやセンスなんてまるで窺えないでしょう?

(文中、ネタバレは背景色にしています)

スポーツキル 地獄の殺戮ショー  Sportkill
2007年 アメリカ
配給 アット エンタテインメント
製作・監督 クレイグ・マクマホン
出演 ダナ・ウッド デヴィッド・C・ヘイズ ケヴィン・モイヤーズ マット・ロビンソン

ヒルズ・ハブ・アイズ2

ヒルズ・ハブ・アイズ2オリジナルのリメイクではなく、あくまでも「ヒルズ・ハブ・アイズ」の続編。

つまりは「サランドラ」と「ヒルズ・ハブ・アイズ」の設定を使った、軍隊の新兵チームと食人族との死闘を描く新しい物語、少なくとも「サランドラ2」をまた観る羽目にはならないわけで、その点だけは安心だったわけですが・・・

砂漠での脅威がだらだらと描かれたあと、舞台を炭坑に移してさらにだらだら。

閉鎖された空間を舞台にしたホラーがこのところトレンドになっていることもあれば、そこにはなんらかの新機軸が欲しいところ・・・というのはさすがに私見に過ぎるでしょうけれど、ともあれストーリーや演出があまりにも淡白で平板だよなあ、と。

もちろん奇を衒う必要などまったくないし、アレクサンドル・アジャと比較するような酷なこともしていないのですが、ホラー映画の基本を機械的になぞっているだけではという印象が拭えなかったんですよ。

だから、食人族がじわじわと新兵たちを追い詰めてゆく恐怖や、アバンタイトルで掲げたこの続編のテーマ、「種の存続」をめぐる狂気の描写がどうにも希薄。
中盤にあった伏線に対する帰結について「あれっ?」と思ったことを含めて、クライマックスのカタルシスもいまひとつ。

人間描写についても甘いとは言わないまでも魅力やインパクトを欠くし、あえて誉めるなら「ヒルズ・ハブ・アイズ」のルビーに相当するキャラクターが多少のスパイスになっていることくらいで・・・

などとあれこれ貶しながらも、辛辣だった前評判ほどにひどい出来とは思わなかったので、「サランドラ」の世界をただ楽しめさえすればというような、抑えめのテンションで観るのがいいのでしょうね。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

ヒルズ・ハブ・アイズ2  THE HILLS HAVE EYES 2
2007年 アメリカ
配給 プレシディオ
製作 ウェス・クレイヴン
監督 マーティン・ワイズ
出演 マイケル・マクミリアン ジェシカ・ストループ ジェイコブ・バルガス

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カタコンベ

カタコンベ姉のキャロリンのいるパリを訪れた、精神安定剤に頼るほど内向的なヴィクトリア。

ソルボンヌ大学に留学してパリでの生活を謳歌しているキャロリンは、警察のマークをいなしながら開催されるゲリラ・パーティーへとヴィクトリアを誘うのだが・・・
その会場は700万体もの死骸が眠り、黒き神の悪しき伝承のある地下墓地<カタコンベ>だった・・・

『SAW』シリーズのプロデューサー最新作」というキャッチコピーがそもそも胡散くさかったわけですが、はたしてその出来は・・・はっきり言って最悪でした。

オープニングはまあともかく、キャロリンのアパートにヴィクトリアが案内されるシーン。
そこには、発狂した住人が殺戮の血飛沫をあげた「いわく」があるらしいのですが、ヴィクトリアが階段を上がっていくカット割りが・・・これ、映像としてどうなんだと、この時点で監督たちの力量に疑問が湧いてきてしまったんですよね。

また、最初の殺人を目の当たりにしたヒロインがパーティー会場へと戻り、そのあとでまた地下迷路に迷い込むという展開が、テンポを徒に悪くしたのも考えもの。

そこをもう少し上手く見せて、あとはクライマックスへと続く恐怖を一気に描けばいいものを・・・スクリーンには緊張感も欠くドラマが延々と映し出されていただけで。

非難囂々な結末についてはなんていうか、あれもまあアリでいいとは思うのですが、ラストシーンがまたいまひとつ。
ていうか、おいおい、ヘンリーはどうなったのさ

閉鎖された空間の恐怖、そこからの脱出を描いたホラー映画の多い昨今、「ディセント」がいかによくできた作品であったことかを再認識したり、ライオンズ・ゲートは時々やらかすよなあ・・・と思ったりしながら、エンドロールを眺めていた私だったのでした。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

カタコンベ  CATACOMBS
2006年 アメリカ (2007年日本公開)
配給 デジタルサイト
製作 マーク・バーグ オーレン・ノウルズ グレッグ・ホフマン
監督 デヴィット・エリオット トム・コーカー
出演 シャニン・ソサモン アリシア・ムーア エミール・ホスティナ

Sep 29, 2007

ヒルズ・ハブ・アイズ

ヒルズ・ハブ・アイズオリジナルに対する敬意と、新たなエンターテインメントを提供しようという意志。

アレクサンドル・アジャなら、どこかの誰かのようにオナニーな映像を垂れ流すことはあるまい、と思いながら観たリメイク版「サランドラ」は、やはり期待を裏切らない出来映えでした。

まずは、オリジナルを観た人さえも唸らせるアバンタイトル。
その上手さに感嘆している暇もなしにはじまった、カントリーソングが流れるオープニングは日本公開が危ぶまれたその所以、核実験と畸形の映像で・・・

やがて繰り広げられる食人一家との戦い、かつて胸を躍らせたファンタスティックへの期待感が、否応なしに昂ぶってしまうというものです。

しかし、リメイクとしてのアクセントはつけながらも、物語は意外なほどオリジナルに忠実に展開していくのですが、それは「ハイテンション」で見せたアジャのセンスとバランス感覚。
徒にプロットをいじることもなく、また、映像の綺麗さもホラー映画であればあまり前面に押し出そうとすることもなく。

そして、クライマックスでの暴力と狂気の街こそが、リメイクの製作に抜擢されたアジャと脚本家のグレゴリー・ルヴァスールの歓びと興奮、そして才気が生み出した新たな恐怖。

あえて欠点を挙げるなら、食人一家の描写が甘いあたりでしょうけれど、がオリジナルに増して活躍していることは楽しめますし、なんと言ってもラストのルビーには・・・もう嘆息するしかありません。

クレイヴンが求めた「新しいエナジーとスタイル」と、アジャが描いた「新しいディレクション」。
そう、スタッフのまなざしの高さと丹精な仕事が生み出した、近年屈指の傑作ホラーであることは間違いないでしょう。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

ヒルズ・ハブ・アイズ  THE HILLS HAVE EYES
2006年 アメリカ (2007年日本公開)
配給 プレシディオ
製作 ウェス・クレイヴン
監督 アレクサンドル・アジャ
出演 アーロン・スタンフォード キャスリーン・クインラン エミリー・デ・レイヴィン

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Sep 8, 2007

ホステル2

ホステル2物語の中盤まで恐怖描写を排除したわざとらしさ、意外性を無理矢理に織り込んで展開する拷問と殺人。
「どうだい、このスピード感は大したものだろう?」とでも言いたげなクライマックスが、だからこそ殊更めいて辟易とした前作は、ともあれファンタスティックとは言えません。

ドロドロとした肉塊の画像などのプロモーションに期待感を煽られるのは堪えるようにして、主人公が女子大生グループに替わったことでホラー映画の王道が楽しめれば・・・と劇場に足を運んだわけですが。

前作と同じ意味合いのオープニングにはじまって、パクストンが登場する冒頭には劇場内に小さいながらも嘆息があがって、私も彼がどうやってこの続編に絡んでいくのかしらとは思ったものの、そのあとが・・・いかにもこの監督らしいよな、と。

ところが、いくら私がイーライ・ロスが嫌いだとは言え、そこからは見せてくれたんですよ。

プロットが分かっているのなら息を呑むしかないオークションのシーンは秀逸だし、ヒロインがエリート・ハンティングのメンバーと出会う祭のシーンも、そのあとに繰り広げられるはずの陰惨な物語への期待を昂ぶらせてくれるし。
そして緊張感を欠くこともなく、今回はやってくれるじゃんと思ったけれど・・・

 「なぜスロバキアに来たのか・・・分からない。」

 「我々は異常か?」

いや、結末はあれでいいんですよ、あれで。
生贄となる若者たちだけではなく、狂気漲り富める殺人者も今作はじっくりと描きながら、しかしそう一筋縄には行かない展開、物語の反転は。

ただ、ベスやスチュアートの内なるものがしっかりと丁寧に描かれてはいないのだから、なんの説得力もカタルシスもないというもの。
そのドラマはおそらくロスの中にだけあって観客に伝わることはなく、これなら脚本だけは練られていた前作や「キャビン・フィーバー」の方がマシ。

だからラストシーンもただ腹立たしいだけで、エンドロールが流れ始めるや憤然と席を立つ人が少なからずいたのもやむをえないところ。
とはいえ、最後にベスがある台詞を吐き捨てるのでそれはやはり御法度だったのですが、その気持ちもまあもっともな凡作だと言えるでしょう。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

ホステル2  HOSTEL: PART II
2007年 アメリカ
配給 デスペラード
製作総指揮 ボアズ・イェーキン スコット・スピーゲル クエンティン・タランティーノ
監督 イーライ・ロス
出演 ローレン・ジャーマン ロジャー・バート ヘザー・マタラッツォ ビジュー・フィリップス リチャード・バージ ヴェラ・ヨルダノーヴァ

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Jan 25, 2007

ハイテンション

ハイテンション アンレイテッド・エディション この当惑は君を愛してるから ときめきが次第に大きくなる

 そばに来て強く抱きしめて なぜって君を愛してるから

笑いながら、「なまいきシャルロット」を一緒に歌いながら、試験勉強をするために親友のアレックスの実家へとやってきた女子大生・マリー。
そして、トラックに乗ってやって来た正体不明の男が人里はなれた一軒家のドアのベルを鳴らして、地獄の一夜がはじまった・・・

アレクサンドル・アジャがリメイク版「THE HILLS HAVE EYES」の監督に起用されたのは、おそらくは徒に技巧に走ることのない演出とセンスに拠るもの。

作り手のマスターベーションを見せられることの少なくない昨今のホラー映画にあって、緊張感を決して緩ませることなく、恐怖と暴力を淡々と描き続けたその姿勢は、まず誉められるべきものでしょう。

まあ、喧伝されたゴアはそう大したものではなく、特殊メイクが「地獄の謝肉祭」のジャンネット・デ・ロッシであるのなら、ガソリンスタンドのシーンでは、その向こう側に冷蔵庫の酒瓶が見えるほどの大きな穴を土手っ腹に空けてほしかったものですが、それはそれとして。

この作品をめぐる賛否両論は、なんと言っても観客を騙し討ちにした結末がその最たる理由。
観終えるや、いや、種明かしがされるやいなやちゃぶ台をひっくり返した人は少なくないと思いますが、そこでストーリーの矛盾を云々することは、はたして是と言えるのでしょうか。

 「誰にも邪魔させない」

 「誰にも邪魔させない・・・」

問題はむしろ、そうして観客が感じるであろう疑問を有無を言わさずねじ伏せる説得力、それこそ「極限体験」を供するほどの圧倒的な演出力が必要ではあったということ。

その点については力不足であったことは確かに否めませんが、狂気の物語であればこうした手口もまたアリとするべきで、仕掛けられていたトリックを殊更に声高に取り上げて、作品を否定してしまうのは無粋だと思うのですがいかがでしょう。

それにしても、ヒロインのセシル・ドゥ・フランスの存在感、その魅力は強烈。
ラストシーンの狂気溢れる表情は、この作品について批判的な向きさえも唸らせたことでしょうし、数多のホラー映画の中でも相当な輝きを放っているように思います。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

ハイテンション  HAUTE TENSION
2003年 フランス (2006年日本公開)
配給 ファントム・フィルム
製作 アレクサンドル・アルカディ ロベール・ベンムッサ
監督 アレクサンドル・アジャ
出演 セシル・ドゥ・フランス マイウェン フィリップ・ナオン アンドレイ・フィンティ オアナ・ペレア

Nov 18, 2006

SAW3 ソウ3

ソウ3 DTSエディションたったひとつのギミック、たった一人のキャラクターに物語を委ねてしまった「ソウ2」はやはり期待はずれであり、「ソウ」の文法はもちろん踏襲してはいたものの、そこに在る作り手の哲学はどうにも希薄に感じられてしまいました。

そうは言っても、続編が製作されたのなら、たとえまた出来が悪かろうとゲームに参加しないわけには!と、劇場へと足を運んだわけですが。

いや、意外と言っては失礼ですが、なかなか結構なお点前でしたよ。

まあ、序盤はだらだらとした殺人、もとい、ゲームが続くのに呆れてしまい、いきなり退場してやろうかと思いはしたのですけどね。
「あらあら、ケリーが犠牲になっちゃったよ」とは思ったけれど、その程度で驚いていてはこのシリーズは観ていられませんし。

しかし、飲酒運転で最愛の息子を轢き殺された男にゲーム、あるいは「赦しの試練」が課せられてからの展開が上出来。
より閉鎖された空間での物語であれば、緊張感は「ソウ2」よりも明らかに上で、本当に息が詰まるような感覚をおぼえたのは、池袋シネマサンシャインが満席だったからだけではないのでしょう。

拷問シーンも「ホステル」よりはるかに痛そうで、ゴアを求める作品ではないとはいえ、そのあたりにうるさい諸兄も満足することでしょうし、また、ブタさん大行進も必見(笑)です。

ここでいちおう難点を挙げておくなら、音楽や効果音に目新しいものがなかった点。
そりゃあ、トリック・ドールがケラケラ笑う声は好きだけど、おなじみのメインテーマのアレンジで片付けられたりするのもなあ、と。

それはそれとして、誉められるべきはやはり、「ほんとうのゲームはなんなのか?」ということ。
その点に気付いていても気付いていなかったとしても、ジグソウがアマンダとジェフに仕掛けたゲームが錯綜し、やがて迎える鮮烈なバッドエンドはお見事と言ってよいでしょう。

SAW3 ソウ3そして、「ジグソウとアマンダのラブストーリー」とされるその所以こそが、この第三作の秀逸さであるように思います。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

SAW3 ソウ3
2006年 アメリカ
配給 アスミック・エース エンタテインメント
製作 グレッグ・ホフマン オーレン・クールズ マーク・バーグ
監督 ダーレン・リン・バウズマン
出演  トビン・ベル ショウニー・スミス アンガス・マクファデン バハール・スーメキ ダイナ・メイヤー

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Nov 15, 2006

マニアック

マニアックこの作品が紹介されるときの常套句は言わずもがな、トム・サヴィーニの手による特殊メイク、その匠の技。

今ではもう、偉大なる先達の意志を継ぐフォロワーの活躍、あるいは時として唾棄すべきCGの進歩によって、特殊メイクが殊更に強調されることは少なくなってきたようにも思えるのですが、ともあれ「スキャナーズ」もかくやという頭部破壊シーンや、「死霊のえじき」なクライマックスについては、嘆息すらしよう技術の粋を堪能できるものと言えるでしょう。

しかし、作品そのものの按配はどうにも・・・といったところで。

物語のテンポや構成が悪すぎて、特にアンナが登場するまでがいかにも冗長。
また、大都会に繰り広げられる無差別殺人の狂気や恐怖は、もっとドラスティックに描いてこそ観客を高揚させつつラストシーンへと誘えるものだろう、と。

連続殺人の背景にあるものがマザー・コンプレックスであることはまあともかくとしても、その描写が甘いものであれば凡庸に堕するというもの。
あるいは、看護婦やファッション・モデルといった犠牲者、殺人の舞台や手口にバリエーションがあることには工夫が認められるものの、とりあえず脚本や演出はもっと練ろうよ・・・とか。

 「僕なら永久に保存するね。」
 「そのまま保存する。永久に。」

いかにジョー・スピネルが偉大であろうとも、殺人鬼が小太りというのは萎えるものがあるし、ヒロインにもいまひとつ魅力がなく、そうしてキャラクターの妙を欠くのもよろしくないところ。

そうはいっても、ディスコ・ボーイが魔の手にかかるシーンには「よっしゃ!」と思うし、人形たちに復讐されるクライマックスは否定するものではありませんが、やはりサヴィーニの特殊メイクを味わうこと以外にこの作品の意義は・・・というのが正直な感想で。

少なくとも「『ゾンビ』『サスペリア』を凌ぐ超残酷の極め付け!」と煽るコピーは勘弁、ではありますね。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

マニアック  MANIAC
1980年 アメリカ
配給 日本ヘラルド映画(1982年日本公開)
監督・製作 ウィリアム・ラスティグ
出演 ジョー・スピネル キャロライン・マンロー ゲイル・ローレンス ケリー・パイパー トム・サヴィーニ

Oct 28, 2006

ホステル

ホステル コレクターズ・エディション 無修正版凄惨な「何か」が繰り広げられたであろう部屋の映像と口笛、というオープニングはともかく、バックパッカーたちの乱痴気騒ぎを延々と描く序盤と、そのあとにようやく疾走する狂気。

あるいは、観客にはジョッシュが主人公であるように思わせておいて実は・・・という意外性や、だからこそヒーローへと転化するパクストンの逃走、そして逆襲。

いや、とにかくあざといんですよ、この作品。

「俺ってウマイだろ?」とでも言いたげなロスの演出や、タランティーノ臭がどうにも鼻について、拷問映画と謳われた新機軸のホラー、ファンタスティックを観客がみな純粋に楽しめたのかがどうにも微妙、で。

その拷問や殺人のシーンにしても、もっと執拗に残酷に描写されていればこそで、三池崇史の「痛いって美しい!」というコメントに期待したような圧倒的な暴力などは伺うことができません。

ゴアはまあともかくとしても、一人、また一人と「チェックアウト」してしまうこと、姿を消していくことの緊張感があまりにも希薄なのがまたどうにも・・・
序盤であえて恐怖感を煽る描写を排除したのであれば、いざそのあとがそんな按配では話にならないでしょう。

とはいえ、クライマックスはさすがに楽しめはしたものの、見え見えの伏線にやらなにやらがそうした不満とあいまって、素直に誉めることができない始末、というのはさすがに言い過ぎなのでしょうけれど・・・

演出の技量に関しては確かに向上してはいるものの、観客をどのようにして楽しませようかという思慮を欠き、マスターベーションや驕りが払拭されていることもなく。
ともあれ作り手としてのマインドは「キャビン・フィーバー」からあまり進歩はしていないように思えます。

シアターN渋谷


(文中、ネタバレは背景色にしています)

ホステル  HOSTEL
2005年 アメリカ
配給 ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
製作総指揮 クエンティン・タランティーノ ボアズ・イェーキン スコット・スピーゲル
監督 イーライ・ロス
出演 ジェイ・ヘルナンデス デレク・リチャードソン エイゾール・グジョンソン

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Oct 15, 2006

デビルズ・リジェクト~マーダー・ライド・ショー2

デビルズ・リジェクト~マーダー・ライド・ショー2ファイアフライ一家がスクリーンの中で笑い、踊り、殺戮のかぎりを尽くした極彩色のショータイムから3年。
その「マーダー・ライド・ショー」のようなゴアを期待すると裏切られることになるわけですが、それはロブ・ゾンビが「続編は嫌いだ」と言うとおりに、まったく異質な作品になっているから。

16ミリフィルムで撮影された映像の質感、それにあまりにもマッチしたサウンド。
観客に供されるのはステレオタイプなホラー映画ではなしに、70年代のクライム・ムービー、ロード・ムービーであり、しかしながら、「マーダー・ライド・ショー」の続編ではあることの意味を考えると・・・ ロブ・ゾンビ、凄すぎ!と言うしかありません。

逃げるファイアフライ一家と、それを追うワイデル保安官。
繰り広げられる殺人のサディスティックとファンタジー、そして「役柄の解釈」。

なにが悪でなにが正義なのか、物語が進むにつれて観客は困惑することになって、そして、あの痺れるラスト・シーン。
もう、どうしようもないですね。どうしようもないほどにクールです。

また、ベイビーの半ケツも健在。ていうか、さらにサービスしていたりするわけですが、それはともかく、ケン・フォリー(「ゾンビ」)が出演していることにも大満足。

「誰かの機嫌をとるための映画」に唾を吐きかねないゾンビであるからこそ、それはもう上機嫌で映画館をあとにする観客はさぞや多いことでしょう。

最後にもういちど。これはホラー映画ではありませんよ!


デビルズ・リジェクト~マーダー・ライド・ショー2  THE DEVIL'S REJECTS
2005年 アメリカ
配給 ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
製作 マイク・エリオット アンディ・グールド マルコ・メーリッツ マイケル・オホーヴェン ロブ・ゾンビ
監督 ロブ・ゾンビ
出演 シド・ヘイグ シェリ・ムーン・ゾンビ ビル・モーズリイ ウィリアム・フォーサイス ケン・フォリー

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Sep 9, 2006

ファイナル・デッドコースター

ファイナル・デッドコースター『ファイナル・デスティネーション』は凄惨な飛行機事故、『デッドコースター』が未曾有のハイウェイ衝突事故。
そして、次なる「死の運命」の舞台は・・・ ハイスクールの卒業イベントのアミューズメントパークで発生した、壮絶なジェットコースター事故。

デジタルカメラの写真に隠されたヒントを読み解いて、はたして「死」を回避することができるのか・・・!?

オープニングの衝撃にはじまって、見えない「力」というホラー映画としては異質の恐怖を描いた第一作。それを踏襲したストーリーそのものはともかく、ゴアシーンの過激さに唸らされた第二作。

第三作を製作するにあたり、スタッフがまず十分に考慮するべきはプロットは同一であるということ。
しかし、前二作を踏まえた上での新たな「ホラー・アトラクション」を見せてくれるわけでもなく、すぐそばにある日用品やらなにやらが、どう作用して死を運んでくるのかとハラハラさせる作り、「死が飛び越えた」そのあとに何が起こるのかもまたしかり。

徒に捻ったストーリーにする必要などないけれど、このシリーズの手口が解ってしまっている向きの目に、それらがどう映るのかを意識する必要はあったように思います。

「ジェットコースターが怖いのは、自分でコントロールできないからだ」は、シリーズ第三作という意味においていい台詞であるように思うし、「君を守るように言われたから」というケヴィンの台詞も上々。
序盤はそうしてなかなかに見せてくれたものの、あとはもはやお馴染みの展開であれば、なんかこう冗長な印象を拭うことができず、ゴアシーンが喰い足らないことと相まって、うーん、退屈な出来になってしまっているよなあ、と。

ただ、公開直前にテレビ放映された『デッドコースター』を観て劇場に訪れた人は過度の要求はしないだろうし、ストレートかつシンプルなラストシーンは好みだし。
公開初日プレゼント「絶叫ステッカー」(パンフレットにも封入されてましたけど)そもそも、このシリーズはその出来について貶される謂われはないものの、語気を強めて褒めちぎるほどではないように思えるし、もはや伝統芸となった「死のドミノ倒し」を単純に楽しむべき作品と言えるのかもしれませんね。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

ファイナル・デッドコースター  FINAL DESTINATION 3
2006年 アメリカ
配給 ギャガ・コミュニケーションズ
製作 ジェームズ・ウォン グレン・モーガン クレーグ・ペリー
監督 ジェームズ・ウォン
出演 メアリー・エリザベス・ウィンステッド ライアン・メリマン クリス・レムシュ アレックス・ジョンソン サム・イーストン

Jul 18, 2006

ディセント

THE DESCENT特報の映像を観たのはもうだいぶ前のこと。
ご多分に漏れず「CUBE」「SAW」を連想しながら、劇場公開を心待ちにしていたわけですが、その間の前評判は芳しくない上に、そこで引き合いに出されるのが「0:34 レイジ34フン」では萎えること甚だしく。

それでも、洞窟を舞台として、惨劇に襲われる主人公6人が全員女性というのは新機軸ではあることだしと劇場へ。
「サイレントヒル」はいまひとつ・・・だった身としては、さらに落胆することになるのかなあと思っていたら、なかなかどうして。

洞窟の闇の恐怖、その閉塞感は十分に描かれていると思うし、女性6人という設定は、やはり普遍的な無差別殺人ものとは違った衝突やら心理劇やらを成立させているよなあ、と。
だからこそ斜に構えた作りにする必要などないし、映像が淡白であることも、ホラー映画はその点に徒にこだわるとロクなことにならないのが相場、むしろストーリーに集中できるというもので。

そして、賛否両論あろうかとは思うけれど、ラストシーンも上々。
洞窟の闇と、ヒロインの心の闇をかけたストーリーであればこうした結末もまたもっともではあるものの、ホラー映画を見慣れた諸兄も「こう来るか」と、とりあえずは満足したのではないでしょうか。

ただ、怪物のデザインは、やはりあんまりというかなんというか・・・
また、壁画や矢印、死屍累々な洞窟の中に広がる脅威、さらに登場人物の葛藤やせめぎ合いをしっかりと描いていたのなら、かなりいいデキではあったろうとは思うけれど、なにはともあれ及第点。

ふりむいたジュノの目の前に・・・のシーンでは、「死霊のえじき」のローズ大尉を連想したりしてついニヤリとしてしまったことを含め、ゾンビ映画のテイストも伺えるゆえに、ロメロ信者としては評価が甘くなってしまうのかもしれませんが、それでも「CUBE」に及ぶべくはないまでも、「0:34 レイジ34フン」より上であることは間違いないでしょう。

そして、この監督 の次回作はゾンビものとのことですが、 はゾンビ映画を製作する予定があるとのこと、とりあえずは「28日後・・・」「ショーン・オブ・ザ・デッド」を凌ぐ出来となることを期待しておくことにいたしましょう。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

ディセントディセント  THE DESCENT
2005年 イギリス
配給 エイベックス・エンタテインメント+トルネード・フィルム
製作 クリスチャン・コールソン
制作総指揮 ポール・スミス
監督 ニール・マーシャル
出演 シャウナ・マクドナルド ナタリー・メンドーサ アレックス・リード サスキア・マルダー ノーラ・ジェーン・ヌーン マイアンナ・バリング

Jul 9, 2006

サイレントヒル

サイレントヒルゲームの世界観を忠実に映像化したのだからと、この作品を賛美することを否定はしないけれど、では劇場に訪れた観客のどれほどがプレイしているというのか?
それをまず考えるべきで、だから、

 「これは現実よね。いったいどうなってるの?」

どうなってるのって、それはこの映画のことだよと思ったり、126分もの上映時間を途轍もなく長く感じてしまった人は少なくないことでしょう。

「母性」を前面に描きながら、だらだらと恐怖を煽るシーンばかりが展開したことが、個人的にはその冗長さに閉口した理由の最たるもの。
いくら原作が原作だからって、映画までジャパニーズ・ホラーに阿る必要なんかないだろう? 映像美というものも、時には邪魔になることがあるように思うし、ね。

そして、サイレントヒルの秘密が明らかにされる後半の展開はまあよしとしても、これがホラー映画であるのなら、「魔女もの」としてどうなんだ、といったあたりも苛立ちをおぼえたところ。

そこでアルジェント作品を引くまでしたらインネンではあろうけれど、少なくともローズとクリストファーがそれぞれにサイレントヒルの真実に迫る中で、その恐怖を描くことはできていないように思います。

それでも、CG臭が鼻につくことはさておいて、レッドピラミッドをはじめとするクリーチャーデザインはなかなかだし、シビルを含めて人物描写もそう悪くはなく、ラストシーンだけは天晴れと言ってもいいかもしれません。

しかし、鑑賞し終えてとにかく疲れてしまったのは、かえすがえすもその上映時間、そしてゲームの熱狂的ファンであるが故にその思い入れだけで突っ走った演出、さらにそうは練られていない脚本の稚拙さによるものか・・・
それは言い過ぎなのでしょうけれど、今夏いちばん期待していた作品であるがゆえに、ともあれ失望は拭えませんでした。
サイレントヒル


サイレントヒル  SILENT HILL
2006年 カナダ・フランス
配給 松竹
製作 サミュエル・ハディダ
監督 クリストフ・ガンズ
出演 ラダ・ミッチェル ローリー・ホールデン ショーン・ビーン デボラ・カーラ・アンガー

May 26, 2006

死霊のはらわた

死霊のはらわたいくらそれほど思い入れがないとはいえ、あるいはあらすじさえ知っていれば字幕などなくてもまるで問題ないとはいえ、輸入版の「死者の書バージョン(←人により精神的ブラクラ)しか持っていないのはホラーマニアのはしくれとしていかがなものか。

DVD「20周年アニバーサリー 死霊のはらわた」は画質やらなにやら、このメーカーとしてはマグレと言われた一枚、廉価版がリリースされたのなら買うのがスジというものだよなあ・・・

ということで久々に鑑賞、まあ何度も観ているので、シェリルたんハァハァなシーンだけは押さえておいて、あとはビールで酔っ払いながらアッシュくんの奮闘ぶりを眺めたわけですが。

いま観るとやはり作りの粗さが目につくし、最近の作品であればベタベタなCGを見せられるとヤレヤレとなる身としては、クライマックスのパペットアニメなどは萎えること甚だしく。
初見のときは、暖炉で死者の書を焼くというその結末に、もうひとこえどうにか・・・と思ったのもさることながら、ラストシーンのぞんざいさには怒りすら覚えたもので。

しかし、シェリーのナイフの持ち方はなかなかに細かな芸であるし、死霊に憑かれたあと、床に座ってケタケタと笑うリンダはセンスの伺えるシーン。
そして何より、サム・ライミの若さゆえのパワーがスクリーンに叩きつけられているのは紛れもない事実。

熱烈な支持を受けているのは極めてもっともで、妙に醒めた目で観てしまうのは自分がロメロ信者であるからなのでしょうし、“Within the Woods”を観ているわけでもないのであんまりなことを書く資格などないのですが・・・

それでも、ありえないほどにメジャーな監督になったいま、改めて所謂「スプラッター」を製作したのならどのようなものになるのだろう? 是非それを見せてほしいものだという思いはありますね。
それは勿論、この作品を熱烈に支持している人であれば尚更のことなのでしょうけれど。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

死霊のはらわた
1982年 アメリカ
配給 日本ヘラルド映画
製作 ロバート・G・タぺート
監督 サム・ライミ
出演 ブルース・キャンベル エレン・サントワイズ ベッツィー・ベイカー ハル・デルリック サラ・ヨーク

May 25, 2006

バスケットケース

バスケットケース スペシャルコレクション引き裂かれたシャム双生児、拡散する憎しみ。
その復讐の果てにあるものは・・・

まずは最初の犠牲者が、何者かに追い詰められて惨殺されるところから物語が始まり、そしてドウェインがバスケットケースを抱えてニューヨークにやってくるという序盤の展開は、観客を物語世界に引きずり込む簡素で効果的な演出。

ひと癖もふた癖もあるHotel Broslinの面々、ドウェインの恋、「二人」の生い立ちが描かれる中盤の回想シーンといった構成は実によく練られた仕事である上に、どこで「バスケットケースの中」を観客に明らかにするか、そのタイミングを逸していないのもお見事。

0:34 レイジ34フン」は見習えや・・・という余談はともかく、ベリアルを探しに行ったドウェインにゴミ袋から差し出される手、また、「二人」をただ一人理解して、暖かく包んでくれた伯母といった、映像や人物描写が実に絶妙と言えましょう。

 兄弟だもん
 いつまでも ずっと一緒だよ

だからこそ、復讐は成し遂げられるのか、そのあと「二人」はどうなるのかという、物語の結末は実に興味深かったのですが、それだけにラストには喰い足らない印象が強くなってしまうというもの。
ハッピーエンドであれとは言わないし、ドウェインに手をかけようとしながら思いとどまるベリアルまではよかったもののそのあとが・・・
そのためにラストシーンが「いかにも」なものに思えてしまい、そこまでがよくできているだけに残念だよなあ、と。

とはいえ、カルト・ホラーとして評価されているのはもっともな出来ではあるし、DVDの特典映像、陽光の中のベリアルには神々しいものが感じられることもあれば、この手の映画がお好きな向きはやはりバスケットケースの中を覗いておくべきでしょう。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

バスケットケース
1982年 アメリカ
製作 エドガー・レヴィンズ
監督 フランク・ヘネンロッター
出演 ケビン・ヴァン・ヘンテンリック テリー・スーザン・スミス ビバリー・ボナー ロバート・ボーゲル ダイアナ・ブローネ

Apr 9, 2006

フリークス

フリークス 「汚らわしい醜悪な化け物め!」

「人間に見せるべき映画ではない」「禁断の映画」と言われたカルト作品。
不快さを前面に押し出すことは、物語作りにおけるひとつの技法ではあるわけですが、この作品の場合は圧倒的な「リアル」の下に、そうした感覚が希薄になってしまうことが名作と称される所以。
公開当時は酷評され、興業的に失敗しながらも、再評価されたのは当然であるように思います。

冒頭のシーンや「フリークの掟」といったくだりから、物語の結末は読み取れてしまうのですが、それは些末なこと。
技巧もストーリーの妙もなにもない、その映像の衝撃と鮮烈さは、64分という上映時間を短いとは感じさせない存在感を観る者に叩きつけてくると言えるでしょう。

と、誉めはしたものの、やはりいろいろな意味で問題のある作品。
自分の場合は、スクリーンに躍るフリークスにある種の可愛さを感じてしまったものの、どうしても拭うことのできない不快感に耐えられない向きはあろうかと。

鑑賞するにあたり、ある種の覚悟が必要な作品なのかもしれませんが、しかし映画史においてその名を決して消すことのできない異色作ということで、お薦めしてしまうことにします。


フリークス デジタルリマスター版  FREAKS
1932年 アメリカ
配給 クロックワークス トルネード・フィルム
製作 MGM映画
監督 トッド・ブラウニング
出演 ハリー・アールズ オルガ・バクラノヴァ ヘンリー・ヴィクター ウォレス・フォード

Mar 15, 2006

サランドラ

サランドラ ツインパック 初回限定版ワゴン・トレーラーで旅をしていた家族は、「人間と言える人間は住んでいない」という荒れ果てた土地に迷い込み、そして食人一家の餌食になっていく・・・

邦題しかり、「ジョギリ・ショック」「全米38州で上映禁止」「音響効果ダブル・テンション・システム」といった煽り文句しかり。
そんな反感を買うようなことをするから過小評価されたりするんだよ・・・と、もったいない思いがするほどの出来映えで、小手先のテクニックと平板な展開に辟易とする「クライモリ」がデッド・コピーに思えるほど。これこそが'WRONG TURN'だよ、と。

登場人物が多いにもかかわらず、「ドーン・オブ・ザ・デッド」のように人間描写が甘くならないのは、無駄のない、よく練られたプロットであればこそ。
それがガス欠や脚に負わせた傷、ガラガラ蛇といった伏線を活かしきったクライマックスの見事さへと昇華されることになっています。

また、ホラー映画にしては女性があまり活躍しないなあ・・・などと思っていると、突然変異で食人種が生まれたのなら、といった意味を含めて感心させられることになるのが心憎く、が大活躍するのもいい味を出しているなあ、と。
賛否両論あったことであろうラストシーンも、それだけのクオリティであれば作り手のセンスと納得できるというものです。

ということで、物語がどのように展開して、どのような見せ方をしてくれるのか、緊張感を決して緩ませることなく、圧倒的な暴力を見せつけてくれる、無差別殺人ものの紛うことのない傑作と言えるでしょう。

だからこそ、PART2なかったことにするのが大人ですね。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

サランドラ  THE HILLS HAVE EYES
1977年 アメリカ (1984年日本公開)
配給 東宝東和
製作 ピーター・ロック
監督 ウェス・クレイヴン
出演 スーザン・レイニア ロバート・ヒューストン ディー・ウォーレス マーティン・スピアー ジェイナス・ブライス マイケル・ベリーマン


リメイク版「サランドラ」オフィシャル・サイト http://www2.foxsearchlight.com/thehillshaveeyes/

Mar 13, 2006

ドキュメント・オブ・ザ・デッド

ドキュメント・オブ・ザ・デッド「ロメロ信者としては、リリースを知るなりたのみこむに注文したわけですが」
「まず、ピッツバーグのショッピング・モールでのインタビューには萌えたのでは?」
「そりゃあ、『ゾンビ』のプリ・プロダクションから公開に至るまでのエピソードが、そこで語られているのではさすがに、ね。トム・サヴィーニが熱く語る特殊メークのエピソードも、ですが」
「撮影クルーの『ロメロとの仕事はとても民主的だ』という発言なんかも嘆息ものですよね」
「ロメロ自身の『ゾンビはとてもロマンティックな映画だ』という科白も深いな・・・とか、ね」
「ということで、リビングデッド・サーガではむしろ『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』『死霊のえじき』が好きだとか、それよりなにより『マーティン』が!とかいう人以外であれば満足できる一本ではある?」
「うーん・・・ なんかこう平板な構成で、本編よりも映像特典の『未公開インタビュー』の方が面白かったんだよなあ・・・ 『死霊のえじき』をめぐる、あの『800万ドルでR指定か、300万ドルでレイティングなしか』というエピソードをロメロ自ら語っているくだりとか」
「そこで削除されたプロットが『ランド・オブ・ザ・デッド』に繋がることを考えると、さらに趣がありますしね」
「あと、映画界への不満がスティーブン・キングへの非礼を通して語られているあたりも印象的だし」
『ハリウッドでなくても注目を集める映画を作ることはできる』という、おなじみの発言の所以でもあるし、と」
「ともあれ、さすがに貶すような内容ではないけれど、やはりコレクターズ・アイテムでしかないような感じは否めないかな・・・」
「信者としての気概を欠く結論ですね」


ドキュメント・オブ・ザ・デッド  DOCUMENT OF THE DEAD
1989年 アメリカ
製作・監督 ロイ・フランケス
出演 ジョージ・A・ロメロ トム・サヴィーニ マイケル・ゴーニック クリスティン・フォレスト デヴィッド・エムゲ ケン・フォリー スコット・H・ライニガー

Feb 23, 2006

サイレン FORBIDDEN SIREN

サイレン スペシャル・エディション恐怖感を煽るシーンがただ延々と続くだけ。作り手は、その映像に何も疑問を感じないのか? それがジャパニーズ・ホラーに対して抱き続けている失望。

でもまあ、ゲーム映像やコミカライズからゾンビ・テイストが伺えることだし、一応抑えておくとするか・・・と劇場へ。ただ、あまり期待していないために、キャストをまるで知らずに観に行くという凶行だったり。
だから、森本レオがスクリーンに登場したときには、「うむ、怖いものを見せてくれそうだ」と期待してしまったわけですが、それはそれとして。

島に満ちる悪意、赤を多用する映像に、序盤はそれなりに楽しんで観ていたものの、中盤以降がいかにもだらだら。
「シャイニング」よろしくヒロインに襲いかかる脅威、というシーンも、「わざとやってんのか、これ?」と思うほどに冗長で、物語がまさに今から佳境に向かうというのに眠くなる始末。
ともあれ、ジャパニーズ・ホラーの欠点はこの作品でも克服されてはいません。

そうして、サイレンがヒロインを追い詰めるという基本的なプロットと、諸々の描写が乖離することによって、作品全体が薄っぺらいものになっているよなあ、と。

ただ、私の右の方にいた観客があるシーンで飛び上がっていたように、音にこだわった点については誉められていいのでしょうし、物語の結末、そしてラストシーンの見せ方は上々。

その点だけで、そう声高に貶すのもどうかとは思うのですが、ストーリーに仕掛けられたさまざまな謎が、観客に困惑や議論を供する意図があるにせよ、作品全体を俯瞰した場合、それはエンターテインメントとしてどうなのかといった疑問が湧かずにはいられず、とりあえず失望を拭い去ることはできませんでした。


サイレン FORBIDDEN SIREN
2006年
配給 東宝
監督 堤幸彦
出演 市川由衣 森本レオ 田中直樹 阿部寛 西田尚美 松尾スズキ

Feb 8, 2006

スナッフ SNUFF

スナッフ/SNUFFマンソン・ファミリーをモチーフにしたポルノ・ムービーだかクライム・ムービーだかを製作したものの、そのあまりの出来のひどさにいったんオクラ入りさせた作品に、「本物の殺人シーン」というふれこみのフッテージをぞんざいに追加。
話題性をプロパガンダすることによって興行成績を叩き出したという、いろいろな意味での問題作。

ところで、「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」はインターネットやパブリシングといったメディアを含めた、まさに「プロジェクト」としてのエンターテインメントを観客に提供。
映画そのものだけではない、こうした手口もまた今日日アリなんだろうなと感心したものですが、その二十年以上前に製作されたこの作品も、巧妙なやり口で当時の人々を楽しませたとは言えるのかもしれません。

とはいえ、なにが悲しくてワケの分からない殺人集団の水浴びシーンを見なければいけないのだろう・・・などと、ラスト五分のためだけに糞ったれなストーリーをただひたすら我慢しなければならず、忍耐力とか寛容の精神が要求されることになるわけですが。

そして、問題のスナッフ・シーンはと言えば。血の色くらいもう少し説得力があるようにしろよという気がするし、そもそも殺される女、誰だお前。
また、たとえば映っている撮影スタッフの顔にボカシを入れるなどして胡散くささを増幅させるといった、細かな芸すら欠如しているのがノーセンスというもの。

とにかく、そこに意志や哲学などあろうはずもなく、ただただ映画マスコミや観客を踊らせた製作会社の勝利、というだけの作品。
「ネタとして見ておくとするか・・・」くらいの心構えで鑑賞するのが正しいわけですが、ネタとしてさえも、かの「死霊の盆踊り」ほどブラボーではないので、さらに注意が必要です。


スナッフ SNUFF
1976年 アルゼンチン
配給 ジョイパックフィルム

Jan 18, 2006

ランド・オブ・ザ・デッド ディレクターズ・カット

ランド・オブ・ザ・デッド流血と冗談、そして恐怖の混在。

ジョージ・A・ロメロのリビングデッド・サーガを語る上での常套句、現代社会の投影や批判は特徴のひとつでしかないことを、ゆめゆめ忘れてはいけません。

 「何が“幸せな人生”よ」
 「不幸なのは弟だ」
 「・・・そうね。あんたは生きてる。私もね」

終末の世界にあって、いま自分が生きているのならそれは幸せな人生だというアイロニー。

あるいは弾薬庫のシーン。プエルトリコ人のアパートの地下でピーターとロジャーが絶望する、「ゾンビ」の地獄絵図を「絵画的」に再現、さらに「ジーザスクライスト・・・」という台詞まで設定したサービス精神。

「安い映画をなるべくひっそりと作っていたい」と語るロメロが飄々と、そして楽しんで製作したであろうこともファンにとっては嬉しい作品で、いまどきのフォロワーたちはそうした姿勢からいろいろなことを学ばないといけないでしょう。
ゾンビだからといって、デッド・コピーが量産されては洒落にもなりませんしね。

さて、DVDではディレクターズ・カットということで、フィドラーズ・グリーンに住む家族の惨劇や、いくつかのゴアシーンが追加されているわけですが、そうしたロメロ作品の秀逸さを再認識させられる映像特典こそが必見。

「ホラー映画のセットで育ったから、血糊や特殊メークの匂いを嗅ぐと子供の頃を思い出して・・・ ゾンビを見て安心するの」と語るアーシア・アルジェントには惚れ直さずにはいられないし、ジョン・レグイザモがはしゃぎまわる撮影現場レポートや、グレッグ・ニコテロの特殊メークの職人芸も見どころいっぱい。

そして、「ショーン・オブ・ザ・デッド」のエドガー・ライトとサイモン・ペッグのカメオ出演レポートの中で、「会えたな」と二人に微笑みかけるロメロは、熱狂的ファンである彼らにとってはもちろん、二十年ぶりの作品を楽しんだ我々にとっても、神々しいものがありました。


・ 「ランド・オブ・ザ・デッド」劇場公開時レビュー 
・ 「ランド・オブ・ザ・デッド」公開初日レポート 

Nov 6, 2005

蝋人形の館

蝋人形の館若者たちが郊外で殺人鬼の餌食に・・・というお馴染みのプロットである上にダーク・キャッスル・エンタテインメント作品。

TVスポットを見て「ふむ」と思いはしたものの、「ゴーストシップ」は「見せ場は序盤のソレだけじゃん!」と憤懣やるかたないデキだったことだし、113分という上映時間は地雷だった場合に怒りが倍増しようというもの。

個人的にあまり萌えない無差別殺人ものでもあることだしと、スルーするつもりでいたらかなりの評判。
SAW2」は期待ハズレだったし、もし口直しになれば僥倖と、遅ればせながら観に行ったところ・・・
はたして大当たり!

ヒロインが指を切断されたり顔面をグーで殴られたりするというのも新鮮だし、なんと言ってもその双子の兄の性格付けが秀逸。
無差別殺人ホラーの男性はヘタレなのが相場ですが、役者がベッカム似だからということ抜きに(・∀・)カコイイなあ!と。

鏡に殺人鬼がチラッと映るシーンで観客がどよめいたのも、そうした地味で細かいシーンにも過不足のない巧みな演出が施されているからこそ。
悪魔のいけにえ」や「バーニング」、「デッドコースター」を連想したりといった、ホラーマニアがニヤリとするシーンはあるし、残酷描写も上出来。CG臭プンプンのクライマックスも「まあ、見逃してあげようか・・・ (´ー`)y-~~ 」と優しい気持ちになれるというものです。

クライモリ」などは中盤以降の展開が平板なせいで84分の上映時間が長く感じられたものですが、そういうわけで本作品は、カーリーが「トラックのライトが壊されていることに気付いた瞬間」から加速する狂気と恐怖は掛け値なしに楽しめるもので、また上映中、「蝋人形の館」というタイトルは実に心憎いなあと思ったり。

さらに、ラストでは「またこのパターンか」と思った次の瞬間、「あっ!」と感嘆。
「なぜあの男は存在しない街・アンブローズに彼らを連れて行ったのか」を忘れていたのが迂闊だったわけですが、それもこの作品が観客にあれこれ考える暇を与えずに物語に引きずり込んだ、その優秀さ故かもしれません。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

蝋人形の館  House of Wax
2005年 アメリカ
配給 ワーナー・ブラザース
製作 ジョエル・シルバー ロバート・ゼメキス スーザン・レビン 
監督 ジャウム・コレット=セラ
出演 エリシャ・カスバート チャド・マイケル・マーレイ ブライアン・バン・ホルト パリス・ヒルトン ジャレッド・パダレッキ

Oct 29, 2005

SAW2 ソウ2

ソウ2ザック・スナイダー「ドーン・オブ・ザ・デッド」を観るにあたり己に言い聞かせたことは、ゾンビ映画の金字塔のタイトルを戴いた以上・・・!などと、過度な期待はしないようにという戒め。
自分がロメロ信者であれば絶賛するほどの出来ではなかろうし、「バイオハザード」レベルのエンターテインメントであってくれればいい、単純に楽しませてくれさえすれば、そう思いながら映画館へと足を運んだものでした。

そしてそれは、この「SAW2 ソウ2」についても同じこと。

あまににも精緻かつ衝撃的であった「SAW ソウ」、あの異常なクオリティなど求めはしない。
溢れる狂気とスピード、ジグソウが仕掛けるゲーム。
ジェームズ・ワンとリー・ワネルがかつて我々に見せつけた「ソリッド・スリラー」が、いまいちどスクリーンに供されるだけでいい、そう思ってはいたのですが・・・

はたして「ドーン・オブ・ザ・デッド」と同様に、それすらが驕った考えだったのかもしれない・・・
それが観終えて、いや、観ている最中すでに感じていたことでした。

とにかく、前作に漲っていた緊張感が希薄だったことが致命的。
バスルームの二人と監禁された母娘、ジグソウを追う黒人刑事の執念。
それらがパラレルに、また時間軸を超えて、不快感を観客に叩きつけながらクライマックスへと突っ走った前作とは比べるべくもありません。

「出口のない館」で繰り広げられる殺人も意外性を欠き、あまり先読みが得意ではない自分の予想がかなり的中してしまったのもまずかろう、と別の不快感が湧く始末。
さすがにラストは色々なるほどと、前作のテイストを味わうことができるものの、時すでに遅しという感が強すぎて・・・

勿論、ロジックそのものは前作に準じたものではあり、「癌を克服する方法」だけはまあ誉められはしましょうが、いかんせん密度が違いすぎた、それがこの作品についてまず強調すべき点、あるいは結論ということになります。


SAW2 ソウ2
2005年 アメリカ
配給 アスミック・エース エンタテインメント
製作総指揮 リー・ワネル ジェームズ・ワン ピーター・ブロック ジェイソン・コンスタンティン ステイシー・テストロ 
監督 ダーレン・リン・バウズマン
出演 ドニー・ウォルバーグ ショウニー・スミス トビン・ベル フランキー G グレン・プラマー ダイナ・メイヤー エマニュエル・ヴォジエ ビヴァリー・ミッチェル エリック・ナドセン

Oct 19, 2005

レーシング・ストライプス

レーシング・ストライプス嵐の夜、サーカス団に置き去りにされたシマウマの赤ちゃん。落馬事故で妻を亡くし、競馬界を去ったかつての名調教師。
シマウマはやがて成長し、競走馬になることを、レースを走ることを夢みるようになって・・・

ベイブ」のスタッフがこのプロットで製作する以上、面白い作品になることは約束されたようなもの。
そして観始めるやすぐに、これから繰り広げられるであろう物語への期待感にうるうるしてしまった私はさすがにどうかとは思いますが、はたして十分に満足できる出来ではありました。

まあ、親と離ればなれになってしまったストライプスが新しい仲間に出会い、そして競走馬を目指すプロセスや、ノーランの過去や葛藤といったあたりをもう少しじっくりと描いていれば物語により深みが増したろうにと、人物(動物)描写がいまひとつであることは否定できませんが、こうした映画に議を唱えるのは野暮というもの。

鞍に刻まれたイニシャルや、チャニングが勝負服をどうしようか悩むシーン。
サンディは障害馬だからそりゃあ柵を飛び越えるのは容易いよなあとか、ライバルのプライドは実はいいヤツじゃんとか、ストライプスのトレーニング相手だった郵便配達夫もいい味を出してるなあとか。

そうしたディテールがきちんと練られている上に、エンターテインメント作品として王道の作り。予定調和だ、話が出来すぎだなどといった能書きは横置きにして、ただただ純粋に楽しむべきでしょう。

と言いながらも、「ベイブ」に比べるとちょっと落ちるかな・・・というのもまた正直な感想。
しかし、傷ついた男の再生の物語、競走馬を描いた映画という点で、見せ場は「あばよ、チャーリー」だけ、それこそ人間描写も構成も、なにもかもがヌルい某アカデミー賞候補作と比べれば、数倍上等であるように思います。


レーシング・ストライプス  Racing Stripes
2005年 アメリカ
配給 松竹/ギャガ=ヒューマックス
製作 アンドリュー・A・コソボ ブロデリック・ジョンソン エド・マクドネル ロイド・フィリップス 
監督 フレデリック・デュショー
出演 ブルース・グリーンウッド ヘイデン・パネッティーア M・エメット・ウォルシュ
声の出演 フランキー・ムニッズ ダスティン・ホフマン ウーピー・ゴールドバーグ マンディ・ムーア

Sep 25, 2005

ハウス・オブ・ザ・デッド

ハウス・オブ・ザ・デッドやたら挿入されるゲーム画像は確かに鬱陶しいけれど、「ドーン・オブ・ザ・デッド」のオ○ニー演出ほどには気にならなかったし、ひたすらにゾンビから逃げたり戦ったりするストーリーも、展開がぶっ飛び過ぎの「アンデッド」に比べれば潔いとは言えますが、やはりレンタルで済ませるべきだったなあ、と。
ゾンビ映画のDVDはなるべく買うようにしていて、あの「ミートマーケット」シリーズでさえあまり後悔はしていない私なのですが・・・

序盤はゾンビの館での惨劇やテントにわらわらと映る影など、結構見せてくれたものの中盤以降がどうにもダラダラ。
大詰めで延々と続くアクションシーンも冗長に過ぎ、「ボイス」や「死霊の盆踊り」など、観ている途中で居眠りしてしまったホラー映画はあるのですが、ゾンビと戦うシーンで睡魔に襲われたのはさすがに初めての経験でした。

カーク船長や沿岸警備隊員のキャスパー、あまりの強さに萌えてやろうかと思ったリバティーといったキャラクターは悪くないのですが、(ネタバレにつき背景色テキスト→)その最期は淡白だったり典型過ぎだったりで、喰い足りない感じが否めず。
ゴアシーンについても、ゾンビの頭が飛び散るあたりに新鮮味はないし、倒しきれずに襲われて押し潰されても内臓や生首が乱舞することもなく、レイティングの問題があるのは分かるけど・・・といった按配。

また、「トワイライトはないだろうけどね」などとロメロリスペクトな台詞があるにもかかわらず、頭部を破壊せずにゾンビを倒しているのには納得行かないし!と思ったり、ラストシーンについては(ネタバレにつき背景色テキスト→)「ペット・セメタリー」+「サンゲリア」ですかそうですか・・・としか言いようがなかったり。

まあ、「バイオハザード」シリーズのような作品かと期待して観るとロクなことにならない等、悪評を十分に承知した上で鑑賞したので実はそれほど腹は立ちはしなかったものの、やはり愚作は愚作、というのが結論となるでしょう。

あ、でもオナ・グローアーのだけはグッジョブですよ?


ハウス・オブ・ザ・デッド  House of the Dead
2003年 ドイツ・アメリカ・カナダ
配給 日活
製作 マーク・A・アルトマン ダン・ベイツ マーク・ゴットウォルド ダニエル・クレッキー
監督 ウーヴェ・ボル
出演 ジョナサン・チェリー オナ・グローアー クリント・ハワード ユルゲン・プロホノフ

Sep 4, 2005

JAWS ジョーズ

ジョーズ 30th アニバーサリースペシャル・エディション30thアニバーサリーDVDの発売日(05/8/26)、仕事帰りにビックカメラ池袋本店に行くも店頭在庫はボックスが二つだけ。さすがにそこまでは・・・と、向かいのパソコン館に行ってスペシャル・エディションを買うことができたわけですが、いくら永遠の名作とは言えども、未だにそうした売れ行きであることにまず感心。

そのスペシャル・エディションはいわば通常版でありながらデジパックでの二枚組、箱から取り出したパッケージはオルカ号の面々やクリシーが襲われるシーンという十分な仕様。UPJさんのグッジョブにも感心しつつ、さて久々に鑑賞するとしましょうか。

ということで本作は、「激突!」から三年、タンクローリーは鮫に姿を変え、そしてスティーブン・スピルバーグの才能が饒舌に語りかけてくる極上のエンターテインメント。

製作にあたり、原作本のタイトルを見たスピルバーグが「歯医者の話かと思った」と思ったというエピソードはネタくさいですが、「激突!」との類似性に思ったのは、よりパワーアップした恐怖の提供であったことでしょう。
はたして映像や構成、台詞のひとつひとつに無駄や妥協のない仕上がりとなり、それが三十年の時を経た今もなおファンに支持されている所以であるように思います。

(以下ネタバレ)

続きを読む "JAWS ジョーズ"

Aug 28, 2005

ランド・オブ・ザ・デッド

ランド・オブ・ザ・デッド死霊のえじき」から二十年、巨匠・ジョージ・A・ロメロの手によるリビングデッド・サーガの新作に求められたものは、「バイオハザード」や「28日後・・・」、そして「ドーン・オブ・ザ・デッド」といった、この数年のうちにゾンビ映画の系譜に刻まれた諸作品とは一線を画する物語世界。
ロメロ作品を語る上で必ず言及される、ベトナム戦争や消費文明への批判といった社会性を有するホラームービーであること・・・だけではなく、彼にしか描けない世界の終わりと一縷の希望、人間の儚さがスクリーンでどのように展開されるのかが注目されるところ。

終末の状況にあってなお諍いを続ける人間と進化しようとするゾンビとの対比、フィドラーズ・グリーンを中心に描かれる貧富の差や人種差別といった現代社会が孕む問題、そして9.11が連想されるクライマックスにおける日常の崩壊。
はたしてこの作品はそうした要素によって、エンターテインメント性を第一義とする昨今のゾンビ映画とは趣の異なる仕上がりではあり、従いそれらに慣れてしまった世代にとっては若干退屈なものになっているような気はします。

さらに、ここまでの所謂ゾンビ三部作とは時間軸の異なる全く別のエピソード、あるいは種々のエピゴーネンに対するロメロの解答という感もあり、信奉者にとってはそうした点をどのように捉えるかが評価の分かれ目になるのかもしれません。
しかし、老いによる物語性の喪失は杞憂、キング・オブ・ゾンビホラーと崇めるファンにとってはその世界観、終末観を十分に堪能できる出来映えではあり、やはり危惧された「学習するゾンビ萎え・・・」といったあたりも、ロメロ独自の語り口の前にはそう気になるものではないでしょう。
また、ゴア・シーンもレイティングの問題を考えれば満足できるレベルであり、「やっぱ首が千切れたり臓物が引きずり出されたりしないとね!」という向きの期待は裏切られてはおりません。

それにしても「ドーン・オブ・ザ・デッド」風味のオープニングには、なにもトレンドに阿らないでも・・・と思ったのですが、一転エンドロールはそれはもう地味な映像。
また、長らく仮題とされた「DEAD RECKONING」の名が付された装甲車については、みな「ドーン・オブ・ザ・デッド」でショッピング・モールからの脱出に使用された武装トラックを連想したはず。まあ、これはアーヴ・グレイウォルのせいでしょうけれど。
ともあれなんかこう、ザック・スナイダーを意識したり揶揄したりしているのでは・・・という穿った感想が抑えられないところがあるのですが、作り手の自慰行為にしか思えない鬱陶しい映像は勿論皆無、その点もファンは安堵したことと思います。


ランド・オブ・ザ・デッド  Land of the Dead
2005年 カナダ・アメリカ・フランス
配給 UIP
製作 マーク・カントン バーニー・ゴールドマン ピーター・グランウォルド
監督 ジョージ・A・ロメロ
出演 サイモン・ベイカー ジョン・レグイザモ デニス・ホッパー アーシア・アルジェント ロバート・ジョイ ユージン・クラーク


・ 「ランド・オブ・ザ・デッド」公開初日レポート 

Aug 27, 2005

ランド・オブ・ザ・デッド 本日公開!

どんな些末なネタバレをも目にするまいと、某巨大掲示板のゾンビスレやロメロスレ、あるいはZOMBIE手帖への出入り禁止を自らに課して数ヶ月。今日は待ちに待った劇場公開初日ですよ!

地下鉄の出口から上映劇場であるみゆき座へと至る曲がり角を左に折れると、初回の上映開始まではゆうに三十分以上あるというのにすでに結構な行列が。でも、あれっ? 女性ばかり?

よく見たらヅカでした・・・ orz

050827-1気を取り直してその先にあるみゆき座&スカラ座に到着、窓口にも入口への階段を降りた先にも行列はなし。すでに開場して客席に入れているようで、先客は十名くらい。

それはそれはクールなザック・スナイダー「ドーン・オブ・ザ・デッド」をやはり公開初日の初回に観に行ったときはギャル二人組他、今どきの若者を目にしたものの、今日はなんていうか、カルトQ最終回に出場した神々のような風貌の人ばかりだよ・・・

かく言う自分も同類なわけだし、館員さんが「きんもーっ☆」とブログに書いたりしないことを祈りつつ、さて、席を確保して劇場限定グッズでも物色に行くとしましょうか。

宇宙戦争」のグッズしかないよママン・・・(つД⊂)
まあ「ドーン」の時にしても、「ゾンビ映画大事典」とかノベライゼーションしかなかったわけだけど、これから鑑賞するにあたってのモチベーションがさあ・・・などと思いつつ、ふとロビーの奥を見やるとなんかマネキンが並んでいるよ?

050827-2「コスチューム・ギャラリー」、撮影に使用した衣装の展示キター!
どす黒い血糊にまみれたそれらを眺めたあと説明書きを読むに、ロメロ作品の衣装が日本で展示されるのは初めてで、そしてライダーズジャケットはトム・サビーニが着用した実物とのこと。

サビーニ様のかほりハァハァ・・・などとなるわけもなく、革の匂いしかしないわけですが、それはそれとして説明書きの最後に書かれていた「撮影機材を忘れた方はまた是非ご来場下さい♥」云々。
まあギャグ含みなのでしょうが、もっと目立つところに展示すればいいのに・・・という気が少々。とはいえマニアはみな嗅覚で察知できるでしょうけどね。

数枚撮影して満足しつつ席に戻った後、上映開始を待つうちに入場してきたのは、さすがに普通のカップルや年配の夫婦といったマニア臭のしない普通の方々。
まだまだ日本も捨てたものではないね・・・ 最終的な入場者は客席数の丁度半分くらいでしたけれど。

やがて場内が暗くなり、コマーシャルや予告編が始まったわけですが、「輪廻」はいいけど、ホラーマニアに「タッチ」だのヨン様だのを見せるなゴラとかいうインネンはともあれ、なんで「NOTHING」の予告編を見せないのさ・・・と思ったりしながらも、さあ、いよいよ「ランド・オブ・ザ・デッド」の始まり。

我々は姿勢を正して、御大ジョージ・A・ロメロの新作、その世界が今からスクリーンに繰り広げられることに胸を躍らせるのでした。


・ 「ランド・オブ・ザ・デッド」レビュー 

Aug 6, 2005

死霊の盆踊り

死霊の盆踊り デラックス版酷い出来であるのならそれはそれとして楽しめるのでは、と史上最低の映画として名高いこの作品の破壊力をなめてかかった自分の愚かさをまず猛省。
なにせ二晩続けて鑑賞中に爆睡、明け方まで居間のモニターの前で寝ていられてはこっちまで睡眠不足だわ、と猫に怒られる始末。

そして今日こそは最後まで観るぞ!(`・ω・´) と気合を入れて臨んだ三日目、チャプターで黄金女から観始めて、もう結構な時間経ったよな、とDVDプレーヤーのカウンターを見るや約1時間、あと30分もあるのかよ・・・orz

などとやりつつどうにか観終えるもまさに苦行、死霊だかストリッパーだか知らないけど、女たちが本当にただ踊り続けるだけというありえない映画。
踊りの音楽が終わりそうになり、「やれやれ、とりあえずこの女のシーンは終わりか・・・」と安堵しかけるや転調、再度踊りが激しくなったりするのには絶望すら感じました。

いや、徹底的に馬鹿馬鹿しい話であるのなら、ホラー映画にはそういう側面もあるのだからそれこそカルト的な評価が与えられてもいいのでしょうが、黄金女のくだり以外はそりゃあもう踊り続けているだけで彼女たちにはなんのストーリーもなし。
その踊りにしても頭を抱えたくなるようなヘタレぶりで、初夜に夫を殺した花嫁に至ってはお前、そりゃ踊りじゃねえだろうという按配。

あえて言えば、ゾンビ女の体型やキョンシー踊りにはちょっと萌えられるものがあったりするのが・・・
いや、誉めてはいけない誉めてはいけない。誉めるとしたら、こんなものを作ったエド・ウッドとA・C・スティーブンの度胸くらいだよなあ、と。

そして特典映像の監督インタビューでA・C・スティーブン曰く、「映画産業は観客からの求めに応じた作品を作ってきた」「車の運転は常識が90%で技術は10%というが映画も同じだ」。
誰もこんな映画求めてねえし、どの口が常識を語るんだゴラとツッコミどころ満載、ていうか噴飯というのはこの人のためにある言葉では、とさえ思いましたよ。

そしてその特典映像も観てる途中で気を失い、かくして三晩続けてモニターの前で爆睡することになった次第でございます。


死霊の盆踊り  Orgy of the Dead
1965年 アメリカ
配給 ギャガ・コミュニケーションズ (日本公開:1987年)
製作・監督 A・C・スティーブン
出演 クリスウェル パット・バリンジャー フォーン・シルヴァー ウィリアム・ベイツ

Aug 2, 2005

伽や子のために

小栗康平監督作品集 DVD-BOX1957年の東京と北海道を舞台に、在日朝鮮人の青年と日本人の少女の悲恋を描いた物語。

もしくは在日朝鮮人であれ日本人であれ、登場人物がみな自分の在るべき場所を模索するそのこころ、その時代を、名匠・小栗康平ならではの視点で捉えた佳作ということになるのでしょう。

原作が宮本輝から李恢成に変われど作品の方向性は「泥の河」に相似している印象、しかし史実としてより暗い部分に触れようとするまなざしの高さはこの監督であればこそ。
在日韓国・朝鮮人の問題に関わっていた人々から、差別の実態、歴史が描かれていないという批判が少なからずあったとのことですが、それは日本人にとって映画から学ぶべきことではなく、小栗康平はその先に焦点を当て、この物語を紡いだように思われます。

しかし、観終えてまず感じてしまったのは「泥の河」ほどの鮮烈さは欠いているなあ、ということ。
安藤庄平のカメラは本作も観る者を惹きつけてやまないのですが、幻想的に描かれる祖国への憧憬など、朴訥とした演出の「泥の河」に比べて凝った映像が、こうした真摯な物語であれば余計なものに感じられてしまいました。

 「日本も朝鮮も嫌!」

 「戦争があっちこっちひっぱりまわしてくれたおかげで僕らは会えたんだ」

それでも主演の呉昇一(オ・スンイル)と南果歩の存在感、その熱演は輝いており、流れる水の音に耳を澄ます別離のシーンは、「邦画ニューウェーブ」以降の日本映画に於ける屈指の名シーンとして挙げられて然るべきでしょう。

そしてそれは、夜道で相俊(サンジュン)に駆け寄る伽や子や、大沼でのボートといった、二人が心を通わせていくシーンを積み重ねた結果。これほどのクオリティの作品を作り出せる映画監督は希有であればこそ、1時間57分は「本物」を目の当たりにする心地よさの中に過ぎてゆくことになります。


伽や子のために
1984年 日本
配給 エキプ・ド・シネマ
製作 砂岡不二夫
監督 小栗康平
出演 呉昇一 南果歩 浜村純 園佳也子 加藤武 川谷拓三

 ※ 「伽や子」の「や」は、「にんべん」に「耶」

Jul 28, 2005

0:34 レイ_ジ_34_フン

0:34 レイジ34フン劇場へと向かう東京メトロ・有楽町線には、空いてもいない車内で歌ったりしているギャル二名。
それほど迷惑でもない声の大きさだしけっこう上手、まあどうでも・・・と思っていたのですが、そばにいたブサ○クな母娘は「バカがいるよ・・・ ケッ」と不快そう。

そのとき、やはり近くにいたベビーカーの赤ちゃんが、電車が揺れて顔を打っただかなんだかで突然泣き出し、むしろ騒音はそちら。
しかしギャル二名が「わー、可愛い♪」とかなんとか言いつつ、手を振ったりしてあやしたところ見事に泣きやんだという、なかなかにいい光景。

母娘がまた「ケッ」といった表情をしていたり、そんなことを観察しているバカ(私)がいたりはするものの、とりあえず惨劇が起こることもなく池袋に到着。

それにしても、三館中二館がレイトショーのみでの公開というのは、DVD化するときに「劇場公開作」とを付けたいだけだよなあ・・・とブツブツ思いつつ窓口で入場券を買うと1,200円。
あれっ?と思うも、池袋シネマサンシャインでは20時以降のレイトショーはサービス・プライスとのこと。また、常時全席指定・入替制というのも、時間を有効活用できるのがいいですね、と。

劇場公開時にスルーした映画のDVDを、勝負!と買って('A`)ヤレヤレ・・・などということを避ける意味を含めて、映画館がこうしたサービスを提供しているのであれば、もう少し劇場に足を運ぶべきだよなあ・・・と、今さら思ったりした酷暑の東京の夜なわけですが。

などと枕が長いのは、巷の悪評そのままの出来であれば、あまり書くことがないから。
地下鉄を舞台にしたのは新機軸、序盤は結構楽しめはするものの、ストーリーはあまりにも平板。廃駅や使用されることのない線路といった舞台設定、閉ざされた人工の闇の中に蠢く恐怖は、もっと描きようがあるだろう、と。

殺人鬼が早々に姿を現してうろうろしまくるのも緊張感を欠いた一因で、ゴア・シーンもヌルすぎ。ついでにパンフレットも、チラシの代わりに作られるリーフレットみたいでショボス・・・(´・ω・`)といった按配。

エンド・ロールが終わり席を立つ際、近くにいた女の子が「結局、なんだったんだろう」と彼氏に話しかけていたのですが、その言い回しはこの映画を評するにあまりにもハマり過ぎでした。


0:34 レイジ34フン  CREEP
2005年 イギリス
配給 ギャガ・コミュニケーションズ
製作 ジュリー・ベインズ ジェイソン・ニューマーク
監督 クリストファー・スミス
出演 フランカ・ポテンテ ヴァス・ブラックウッド ケン・キャンベル ジェレミー・シェフィールド ショーン・ハリス ポール・ラットレイ ケリー・スコット

Jul 27, 2005

サスペリアPART2 紅い深淵 (DARIO ARGENTO : IL MIO CINEMA)

サスペリア PART2 / 紅い深淵 完全版+公開版日本での劇場公開時は、その邦題のみならずキャッチコピーでも「あれから1年、待望の第2作ついに完成!」などと謳う始末。

再DVD化にあたり「紅い深淵」というサブタイトルが付与されたのはダリオ・アルジェントへのリスペクト、あるいはオマージュということで、関係者の心意気やよし、と感心したファンは多かったことと思います。
個人的には若干違和感はあるのですが、それはともかく。

この作品はホラーというよりはやはり「精神錯乱的なサスペンス」

共同脚本のベルナルディーノ・ザッポーニが「連続的な不安、それがスリラーの本質だよ」と語る通り、子供がトカゲを殺したり犬が噛み付き合っていたり、はたまた人形が吊されていたりカタカタ歩いてきたり、といった不安感を与える要素、イメージを積み重ねながら物語は展開していきます。

そして、ゴブリンのサントラや子供の歌声の不気味さが相まって「サスペリア」とはまた違った恐怖が供されているわけですが、アルジェント曰く「これは悪夢を描いた映画なんだ」、ホラーであろうがスリラーであろうが紛れもない傑作であることには間違いはありません。
結末がちょっと淡白では・・・と思わないでもないですが、どんでん返しの勢いでラストシーンまで突っ走る「シャドー」あたりを別にすれば、「フェノミナ」なんかにしてもそうインパクトがあるわけでもないですしね。

ところでDVD-BOXの特典DISCのドキュメンタリー「DARIO ARGENTO : IL MIO CINEMA Part I & Part II」は、コアなアルジェントファンであれば歓喜の涙を流しかねない逸品と言えるでしょう。

アルジェントの映画論が存分に堪能できるし、クレーンを使用した撮影や特殊効果についてのこだわりを知ることができる上、「フェノミナ」のあのプールにつかりながらジェニファー・コネリーが笑っている撮影風景にはハァハァできたりもする内容で、「ゾンビ」の話題が一応はあるところもロメロ信者としては「うむ、よかろう」といった感じですし。

ただ、一番凄いと思ったのはアルジェントがローマに開いたホラーショップ「プロフォンド・ロッソ」
店内にはホラー関係のグッズや書籍が溢れかえり、さらにその地下には「ダリオ・アルジェント ホラー博物館」。「フェノミナ」の(ネタバレにつき背景色テキスト→)例の子供の人形や、アルジェント選りすぐりの特殊効果が陳列されているというファン垂涎の地。
噂には聞いていたけどこれがそうか・・・と、今すぐにでも巡礼に赴きたくなるような映像は、この特典DISCの功罪と言えるかもしれません。


サスペリアPART2 紅い深淵  PROFONDO ROSSO
1975年 イタリア
配給 東宝東和
製作 クラウディオ・アルジェント サルバトーレ・アルジェント 
監督 ダリオ・アルジェント
出演 デヴィッド・ヘミングス ダリア・ニコロディ ガブリエレ・ラヴィア マーシャ・メリル エロス・パーニ グラウコ・マウリ クララ・カラマイ ニコレッタ・エルミ

Jul 24, 2005

サスペリア (サスペリア アルティメット・コレクション DVD-BOX)

サスペリア プレミアム・エディション「おとぎ話だけどホラーだ」

25周年記念ドキュメンタリーでダリオ・アルジェントが語る通り、「白雪姫」や「不思議の国のアリス」にインスパイアされた魔女と黒魔術の物語は、ジェシカ・ハーパー貧乳に萌える暇などないままに、ステンドグラスは砕け散るわ蛆虫は降り注ぐわワイヤーは絡みつくわで進んでゆくわけですが、刮目するべきは、やはりその極彩色の闇

生産量が減っていたテクニカラー方式カメラとフィルムを使用した色彩へのこだわり、非現実的な映像が、この作品をホラー映画史上の金字塔たらしめたと言えましょう。

そうした意味でレターボックスだった旧盤に比べて、デジタル・リマスターかつスクイーズのこの新盤はその鮮烈さを損なうことなく収録しており、ミュンヘン空港に到着したスージーを乗せたタクシーに射す人工的な光やヘッドライト、森を照らす雷光、そしてその先に浮かび上がるフライブルク・バレエ学院と、序盤から観る者を酔わせ、引き込んでゆく凄みへと繋がっています。

ストーリーそのものについては、その論理的矛盾を突いて批判的な評価をする人は少なくなく、また「インフェルノ」ともどもラストが弱いところが個人的に気になるところではあるのですが、そうした鑑賞方法はおそらくは無粋。
その映像美をただただ享受した上、「ダリア・ニコロディだけが知っている」三部作の結末、次の魔女、三人目の母がどのように描かれるのかを心待ちにするのが、正しいアルジェント作品の楽しみ方なのでしょう。

サスペリア アルティメット・コレクション DVD-BOX (5000セット限定)ということで、5,000セット限定でのリリースとなった「触ると絵が出てくる」特製BOX。温度により反応するわけですが、「触ると」と言っている通り、実際には指や手のかたちにPART2のあのガクブルな壁画や(←ネタバレにつき背景色テキスト)が浮かび上がるわけで、マニアをそそることこの上ない仕様。

アルジェントの美学や、製作・撮影における裏話が満載された52ページの特製ブックレットも、その資料的価値は相当なもの。前半がまずPART2になっているという、マニアに突っ込む隙を与えない作りも素晴らしい限り。

などと言いつついちばん印象的だったのは、撮影用に用意した大量の蛆虫が照明の熱で次々とになり、関係者みな頭を抱えたというエピソードだったりするのですけどね。

さらに特典DISCがついて定価10,290円というのは相当にお値打ち、「サスペリア」単品にしてもドキュメンタリー(52分)や監督インタビュー(21分)が収録されたキッチリとした作りなわけで、私のようにさしてアルジェント作品には入れ込んでいない者すら萌えること甚だしく。
そして週末の石丸電気・SOFT2では店頭及びレジ後ろの棚にも在庫が見当たらなかったことから、購入するかどうしようか考えている諸兄は今すぐショップへ走るべきかもしれません。


サスペリア  SUSPIRIA
1977年 イタリア
配給 東宝東和
製作 クラウディオ・アルジェント セダ・スペッタコリ
監督 ダリオ・アルジェント
出演 ジェシカ・ハーパー ステファニア・カッシーニ ジョーン・ベネット アリダ・ヴァリ フラヴィオ・ブッチ ウド・キア ミゲル・ボゼ

Jul 18, 2005

泥の河
(小栗康平監督作品集 DVD-BOX)

050718決して裕福ではないものの、食堂を切り盛りしている両親のもとに生まれた信雄と、母親が体を売って生計を立てている廓船で暮らす喜一と銀子。

少年たちのひと夏の出会いと別れを静謐かつ鮮烈な映像で描いた、名匠・小栗康平の第一回監督作品。
澱んだ河の流れにも似た昭和三十一年の大阪の街を舞台に、戦争が大人達の心に残した傷を織り交ぜて「時代」をも描いたその清冽な物語世界は、二十年あまりの時を経た今もなお色褪せることはありません。

晋平が信雄を連れてかつての恋人に会いに行くといった、宮本輝原作にはないエピソードも物語に深みを与えているし、喜一の歌う唱歌「戦友」は、映画としてそのシーンを目にすると活字に比してより胸に迫るものがあるような気がします。
そして、少年たちが違う世界を垣間見てしまったことにより抱く畏怖、あるいは悲しみと、やがて訪れる別れの時。スクリーンの中に溢れるその情感と哀切は、必ずや観る者の心に深く突き刺さることでしょう。

また、アキバ系を標榜する当ブログとしては銀子タソ(;´Д`)ハァハァと一応書いてみる上、確かにそういうシーンがあるために一部では有名な作品なのですが、不埒な動機で観る人の荒んだ心根も必ずや浄化するほどの名作なので心配は無用です。

小栗康平監督作品集 DVD-BOXということで、今までDVD化されていなかった小栗作品が、いきなりボックスでまとめて発売されたことに狂喜したファンは多かった筈。
出荷数はさすがにそう多くはなかったのでしょうが、発売日の石丸電気・SOFT1では店頭在庫しかなく、いかに新作「埋もれ木」の公開に合わせたとは言えども、知名度はそれほど高くはないのだから大したもの。

同梱されている解説ブックレットも、小栗作品についてまとめられた読みものは入手しづらいことを考えるとかなり貴重。誰もが知っている監督、作品でないことから絶版となる危険性は高いでしょうから、発売される週にBS2がなぜか全作品を放映していたために買うのを躊躇ったファンも、確保するが吉でしょう。

ところで、7/15のNEWS23おすぎが「人間の心の深淵はいいけど、世界が狭い」と、小栗作品について妙に辛辣な発言をしていたのですが、「邦画ニューウェーブ」と言われた同時代の監督たちが商業主義やコマーシャリズムの中で堕したこと、「死の棘」が1990年のカンヌ・グランプリを受賞したことなどを考えると(パルム・ドールじゃないというのは野暮ということで)、なんでそんなに必死に貶しているのだろうと不思議に思いました。


泥の河
1981年 日本
製作 木村元保
監督 小栗康平
出演 田村高廣 藤田弓子 加賀まりこ 朝原靖貴 桜井稔 柴田真生子

Jun 28, 2005

ザ・ショック

ザ・ショック郊外の家に移り住んできたドラと優しい夫・ブルーノ、幼い息子・マルコ。そして次々に起こる超常現象、何かに憑かれたように奇妙な行動を取り始める息子。
その家は、ドラの前夫が怪死を遂げた家だった・・・

パッケージの裏面で「息子ランベルトの多大なる協力によって完成させたサイコ・ホラーの傑作」と謳われていることに、ホラーマニアは一家言ありそうな気がするのですが、個人的に「デモンズ」についてはヘリコプターのシーンで全て許すのでその点はスルー、DVDが再販されたのを素直に喜ぶとともに、黒沢清が「コッテリした情感」と表現したマリオ・バーヴァの映像センスを存分に楽しむことができる逸品、というのが観終えた後の第一の感想。

ゆっくりと現実が崩れてゆく恐怖、そのイメージを淡々と観客に見せ続けるというのはある意味大胆という気もしますが、目に見えない何かがそこにあるという描写、腐敗した手や動く調度品といった直接的な表現が相まって、独特の世界が供されていることにはある種の心地よさが感じられます。

さすがに今観ると古臭い印象は拭えませんが、ホラーではなしに「怪奇映画」として楽しむのがやはり正しい鑑賞方法と言えるでしょう。あるいは幽霊屋敷ものであること、徐々に妻が精神を蝕まれ、少年が変貌していくあたりから、「シャイニング」を面白いと思った人も楽しめるかもしれません。
イタリアンホラー独特の癖はありますが、ダリア・ニコロディが叫んでいるだけで十分恐いわけですしね。

ところで、裏面に解説のあるミニポスターが封入されているあたりがさすがは紀伊國屋書店、グッジョブと思うとともに、来月発売の「サスペリア」「サスペリアPART2 紅い深淵」も芸のあるパッケージが期待できそうだなあ、と。
この勢いで発売中止(?)になった「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」のオリジナル版も、凝った仕様で再販してほしいところですね。


ザ・ショック  THE SHOCK
1977年 イタリア
配給 日本ヘラルド
製作 トゥリ・ヴァージル
監督 マリオ・バーヴァ
出演 ダリア・ニコロディ ジョン・スタイナー デヴィッド・コリンJr. アイヴァン・ラシモフ

Jun 26, 2005

ザ・フォッグ

ザ・フォッグアントニオ・ベイが霧に浸食されるとき、百年の時を経て亡霊の復讐が始まる・・・

風光明媚な港町がじわじわと恐怖に覆われ、そして光る霧に飲み込まれてゆく描写もさることながら、ヒロインは灯台からラジオ放送で異常事態を知らせ、他の登場人物は町で亡霊に惨殺されたり逃げたり対峙したりする、という構成が見事。

ゴア・シーンは控えめ、特殊効果も今観るとショボい気はしますが、例えば評価の低い「パラダイム」なども、ゾンビはただウロウロするだけながら全編に漂う不気味な雰囲気は上等、「遊星からの物体X」や「クリスティーン」などと比べて派手さを欠くこうした作品でこそ、ジョン・カーペンターの力量を窺い知ることができると言えましょう。
その作家性を考えるに、「ヒッチコックの後継者」と称されたのはいかがなものかと思うわけですけど、ね。

ということでその出来のよさに、カーペンターとエイドリアン・バーボーが離婚したのは亡霊の呪いかしら・・・などと思ったり。といったベタなギャグはともかく、個人的なカーペンターのベストはこの作品。
初見は昼間にレンタルビデオで、だったのですが、観終えた後に部屋の窓枠のあたりに目をやるや、今にも霧が忍び込んで来るのでは・・・と、ゾーッとしてしまったことも忘れられません。


ザ・フォッグ  THE FOG
1979年 アメリカ
配給 日本ヘラルド
製作 デブラ・ヒル
監督 ジョン・カーペンター
出演 エイドリアン・バーボー ジェイミー・リー・カーティス ジャネット・リー ハル・ホルブルック トム・アトキンス ジョン・ハウスマン

May 19, 2005

サンゲリア

サンゲリア 25th ANNIVERSARY SPECIAL EDEITION昨年7月にMedia Blastersから発売された25周年記念版の国内盤DVDがリリース。旧盤はマスターのゴミやキズもさることながらレターボックス収録だったので、リマスターかつスクイーズの高画質で眼球串刺し飛び散る肉片が拝めたことに満足したファンは多かったことでしょう。

パッケージがショボかろうと、「2枚組」のシールがジャケットに直に貼られていようとも、発売元を考えれば問題点がそのくらいなら上出来ですしね。

特典映像については、関係者インタビューで脚本家のダンダーノ・サケッティが滔々と能書きを語ったり、製作のファブリッツィオ・デ・アンジェリスが「ロメロ作品とはテーマが違う上、もっと内容の濃いものになっています!」と必死だったりしてなかなか趣がありますが、あとはまあそれほど・・・といったところ。

ラジオCMが収録されているというのにはへぇと思いましたが、連呼される「ZOMBIE」(米公開時のタイトル)を字幕でいちいち「サンゲリア」にしているのがなんだかなあ、とか思ったり。

ゾンビ映画史上に残る傑作と言われている作品であれば内容の仔細に触れるのは詮ない話。
ただ、フルチ独特の文法が趣味に合わなかったり、「ドーン・オブ・ザ・デッド」や「バイオハザード」といった今どきのホラーに慣れてしまっている場合には、なんだこのかったるさはと閉口するのはやむをえないところかな、と。

海中にゾンビがいたり、数百年前の死体が蘇ったりというツッコミどころも、ゾンビ映画大事典が言うところの「イメージの洪水こそフルチの真骨頂」なのでしょうが、悪く言えば「思いつきの垂れ流し」。
そうした意味で、この監督の最高傑作はやはり「ビヨンド」だよなあ・・・と思っている自分がロメロ信者であるからかもしれませんが、久々に鑑賞した名作は若干色褪せたものではありました。


サンゲリア  ZOMBI 2
1980年 イタリア
配給 東宝東和
製作 ウーゴ・トゥッチ ファブリッツィオ・デ・アンジェリス
監督 ルチオ・フルチ
出演 イアン・マッカロック ティサ・ファロー リチャード・ジョンソン オルガ・カルラトス

May 5, 2005

キャビン・フィーバー

キャビン・フィーバー宣伝における賛美の声にタランティーノやピージャクが名を連ねている「インフェクト(感染)・ホラー」。謳い文句は「極限状態で初めて現れる人間の本性」ということで、郊外で余暇を楽しもうとした若者にふりかかる惨劇という恒例のネタながらも毛色の変わったものが観られるのでは、と期待しつつ鑑賞したわけですが・・・

感染をイメージしたオープニング、不気味な森や湖からの始まりは、腰の据わった正統派な物語を予感したのですが、わざとやってるのか?と思うくらい古臭い映像と台詞にまず辟易。
ボーリング場の惨劇といったエピソードは上々ながら、肝心の物語は恐怖や不安感を感じることのないままダラダラと展開、後半に繋がる上等な伏線が張られることもなし。

メインの登場人物に発症者が出るのは上映時間の半分を超えたところで、まあここからは人間の本性云々の心理劇をしっかりと描いてくれるのではという期待も空しく、意外性を狙ったりベタだったりというクライマックスにはまるで面白味を感じることができず、それ故に肩すかしを喰らわせようとしたと思しきラストもただただ腹立たしいだけ。

お互いへの思いをようやく吐露した幼なじみの二人、エロエロなカップルと電波男という五人の仲間の関係が崩れていく、そのせめぎ合いや悲しみをしっかりと描いた上もっとストーリーを練ってさえいれば、謎の少女、もとい少年やマリファナにいちゃん、頭の悪そうな保安官補といった多士済々な脇役の設定は悪くないのだから、もっと面白いものにできた筈なのにとか、この監督はデヴィッド・リンチのそばで何を見ていたのだろう、などと思いながら映画館を後にすることになったのでした。


キャビン・フィーバー  CABIN FEVER
2002年 アメリカ
配給 アートポート
製作・監督 イーライ・ロス
出演 ライダー・ストロング ジョーダン・ラッド ジェームズ・デベロ セリナ・ヴィンセント ジョーイ・カーン アリ・ヴァーヴィーン ジュゼッペ・アンドリュース

Apr 23, 2005

クライモリ

クライモリ デラックス版DVDリリースについてのリーフレットに「タイトル中の『クライ』は『暗い』と『CRY』のダブルミーニングです!」と書かれているのを見て、劇場公開時の「悪くない邦題だな」という感想は撤回させていただいた上鑑賞したわけですが、無差別殺人ものというお馴染みのプロットであれば、もはや見せ方に工夫や技量が要求されるところで、例えば「マーダー・ライド・ショー」と比べると一枚落ちる印象。

ただ、メイキングでスタン・ウィンストンかく語りき、「『ジョーズ』が海の恐怖を描いたように」、そして森の描き方は確かに上出来。

そこで繰り広げられる惨劇が概ね日中というのもニクイものがあり、殺人鬼の隠れ家や廃車置き場、落下する死体といったシーンもなかなかではあるのですが、中盤以降の逃げ続ける展開に起伏がない点が気になるところ。
「Three Finger」は確かにいい味を出してはいるものの、畸形の殺人鬼というものに真新しさがあろう筈もないですしね。そういうわけで84分の作品でありながら、どうにも長く感じられてしまいました。

ついでに「ドーン・オブ・ザ・デッド」の犬娘の殺され方にはもう少し芸が欲しかったなあとか、クライマックスのデズモンド・ハリントンについては「『28日後・・・』かよっ!」とツッコミたくなったとかいう感想もあるのですが、ここでふとamazonへ行ってみると・・・みんな絶賛してますね。こんなレビュー書いてると、ガソリンスタンドの店主に「お大事にな」と言われるかもしれないな・・・


クライモリ  WRONG TURN
2003年 アメリカ・ドイツ
配給 東宝東和
製作 ロバート・クルツァー エリック・フェイグ スタン・ウィンストン ブライアン・ギルバート
監督 ロブ・シュミット
出演 エリザ・デュシュク エマニュエル・シューキー リンディ・ブース デズモンド・ハリントン ジェレミー・シスト  ケビン・ゼガーズ

Mar 31, 2005

続・激突! カージャック

続・激突!カージャックオトナの事情的な邦題のせいか、その劇場映画第一作だというのにスピルバーグ作品の中ではなんか影が薄いような気もしますが、秋葉原の石丸電気・SOFT1には専用コーナーが設けられたように、今回のDVD化を待ち望んでいた人はさぞや多かったことでしょう。

そして、親権を剥奪された若い夫婦が子供を取り戻すべく警官を人質にしてパトカーを奪い、シュガーランドへの逃避行を繰り広げるというプロット、ニューシネマの風情やロードムービーの色彩からして、「激突!」よりも面白いという評価があったりするのはもっともな話なのですが・・・

登場人物が増えていく割には中盤の展開が冗長な気がするし、なにより警官が次第に夫婦と心を通わせていく描写には、もう一声演出のキレがほしかったところ。ラストについても、(ネタバレにつき背景色テキスト→)コメディ色のある映画なのにハッピーエンドじゃないのかよっ!とツッコみたくなったのはともかく、警官の台詞も凡庸に過ぎ、いまひとつ感慨やらなにやらが湧かずじまい。

「トラックに執拗に狙われる」というだけであれほどの恐怖を描いた「激突!」の凄みや、この作品の二年後に制作されることになるのが「JAWS ジョーズ」であることを考えると、そう絶賛されるほどのものでは・・・というのが正直な感想。

ただ、当時すでに27~28歳だったとは思えないゴールディ・ホーンの可愛さには萌えずにはいられないものがあり、序盤で咄嗟にパトカーを強奪するシーンからクライマックスの熱演に至るまで、全篇を通してその魅力が全開。
夫役のウィリアム・アザートンも、エンドロールで名前が出るのが四番目というのが不憫という気もしますが、二人でアニメを観るシーンのもの悲しさなどの見せ場もあってこちらもいい役者。

四半世紀以上前の作品を、ゆめゆめ現在の尺度で捉えることのないよう、と思って観てももう一つ楽しめなかった場合、その非はそうしたいい役者の手綱を捌き損ねたスピルバーグにあるような気がします。


続・激突! カージャック  THE SUGARLAND EXPRESS
1973年 アメリカ
配給 ユニバーサル
製作 リチャード・D・ザナック デイヴィッド・ブラウン
監督 スティーヴン・スピルバーグ
出演 ゴールディ・ホーン  ベン・ジョンソン マイケル・サックス ウィリアム・アザートン ハリソン・ザナック

Mar 22, 2005

アンデッド

アンデッド鑑賞するにあたりまず注意するべきは、この作品はホラー映画とは思わない方がいいということ。殊にロメロやフルチを崇拝している向きは、が出現したあとの展開に閉口してDVDプレーヤーの停止ボタンを押す可能性も少々。

私の場合はそのシーンに至る前に、ダラダラとした脱出劇で睡魔に襲われギブアップ、翌日その続きを観る始末となったわけですが。

ということでこの作品は、スピエリッグ兄弟のセンスを気に入るかどうかが評価の分かれ目。ホラーとSFとマカロニ・ウェスタンのごった煮というB級臭が快感な人もいるでしょうしね。

しかし、ストーリーそのものは観る人の趣味もあるでしょうからともかくとしても、まとまりのない構成ばかりは誉められたものではなく、それを映像センスを云々して擁護するのはいかがなものか、と。

ただ、人物描写の上手さは、そのあたりをなおざりにしている昨今の映画に比較すると上等の部類。マリオンのブットビぶりは見せてくれるし、警官コンビの情けなさもいい味を出していますしね。

残酷描写も、この作品の売りである脊髄ウネウネやキレたレネの大殺戮シーン等々、十分に堪能させてもらえますし、騒動がひと段落したあとの病院のシーン、そして「ミス・バークレー」の伏線が活かされたラストも上出来。確かにこの兄弟、才能はあるのだとは思います。

「子供の頃からホラー映画が大好きで、ビデオショップに自分たちの作品が並ぶのが夢だった」のであれば、ハリウッドでは、ホラーファンをもっとストレートに楽しませる作品を期待しておきましょう。


アンデッド UNDEAD
2003年 オーストラリア
配給 アートポート
製作・監督 ピーター&マイケル・スピエリッグ
出演 フェリシティ・メイソン ムンゴ・マッケイ ロブ・ジェンキンス リサ・カニングハム ダーク・ハンター エマ・ランドール

Mar 12, 2005

SAW ソウ

SAW ソウ初めてこの題名を目にした時「SEEの過去形ですね!」としか思わなかった私は、輸入DVD(スケルトンパッケージ)の盤面に描かれたノコギリの歯にまず「ヌルいな」とツッコまれたわけですが・・・

そういうわけで観る前の予備知識はと言えば「老朽化したバスルームで目覚めた二人の男、足首には鋼鉄の鎖、二人の間には自殺死体」というごく基本的なプロット、ていうか導入部のみ。

CUBE」とやたらと比較されることから密室での心理劇が淡々と続くのかなと思っていたら全然そういう作品ではなく、撮影期間が僅か18日の低予算映画、そして監督の初長編らしいのにこんな・・・と、そのあまりの出来のよさに唖然としてしまいました。

演出は勿論、構成や人物描写といった基本がしっかりしているし、台詞やカットにいちいち無駄がないのも素晴らしい限り。小道具についても、あらすじの紹介でよく触れられるものもさることながら、人形や仮面もいい仕事をしています。

貶すところがあるとすれば、展開が若干ダレる部分と、肩に力が入り過ぎかなという映像が時折あることくらいで、まあそれもインネンみたいなもの。大体、端正な作りのホラー映画ってのは全体としての面白さを欠くような気がしますしね。って、この作品はサスペンスに分類するのが正しそうですが。

また、物語が驚愕の結末へと向かうラスト20分の迫力とスピード、その凄まじさはある意味「ブレインデッド」のよう。「想像を絶するラストとは!?」などという煽り文句は大体が予想の範囲内だったりするものですが、この作品に関しては偽りなしと言ってよいでしょう。

そしてそのラストを見て(背景色テキスト→)「もしかしたら『2』が作られるかも・・・」と思った人は私を含めて少なくないでしょうが、とにかくジェームズ・ワンとリー・ワネルのコンビの次回作は絶対に要注意ですね。


SAW ソウ
2004年 アメリカ
配給 アスミック・エース エンタテインメント
製作 グレッグ・ホフマン オーレン・クールズ マック・バーグ
監督 ジェームズ・ワン
出演 ケイリー・エルウェス リー・ワネル ダニー・グローヴァー モニカ・ポッター

Mar 5, 2005

CUBE キューブ

CUBE キューブ出口のない閉鎖された空間で次第に歪み、そして狂っていく精神。

賢明でいようとした者から命を絶たれるところに作り手のシニカルな視点が伺える上、何故6人は閉じ込められたのか、誰がなんのために17,576個の立方体を有する建造物を築いたのか、その解答を最後まで観る者に与えないことで緊張感の持続した、濁りのない作品になっています。


 「生きるに値するものが外には何もない」
 「じゃあ何があるの?」

人間のエゴがぶつかり合い、醜悪で滑稽で。外の世界とキューブの中と、いったい何が違うというのか。脱出劇として登場人物に感情移入していると裏切られる後半の展開もお見事。生き残った者は、外界へと続く眩しい光の中に何を見たのだろう・・・と。

ところで序盤の「メッシュ」や硫酸といった景気のよい殺しっぷりからして、その後も派手なスプラッタが拝めるかと思ったらさにあらず。
「血や臓物が足りねえな」という気もしますが、「カイジ」の絶望の城を連想させるシーンには「やるなあ」と思ったので、その点はまあよしとしておきましょう。


CUBE キューブ
1997年 カナダ
配給 ポニーキャニオン クロックワークス
製作 メーラ・メー ベティ・オァー  
監督 ヴィンチェンゾ・ナタリ
出演 モーリス・ディーン・ウィント ニコール・デボアー デヴィッド・ヒューレット ニッキー・ガーダグニー アンドリュー・ミラー ウェイン・ロブソン

Feb 12, 2005

マーダー・ライド・ショー

マーダー・ライド・ショー田舎町をドライブしていた若者たちが殺人鬼の餌食になるストーリーと言われても何をいまさらだし、まあ凝った映像と音楽でちょっと毛色を変えてみました、だけみたいな映画かと思っていた私が浅はかでした。これは凄い!

古いフィルムやTV画面、極彩色の絵作りやあれやこれやの処理をした映像の洪水は、その手が嫌いな向きもありましょうが(自分もあまり好きではなく)、そうしたシーンが妙に浮いた感じで、だから何?と言いたくなる某作品や某作品と比べるとマジにクール

観客は最初から最後まで狂気の世界をただひたすら叩きつけられるのですが、その作り手のセンスはかなり圧倒的。

ゴアシーンも最近のホラーにしてはこれでもかこれでもかと見せてくれるし、それぞれのキャラが立ってる殺人鬼たちが次から次へ、まさにショーのごときの殺しっぷり。基本的には「徹底的」なのですが、その一方で(ネタバレにつき背景色テキスト→)若い警官をただピストルで殺すだけのシーンの異常な間などは心憎いばかりで、もうゾンビさんたら、みたいな。ともあれ邦題付けた人、ナイス!

正直無差別殺人ものにはあんまり萌えないのですが、これは久々に快哉を叫びたくなる傑作、などといつまでも駄文で誉めまくっていてもなんなので、とにかく・・・ 「見て 聞いて その手で触れてごらん」


マーダー・ライド・ショー HOUSE OF 1000 CORPSES
2002年 アメリカ
配給 アートポート
製作 アンディ・グールド
監督 ロブ・ゾンビ
出演 シド・ヘイグ ビル・モーズリイ シェリ・ムーン カレン・ブラック マシュー・マッグローリー

Feb 5, 2005

ショーン・オブ・ザ・デッド

ショーン・オブ・ザ・デッドなにはともあれ、母親と恋人を救出するシミュレーションのBGMには大爆笑。
その母親の名前はバーバラだし、「それ言うなあー!」はゾンビ映画史に残る名台詞、パブに立て籠もった後に(ネタバレにつき背景色テキスト→)デービッドが引き裂かれるシーンはローズキター!等々、信者はハァハァすること必定。

tribute to George A. Romeroなシーン以外にも、死者が蘇る原因はサルではありません(ブレインデッド)とか、ゾンビの腹に開いた穴から呆然とするショーンとエドが見えたり(地獄の謝肉祭)とか、名作のパロディの洪水。

イギリスでは「ドーン・オブ・ザ・デッド」の興行収入を抜くヒットを記録、そうしたゾンビ映画の脈々とした歴史を知らなくても楽しめるとは思いますが、全体のデキは昨今の作品同様に若干薄い感じが・・・
少なくとも、この作品を誉めることが美徳と言わんばかりにマニアたちがこぞって絶賛している風潮はいかがなものか、と。

まあ前評判があまりにもよかったから(ロメロも絶賛!とか)、期待し過ぎだったのかもしれません。
主人公が無気力であればストーリーがまったりと進行するのには好感が持てますし、無意味なスローモーションやコマ落としでテンポが悪くなるようなこともなくラストも上出来、よくまとまったコメディではあるので観て損はないでしょう。
ダイアンの「ゾンビに襲われないための歩き方講座」もいざという時に役に立つでしょうから、ビールと乾きものを用意して鑑賞するのがオススメです。

ところで秋葉原のDVDショップではマニアたちがゾンビよろしく買い漁り、初回入荷分があっという間に売り切れていたのには凄えと思いました。


ショーン・オブ・ザ・デッド
2004年 イギリス
配給 ユニバーサル(日本劇場未公開)
製作 ティム・ビーヴァン エリック・フェルナー
監督 エドガー・ライト
出演 サイモン・ペッグ ケイト・アシュフィールド ルーシー・デイヴィス ニック・フロスト ディラン・モラン

Jan 29, 2005

バイオハザードII アポカリプス

バイオハザードII アポカリプス デラックス・コレクターズ・エディション宮崎ショックに始まるホラー映画の冬の時代、その終わりがまだ見えない状況下の2002年にIは公開されたわけですが、ゾンビ映画の新作!ということで劇場に足を運んだホラーマニアたちの感想は概ね「・・・まあ、いいんじゃない?」といった感じでしたね。

ホラーとは言えない作りだからでしょうが、それは勝手な思い込みをした我々の非、プロットはよく練られていたし、ロメロへのオマージュもそこここにあったし、カタギもマニアも楽しめる出来ではあったかと。

そしてII。

なんか評判よくないし、ゲームに思い入れがあるわけじゃないし、どこかの雑誌じゃゾンビのの字も出てこないレビューしてるし、と期待せずに観たのですがなかなかどうして。

序盤は「また『ドーン・(以下略)』を見せられるのかよ・・・」と思ったのですが、その後はI同様のテイストでアクションはパワーアップ。出番が少ないと言われていたゾンビ(アンデッド)もあのくらい見せてくれれば上等。ゲームのファンやアクション映画好きならより楽しめそう。

(またしても)「死霊のえじき」を連想させるクライマックスのとあるシーンなども、「ああ、追いつめられた場合のいつものパターンね」と思ってたら、「そう来るか!」とウケたし。

ただ、ストーリーが進むにつれジルはヘタレ化するし、ネメシスは作品のリズムを乱しているような気がするし、カルロスは唐突にカッコよすぎだよなあと、Iに比べて貶せるところがあるように思えるので、全体的な感想はやはり「まあ、いいんじゃない?」といったところでしょうか。


バイオハザードII アポカリプス
2004年 アメリカ
配給 ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
製作 ポール・W・S・アンダーソン
監督 アレクサンダー・ウィット
出演 ミラ・ジョヴォヴィッチ シエンナ・ギロリー ジャレッド・ハリス オデッド・フェール

Jan 25, 2005

デモンズ'95

デモンズ'95「砂漠に水を撒くような仕事だな」とでも言いたげに淡々とゾンビを殺すR・エヴェレットはナイスだし、マグリットの「恋人たち」のようなキスシーンや清順作品のようなセックスシーン等々、序盤から飛ばしてくれるのはいいんだけど、この作品の売りである「現実と幻影の交錯」が始まってからがどうにも冗長。

確かに映像や台詞は上等だけど、それも原作の手柄?と訝しく思う始末で、まあ「ゾンビ映画大事典」やネットでの評価がいい以上、面白く観ることができなかったのはアルジェントがそれほど好きでもない自分のせいかもしれないなあ、と。

いや、「アクエリアス」は好きなんですけどね・・・


デモンズ'95
1994年 イタリア・フランス
配給 コムストック
監督・製作 ミケーレ・ソアヴィ
出演 ルパート・エヴェレット フランソワ・ハジー・ラザロ アンナ・ファルチ ミッキー・ノックス

Jan 10, 2005

死霊のしたたり

死霊のしたたり スペシャル・エディション「ということで昨秋のDVD化で初めて観たのですが」
「今ごろ初見ってのはホラーマニアとしてたいそう立派ですね」
「コメディってことすら知らない体たらくでしてね。しかしテーマ音楽は秀逸ですね」
「で、感想はいかがなものですか?」
「とりあえずメグたんハァハァ、と」
「そういうギャグはいいから、ストーリーやスプラッタぶりをきちんと紹介しなさいよ」
「ゾンビって言うなあー!」
「言ってないし、それ違う映画だし」
「ドタバタ劇をテンポよく一気に観せてくれるし、キャラも立ってる。いい出来ですね。個人的には『ブレインデッド』の方がちょっと上かな、という気はしますが」
「ご時世とはいえ、わざわざピージャクに媚びなくてもいいと思うのですが」
「しかしあのラストはどんなもんでしょうねえ。『○○○・○○○○ー』のパクリかと思いましたよ」
「こっちの方が4年も前な上、その伏せ字ではネタバレ回避になっていないような気がします」


死霊のしたたり
1985年 アメリカ
配給 エンパイア・ピクチャーズ
製作 ブライアン・ユズナ
監督 スチュアート・ゴードン
出演 ジェフリー・コムズ ブルース・アボット バーバラ・クランプトン デビット・ゲール ロバート・サンプソン

Jan 9, 2005

三月のライオン

三月のライオン眩しい月の下、あるいは二か月後に取り壊されるマンションの薄明かりの中で、うさぎと少女の愛の物語はどこへ辿り着くのか。

「風たちの午後」と同じ名前を与えられたヒロインのナツコはやはり嘘つきで、そして本作でも現実世界との境界を超える物語を成立させる。

鉄橋や廃墟、夜明けの街や海。
クーラーボックスやポラロイド写真といった小道具。

精緻な映像とフォルクローレの中で舞うその姿は本作ではより鮮烈。

女性同士の愛を描いた「風たちの午後」は16mmの自主映画だったけど、例えば文芸地下が森田芳光作品との二本立てで上映したことは、その評価の表れであったように思う。

そしてその11年後に発表された「三月のライオン」も兄と妹の愛を淡々と、しかし激しく描き、観る者の心に突き刺さる。


三月のライオン
1991年
配給 アップリンク
製作 西村隆
監督 矢崎仁司
出演 趙方豪 由良宜子 奥村公延 芹明香 内藤剛志 伊藤清美