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Nov 30, 2008

ダイアリー・オブ・ザ・デッド

ダイアリー・オブ・ザ・デッド情報とネットワーク。

「我々」と「奴等」の狭間をたゆたう傍観者は、やがて当事者となって、ビデオカメラに記録される。
世界の終わりに、生き残れるか。世界の終わりに、何が遺されるのか。


原点回帰。

リビングデッド・サーガの時間軸を巻き戻して、ジョージ・A・ロメロが紡いだ「世界の終焉」の物語。

主観映像で客観的に描写される終末、それがロメロの手によるものとあっては、凡百のフォロワーたちの凡庸な作品と異なるものになるのは当然のこと。

いや、「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」で脚光を浴びたPOV(Point of View)の手法を誉めるつもりはありませんし、そうした点に否定的な感想を抱くのは極めてもっともなことと思います。

また、ザック・スナイダーの「ドーン・オブ・ザ・デッド」や「バイオハザード」シリーズを好む向きが、ロメロの作品をお気に召さないのも今にはじまった話ではありませんしね。

しかし、68歳にしてまったく新しいゾンビ映画を提案したことはまず評価されるべきでしょう。

そう、アクションやクライマックスが派手なだけの映画ばかりでは退屈というもの。
豪勢な作りではありながら、方向性が曖昧になった感のある「ランド・オブ・ザ・デッド」についての贖罪、この作品をそう捉えたとしたら尚更のことに思えるのです。

さらに、ゾンビの頭部が酸でゆっくりと破壊されたり、自分もろともゾンビを斧で貫いたりといった新機軸のゴアは嘆息もの、「28日後…」では拭うことのできなかったロードムービーにありがちな散漫さも皆無。
最後に生き残るメンバーが意表を突いているのも心憎い限りで・・・


ああ、なんという愉悦!


ロメロは老いてなどいなかった。
それどころか、彼はフォロワーたちに「どうだい?もっと頑張れよ」と、笑いかけているのかもしれません。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

ダイアリー・オブ・ザ・デッド  DIARY OF THE DEAD
2007年 アメリカ
配給 プレシディオ
製作 ピーター・グルンヴォルド サム・エンゲルバール アート・シュピーゲル
監督 ジョージ・A・ロメロ
出演 ミシェル・モーガン ジョシュ・クローズ ショーン・ロバーツ エイミー・ラロンド

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ハロウィン

ハロウィンイリノイ州の片田舎、ハロウィンの惨劇。
精神病院に収容された少年は、その魔性を理解する医師の治療を受けながら闇の世界から帰って来ることはなく・・・そして17年後、怪物となった。


ホラー映画の金字塔、ジョン・カーペンターの「ハロウィン」は1978年の公開。
「マーダー・ライド・ショー」「デビルズ・リジェクト」で一躍ホラー・メーカーとしての名を成したロブ・ゾンビが、30年の時を経てマイケルを蘇らせたこのリメイクは、もはや事件とさえ言えるでしょう。

しかし、オリジナルのメインテーマがオミットされることもなく、彼ならではの楽曲へのこだわり、そのサウンドは観る者を魅了するはずだったのに・・・グルーヴ感を欠いたのは何故なのか?

いや、マイケルの狂気を、大虐殺の夜を、オリジナルとは趣を変えてじっくりと描いた前半については、さすがゾンビと唸らせてくれるものではあったんですよ。
唐突にはじまる殺人も、だからこそ彼の異常性をじゅうぶんに表現した憎い演出と言えるでしょうしね。

ただ、母親の自殺については演出が淡泊、むしろ陳腐。
そして、精神病院での圧倒的な暴力は見事だったものの、成人したマイケルが殺人を繰り広げる後半がスラッシャー・ムービーとしての常道に過ぎ、どうにも退屈、どうにも食い足りない思いが拭えなくて・・・


マイケル・マイヤーズはなにを渇望したのか?


彼と妹が織りなすクライマックスは、だからやや浅薄なものとなって、あのクールなラストシーンで流石のセンスを見せてくれようとも、カタルシスを欠いたものになってしまっているのです。
そう、ロブ・ゾンビならもっと新しい解釈の「ハロウィン」を提示してくれると思っていたのに、と。

あるいはカーペンターへの敬意が枷となったのか・・・そう思うのはさすがに穿ちすぎでしょうか。

ともあれ、公開初日のシアターN渋谷では予告編フィルムを使ったしおりがプレゼントされたり、マイケルのマスクを被った関係者がいたりとプロモーションが賑やかだったのですが、観終えたあとではそれらもちょっと空虚に思えてしまったのでした。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

ハロウィン  A ROB ZOMBIE FILM HALLOWEEN
2007年 アメリカ
ハロウィン配給 ザナドゥー
製作 マレク・アッカド アンディ・グールド ロブ・ゾンビ
監督 ロブ・ゾンビ
出演 マルコム・マクダウェル シェリ・ムーン・ゾンビ タイラー・メイン スカウト・テイラー・コンプトン

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ゾンビ・ストリッパーズ

ゾンビ・ストリッパーズ慢性的な兵力不足を打破するために、米政府が開発した死人を蘇らせるウィルス。
それが研究所で蔓延する事件が発生して、事態の解決に乗り込んだ兵士までが感染、やがて場末のストリップ・クラブへと伝播して・・・


ポール・ダンスの躍動感しかり、女同士の諍いしかり、ゾンビになったストリッパーのほうが生き生きとしているというセンス・オブ・ユーモアが本作の白眉。

そうしたストリップ・クラブの面々が繰り広げるサバイバルとスラップスティック、そして全編に溢れるアイロニーはジョージ・A・ロメロの文法を踏襲したもの。

ただただ単調なドタバタになりかねないこうしたプロットのホラー・コメディであれば、だから安心して観られるというもの。
もう少しはっちゃけてもよかったのではとも思うけれど、過ぎたるはなんとやら、それは作り手のバランス感覚だったのでしょう。

ただ、クライマックスは若干冗長。
ストーリーの当然の帰結としてストリップ・クラブに突入するSWAT部隊は面白味を欠き、科学者の奸計が結末というのもやや凡庸であったかもしれません。
田舎娘はなんだったのさ、もうひとりのヒロインじゃなかったの?といったあたりも気になりましたしね。


 「この役立たずめ!お前は死人以下だ!」


とはいえ、地雷になりかねないこの手の作品としてはかなり上等。
狙った感のある「ショーン・オブ・ザ・デッド」よりもむしろ、ただただおバカなこちらのほうが好みという人も少なくないのではないでしょうか。

そうそう、もちろんR18であるがゆえにゴアはもうやりたい放題、頭部は破壊され内臓が引きずり出されてこそホラーだ!という向きもきっと満足したことかと思います。

なにはともあれ、プロモーションでインリン・オブ・ジョイトイさんが評したこの「チャーミングなゾンビ」たちは必見、今秋公開されたホラー映画の思わぬ掘り出しものであることは間違いないでしょう。

また、蛇足ではありますが、私が観に行ったのは銀座シネパトス。
綺麗な映画館で観るよりも、B級臭の香しい本作については似つかわしかったとは言えますね。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

ゾンビ・ストリッパーズゾンビ・ストリッパーズ  ZOMBIE STRIPPERS
2008年 アメリカ
配給 ソニーピクチャーズ エンタテインメント
製作 アンジェラ・リー アンドリュー・ゴロフ ラリー・シャピロ
監督 ジェイ・リー
出演 ジェナ・ジェイムソン ロバート・イングランド シャムロン・モア ジョイ・メディナ

SAW5 ソウ5

SAW5 ソウ5目覚めれば廃墟、コンクリートの台の上。
首と両足は固定され、両手は鎖で繋がれて、天井には巨大な刃のついた振り子。
「やあ、セス。ゲームをしよう」

目覚めれば暗い密室、首輪で拘束された5人の男女。
部屋の壁にはV字型の大きな刃、ケーブルで繋がった首輪と刃。
「ようこそ。5人が一緒になって生き残り、これまでと違う生き方を選んでほしい」


新しいゲームがはじまった。


ギデオンから生還したホフマン刑事、そして水槽のゲームで九死に一生を得たFBIのストラム捜査官。
本作はどちらかと言えば、そのふたりを中心とした普遍的な刑事ものといった印象。

そう、時間軸の交錯、パラレルに進行するゲーム。あるいは、レトリックの妙こそが「SAW」でありながら。

元々はデザイン、美術畑だったデイヴィッド・ハックルに監督が代わり、冒頭から映像に違和感や稚拙さを感じていたのですが、それがあるいは本作のすべて。シリーズで最悪の仕事と言ってしまっても過言ではないでしょう。

たとえば、ホフマンが「ソウ」の剃刀のゲームからジグソウと行動していたというのなら、演出は「ソウ3」のアマンダのそれにきっちりと合わせるべき。色彩もアングルも、微妙な間に至るまで。

だから、ゲームの意味が希薄であるのみならず、ホフマンとストラムのせめぎ合いにも緊張感を欠き、このクオリティでは「ソウ6」への繋ぎというエクスキューズも許されないと思うのです。それでも、


法律事務所、ジグソウがジルに宛てた遺言のビデオテープと大きな箱。
「よく来てくれたね。君に渡したいものがある。君なら使い方が分かるはずだ」


エリクソンがストラムを追った理由のひとつ、物語の矛盾。
その謎解き、そして真の「後継者」は誰なのかについて、「ソウ6」はやはり観ないわけにはいかないのですが、もうそろそろゲームから解放してほしいというのが正直なところです。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

SAW5 ソウ5
2008年 アメリカ
SAW5 ソウ5配給 アスミック・エース
製作 グレッグ・ホフマン オーレン・クールズ マーク・バーグ
監督 デイヴィッド・ハックル 
出演 トビン・ベル コスタス・マンディラー スコット・パターソン ベッツィ・ラッセル

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Sep 21, 2008

フロンティア

フロンティア 「なにもかも元通りにしてよ!」
 「俺たちはもうあとには退けないんだ!」

大統領選挙の決選投票に極右勢力が残ったことで暴動に揺れるフランス。
移民の家庭に生まれた5人の若者はオランダへの脱出を計画、混乱に乗じて強盗事件を起こし、国境へと逃亡するのだが・・・

彼らが見つけた小さな宿屋は、この世の果ての絶望だった。


オープニングの胎動、暴動のシーンから物語の序盤、その映像の妙はたしかにアレクサンドル・アジャを連想させるもの。
うん、「リュック・ベンソンが発見した天才の衝撃的デビュー作!」というコピーも眉唾じゃあなさそうだ。

そして緊張感と閉塞感を緩ませることなく狂気と恐怖と絶望を描き、人物描写もなかなかに巧み。
「マーダー・ライド・ショー」や「ヒルズ・ハブ・アイズ」といった殺人一家ものを見慣れていても、飽きることなくクライマックスへと誘われることになるのですが・・・

多民族国家であるフランスの暗部、その不安と、ナチス思想の狂気をかけて、そこからの脱出を描こうとしたのならやや力不足、カタルシスがもうひとつ。

108分という上映時間がちょっと冗長にさせたのか、「ホステル」は見せなかったアキレス腱切断シーンといったゴアは上々だったけど、頭部破壊はトム・サヴィーニの匠の技をさんざん拝んでるからなんか余計とか、ヒロインに銃弾が絶対に当たらないのは見事だねとか、悪意すら湧いて来ようというものです。


そう、ヤスミンの狂気をこそもっと前面に、もっと丹念に描けばいいものを、と。


なにもかも失ってしまった。
両親が迎えに来てくれることを信じて、どこにも行くことのできないエヴァを救うこともできなかった。


とはいえやはりプロットの勝利、どうしようもなく空虚なラストも好みではあり、アレクサンドル・アジャほどの才気があるかどうか本作では判断できませんが、フレンチ・スリラーの佳作ではあるでしょう。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

フロンティア
フロンティア  FRONTIER(S)
2007年 フランス
配給 トルネード・フィルム
製作 ローラン・トロン
監督・脚本 ザヴィエ・ジャン
出演 カリーナ・テスタ サミュエル・ル・ビアン オルレアン・ウィイク エステル・ルフェビュール

Aug 30, 2008

デイ・オブ・ザ・デッド

デイ・オブ・ザ・デッド24時間に及ぶ検疫隔離演習、州兵によって封鎖された町。

インフルエンザに似た症状に苦しむ人々で溢れかえる病院、町を覆い尽くそうとしているのは新種のウィルスなのか?
そして、感染者たちはゾンビと化して人肉を求め、破壊と殺戮が繰り広げられる・・・これは演習なんかじゃない!


レイティング問題によって葬られたシナリオ。
「死霊のえじき」がリメイクされると聞いてファンがまず期待してしまったのは、23年の時を経た今それがスクリーンに供されること。

それが叶わないことはともかくも、いざこの作品を観てまず思ったことは、リメイクだのリエンビジョニングだのとほざくな、といったあたり。

終末観も絶望も、滅亡しようとしている人間の儚さも描かれることはなく、そこにあるのは緊張感や閉塞感を欠く、ただただ凡庸なアクションだけ。
インディペンデントとしてのゾンビ映画であるのなら単純に駄作と言われるだけですが、この酷さではことさらにマニアの反感を買うというものです。

人体やゾンビが破壊されるシーン、ゴアもバリエーションがないのでだんだん飽きてくる始末、しかもスピードだけは意識した演出だから滑稽ですらありうんざり。
「死霊のえじき」のバブにあたるバドが菜食主義者という伏線や、ローガンが餌食になるシーンでは劇場内に笑い声があがって確かに面白かったのですが、終盤でこれはコメディですと言われてもちょっと・・・

ともあれ、どうして「13日の金曜日PART2」のスティーヴ・マイナーと、「ファイナル・デスティネーション」のジェフリー・レディックでこんなことになるんだとはやはり思ってしましました。

あるいは、観ている最中に駄作繋がりで「ハウス・オブ・ザ・デッド」をやたらと連想してしまったり。
ただ、オナ・グローアーの乳は素晴らしいけれど、ミーナ・スヴァーリは・・・いや、このサラは実にキュートなので、この作品で唯一誉められるところなのですけどね。

そしてラストがまた陳腐、エンドロールが流れ始めるや憤然と席を立つ人が少なくはなかったのですが、それはホラー映画ではまして御法度。
ただ、最後まで座っていた観客にしても、予告編が上映されたロブ・ゾンビの「ハロウィン」や、ジョージ・A・ロメロの「ダイアリー・オブ・ザ・デッド」への思いを馳せていただけなのかもしれません。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

デイ・オブ・ザ・デッド  DAY OF THE DEAD
2008年 アメリカ
配給 ムービーアイ
製作 ボアズ・デヴィッドソン ジェームズ・ダデルソン ランドール・エメット ジョージ・ファーラ
監督 スティーヴ・マイナー
出演 ミーナ・スヴァーリ ニック・キャノン ヴィング・レイムス マイケル・ウェルチ アナリン・マッコード


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Dec 16, 2007

アイ・アム・レジェンド

アイ・アム・レジェンド癌の特効薬として開発されたウィルスの副作用で滅亡しようとしている人類。
凶暴化した感染者たちは暗闇に潜み、軍人であり科学者であるネビルはニューヨークでたったひとり、治療法の研究を続ける・・・

正月映画の本命では?と言われながら、公開を間近にしてかなりの悪評。
SFにはまるで興味がない私ですが、「後半がゾンビ映画」であることが貶されている理由のひとつなら・・・バッチこーい!と、ホラー映画好きとしては観ることにしましたよ。

また、ホラー映画好きなので満員の映画館で鑑賞する機会などそうはなく、そしてエンドロールが流れ始めるや場内に凄まじいどよめきと乾いた笑いが満ち溢れた光景は、かなり久々に味わうものでした。

いや。
ゴーストタウン描写は頗る上等、「28日後…」のロンドンを凌ぐその荒涼感については、観る価値が大いにあると言えるんですよ。

色とりどりの缶詰や調味料が並べられたキッチン、レンタルビデオショップでのマネキンとの会話。
さらに、愛犬のサムはどうしようもなく素晴らしく、ネビルと一緒にルームランナーをしたりバスタブの中で眠ったり、戦闘機の翼の上から摩天楼に向かってゴルフの練習をするシーンでは興味なさそうに、それでもすぐそばで付き合っていたり。

そして、ウィルスを治療するための研究に懸命になりながら、しかし自分が救おうとしている感染者たちに命を奪われるかもしれないジレンマ。
妻や娘との別れ、悲劇を織り交ぜて描かれる、そうした空虚な世界の描写は素晴らしいのですが・・・
そこまで。

いかんせん、サムを失ったあとに精神の変調に見舞われて、安息の地を目指す母子と出会ってからの展開は、伏線もなんの説得力もない代わりにツッコミどころ満載、ぶっちゃけぞんざい過ぎで・・・

だから、ゾンビ映画好きとしてはダーク・シーカーズに「走んじゃねえ!」と言いたいのはともかく、中盤までがいくら重厚であろうとも、全体については薄いなあ・・・という感想になってしまうのです。

たとえば、ゼノフォビア(外敵恐怖症)をダーク・シーカーズに拠らず殊更なメタファーとして描き、前半の緊張感を持続したままで人類とネビルの再生の物語、新しい解釈の「地球最後の男」を描いたなら、もちろん批判はあろうけれど、それだけではなかったろうに、とも。

なにはともあれ、孤独の描写の巧みさですべてを許せる寛容な精神を持っている人と、犬が好きな人にしかお勧めできないホラー映画の凡作であるように思います。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

アイ・アム・レジェンド  I Am Legend
2007年 アメリカ
配給 ワーナー・ブラザース映画
製作 アキバ・ゴールズマン ジェイムズ・ラシター デイビッド・ヘイマン ニール・モリッツ
監督 フランシス・ローレンス
出演 ウィル・スミス アリーシー・ブラガ ダッシュ・ミホック チャーリー・ターハーン

Dec 9, 2007

スリザー

スリザー鹿狩りの解禁を間近に賑わう田舎町に落下した隕石、そしてはじまった宇宙生命体=スリザー<ずるずると滑って忍び寄る者>の侵略。
生きる者の脳を支配するパラサイト攻撃によって増殖を続ける生命体から逃れ、生き延びる術ははたしてあるのか?

手がけた作品は悉く興行収入の上で成功を収め、脚本家としての力量は疑うべくもないジェイムズ・ガンの初監督作品。

「ドーン・オブ・ザ・デッド」に注いだゾンビ映画への愛情、ジョージ・A・ロメロへの敬意を理解できなかったザック・スナイダーについて、「一緒に仕事をすることは二度とないだろう」と吐き捨てた気骨と、今秋日本で公開されたホラー映画としては「ヒルズ・ハブ・アイズ」と並んで高かった前評判。
公開初日の新宿ヲデオン座には年嵩の観客が多く、それはマニアがどれほど待ち望んだ作品であったかの現れと言えるでしょう。

しかし、プロットから想像された数多のホラー映画へのオマージュや、センス・オブ・ユーモアのひとつひとつは上々ながら、ストーリー展開のテンポが誉められたものではなく、観ていてどうにも疲れてしまったんですよ。
シーンが切り替わるときにいちいち暗転するのも不快で、とにかくコメディもアクションもシリアスも、それぞれが乖離しているのでは・・・と。

そして、ナメクジが大量に発生してからは物語が加速して、たたみかけるように見せるべきものを見せてくれるかと思えばテンポは好転することがなく、ゾンビ化した市民の群れが襲いかかってくるシーンでは胸を踊らせるべきなのに、そのころにはもういいかげんうんざりしていて・・・

 「君の方が俺よりも強い」

とはいえ、たとえば私の場合、バスタブの女子高生・カイリーに迫るスリザーや、ラストで彼女がソファーの陰からひょっこりと現れるシーンにはついニヤッとしてしまったわけで、ホラー好きなら楽しめるシーンが随所にありはしたものの・・・

ガンが描こうとしたオリジナルの世界観は解るけれど、それも善意をもって観てあげればこそ。
だから、劇場には乾いた笑いしか漏れることがなく、ともあれこれでは「ドーン・オブ・ザ・デッド」と大差ないだろうと思ってしまいました。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

スリザー  SLITHER
2006年 アメリカ (2007年日本公開)
配給 東宝東和
製作 ポール・ブルックス エリック・ニューマン
監督 ジェイムズ・ガン
出演 ネイサン・フィリオン エリザベス・バンクス グレッグ・ヘンリー マイケル・ルーカー タニア・ソルニア

Dec 2, 2007

XX エクスクロス 魔境伝説

XX エクスクロス 魔境伝説傷心を癒すために女子大生たちが訪れた人里離れた温泉地、インターネットで検索してもなんの情報もヒットすることのない阿鹿里村は、旅の女の足を切り落として生き神にする狂気の因習が密かに残された土地だった・・・

「今すぐ逃げろ!足を切り落とされるぞ!」や「ガールズ・スリラー」はいいけど、監督が所詮・・・と思った人は少なくないでしょうし、ホラーを期待して観たらやはり憤然とするかとは思うのですが、いや、これはちょっと評価の難しい作品ですよ。

演出については、気負うことも奇を衒うこともなく、主演の2人に襲いかかる恐怖、そのパラレルな時間軸を表現する映像のリバースが鬱陶しいくらい。
ストーリーそのものは面白く、不快にもならずに観ていたものの、鈴木亜美がチェーンソーで眼帯ゴスロリ女に反撃するシーンでは・・・さすがに頭を抱えてしまいましたが。
彼女の好演はこの作品の見どころのひとつなんですけどね。

それはそれとして、松下奈緒サイドの展開はホラーとしてはごく普遍的なもの、じゅうぶんに見せるものではあり、

 「いいな・・・しよりは。」

恐怖の村の物語は、やがてクライマックスへと向かうのですが・・・やっぱドタバタになるのかよ!と。

原作を読んだ人なら想定のうちだったでしょうけれど、いずれにせよ「ああ、これはコメディだったのか」と思えば不思議と腹は立たないというもの。
劇場では中盤以降笑い声が絶えることがなく、みんな楽しんで観ていたし、ジャパニーズ・ホラーが嫌いな私にしても、「呪怨」や「サイレン」と比べればむしろ上々では?と思ったし。

もちろん、よりパワフルであってほしかったとは思うけれど、それは現時点の監督の技量を考えればしょうがない話ではあり、むしろ深作健太の新たな方向性を示したという意味で、興味深い作品になったと言えるのではないでしょうか。

ところで、劇場が大きくどよめいたラストの驚愕について。
いや、これはストーリーそのものがどうこうといった話ではないのですが、とにかくあれは反則。

ただ、この作品がコメディであるのなら認めるしかなく、ともあれこれから観に行こうという人はポスターや公式サイトをチェックせずに劇場へ足を運ぶことをお勧めします。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

XX エクスクロス 魔境伝説
2007年
配給 東映
製作 千葉龍平 樫野孝人
監督 深作健太
出演 松下奈緒 鈴木亜美 中川翔子 小沢真珠 池内博之

Nov 24, 2007

SAW4 ソウ4

ソウ4 ジグソウす。

誰が新たなゲームを仕掛けているのかはもちろん、本作を観終えたときに観客たちはキャッチコピーのほんとうの意味を理解するわけですが、上映後の劇場ではストーリーがよく分からなかったという声が少なからず聞こえてきて。

それは、シリーズをすべて観ている人をどのように楽しませるか、どうやって驚かせるかを殊更に意識してしまった、作り手の傲慢さに拠るものなのかもしれません。

大体、リッグやSWAT隊がドタバタと駆け回り、次から次へとゲームをただ見せているだけでは恐怖感や緊迫感が盛り上がらないというもの。
さらには拘束されたエリックとホフマン、そしてジルが語るジョン・クレイマーを描くからとは言っても、登場人物の複雑さが相まって、ストーリー展開がどうにも冗長に思えてしまいました。

あるいは、最前列はいいけど、アマンダほどのインパクトはない後継者がまた賛否両論の種。
その背景にあるものは次作で明らかにされるとは思うのですが、ともあれそうしてこの作品自体の絶対性をなおざりにしてしまっていいのでしょうか?

 「ゲームは始まったばかりだ」

パラレルな時間軸を巧妙に利用したシリーズならではのトリックは健在ながら、映像も音楽も凡庸、アマンダのゲームではないから・・・というのは冗談だけど、ゴアが控えめなのもインパクトを欠くところ。

また、これは日本公開版に限った話なのかもしれませんが、フィルムの編集がおかしいところがあって、シーンの繋ぎがブチッとなることしばしばだったのが不快、といった余談はさておくとしても。

シリーズはパズルのピースなんだとうそぶくスタッフは、奇蹟とさえ称えられよう第一作の呪縛から逃れられず、ジグソウの罠に嵌ってしまっているような気がするのです。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

ソウ4  SAW4
2007年 アメリカ
配給 アスミック・エース
製作総指揮 ダニエル・ジェイソン・ヘフナー ジェームズ・ワン リー・ワネル 他
監督 ダーレン・リン・バウズマン
出演 トビン・ベル スコット・パターソン ベッツィ・ラッセル コスタス・マンディラー リリク・ベント

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ゾンビーノ

ゾンビーノ友だちのいない少年とゾンビの友情と冒険。

人間を襲わないように制御するゾムコン社の首輪によって、人間とゾンビが共存できる世界。
そこではゾンビはペットであり労働力であり恋人でさえあり・・・と、「名犬ラッシー」を意識して製作されたというカナダ発のゾンビ・コメディのまなざしは確かに高く、1950年代のアメリカをイメージしたのどかな街で繰り広げられるストーリーは機知に富んだものだったのですが・・・

いや、煙草を吸うゾンビ、ヤキモチを妬くゾンビ、はたまた飼い主がゾンビ化してしまい困惑するパピヨンなどの小技は利いているし、ゾムコン社をクビになったテオポリスといった脇役も上々。
そして、なんといっても少年のママは、むしろ彼女が主役なのでは?と錯覚してしまうほどにクールキュートで。

野生ゾンビによって街に脅威が広がるシーンなどの、PG-12としては上々なゴアに感心もしたし、物語の中盤、首輪が壊れたのに少年やママを襲わないファイドは見せてくれたものの・・・
そうした諸々を描く演出が残念ながら稚拙、どうにもちぐはぐな印象が拭えなかったんですよ。

だからミュージカル風味のシーンなどはその典型、「ゾーン」の恐怖を描き、「死霊のえじき」のカタルシスを狙ったと思しきクライマックスは、ゾンビへのトラウマを抱えるパパが最後に活躍するかと思ったら・・・といった意味の上でも消化不良。

これでもかというほどの勧善懲悪は、こうしたコメディであれば外連味のないストレート、誉めるべきではあるのですが、ともあれ難点をあげつらうことが無粋に思えるような演出センスは伺えず、これならさすがに「ショーン・オブ・ザ・デッド」の方が上、ましてやデヴィッド・クローネンバーグと比較するなど・・・

隣人のアメリカを揶揄している云々の評価も、ジョージ・A・ロメロが社会風刺を織り込むことと比較したものでしょうが、それもこじつけではと思ってしまうほどに、なんかこうもやもやしたものが残る作品でした。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

ゾンビーノ  Fido
2006年 カナダ (2007年日本公開)
配給 ショウゲート
製作 ブレイク・コルベット メアリー・アン・ウォーターハウス
監督 アンドリュー・カリー
出演 キャリー=アン・モス ビリー・コノリー ディラン・ベイカー クサン・レイ ヘンリー・ツェーニー

Nov 23, 2007

モーテル

モーテル子供を不慮の事故で亡くしたことで、心が通い合うことのなくなってしまった夫婦。

やがて離婚することをお互いに同意している2人が、これが最後になるかもしれないドライブの途中で車のトラブルに見舞われて、やむなく一夜を過ごすことになったモーテルの4号室、「ハネムーン・スイート」と名付けられたその部屋は・・・スナッフ・フィルムの舞台だった。

宿泊料、イノチ。」というあまり気が利いているとは言えないキャッチコピーと、予告編の映像の安っぽさ。
大したものではなかろうと高を括って劇場に足を運んで上映が始まるや、古き良きハリウッドを想起するクレジットのアニメーションと趣味のよい音楽のオープニング、いい意味で予想を裏切られるのでは・・・と期待した人は少なくないでしょう。

そして序盤ではや、リンゴや花火といった小道具をうまく使っていることに監督の技量を垣間見て、ドアを激しくノックする音、ラベルが剥がれたビデオテープに記録された生々しい殺人の映像と、物語が加速をはじめる時にはもう秀逸なサスペンスに主人公たちといっしょに引きずり込まれることになるのです。

 「必ず助かる」
 「約束よ」

外へと繋がることのない電話、救いのない閉鎖された空間。
殺人鬼たちとの戦いの中でカットインする、スナッフ・フィルムの中で絶叫する女性といった丁寧な演出も光り、ここまで良質であるのなら予定調和でもいいかなと思っていると、はたしてシンプルに、だからこそ悪夢の終焉がしっかりと描かれるラストシーン。

夫婦の「空虚」な心を、モーテルの「空室」と掛けたと思われる原題「VACANCY」から「ディセント」を連想したのはともかく、静と動をこうして描ききった力量はお見事で、フィルムメーカーはかくあるべし、似たようなタイトルの某シリーズの作り手たちにとっては学ぶべきところがあるのではないでしょうか。

そう、スタッフが目指したものは、ただ消費されるだけのスラッシャー映画でも「ソウ」でもなく、腰の据わったクラシックなスリラーで、それはスクリーンの中から確実に観客たちに供されているのでした。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

モーテル  VACANCY
2007年 アメリカ
配給 ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
製作 ハル・リーバーマン
監督 ニムロッド・アーントル
出演 ルーク・ウィルソン ケイト・ベッキンセール フランク・ホエーリー イーサン・エンブリー

Nov 10, 2007

超立体映画 ゾンビ3D

超立体映画 ゾンビ3Dホラーのカテゴリーでは「13日の金曜日PART3」(1981)がやはり3D映画であり、四半世紀前ですら偏光グラスをかけて鑑賞する方式だったのだから、いまの時代に赤青メガネというのは・・・どうなのさ?

そう思う向きは少なくないだろうけど、「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」のリメイクなんだからアナクロさも味というもの、かえって相応しいのでは?と、プロモーションや予告編を見て思っていた私。

池袋シネマサンシャインの発券窓口の片隅に飾られていたシド・ヘイグのフィギュアに心を惹かれながら地下に降りて、叔母の葬儀に参列するために郊外の墓地へとやって来た兄妹と突如襲いかかるゾンビ、そして一軒家に立て籠もる家族やカップルという、NOTLDの新たな世界を堪能することにしたのですが。

ベンが白人なのって・・・おい!
彼が名乗るシーンでは、劇場内にはやはり小さな笑い声を上げた人がいたし、ヒロインは「バーバラじゃなくてバーブよ」だし、トムとジュディはほとんどバカップルだし・・・

オリジナルやリメイクをさんざん観た者にとって、これはこれで趣があるのでそれはまあそれとしても、肝心の作品のデキはと言えば・・・やっぱちょっとなあ、と。

3D映画だからイロモノとして楽しむのが正しいとは思うのですが、臓物が派手にスクリーンから飛び出してくることもなく、多勢のゾンビに襲われるシーンを立体感溢れる映像で見せてくれることもなく。

NOTLDや「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド 死霊創世記」とは違って、本作ではエゴイズムの象徴として描かれていない父親の娘への思いや、せっかくシド・ヘイグを配したのだから、墓地の管理人の狂気をもっと強烈に描いていたのなら、ただの企画モノと片づけられない評価も与えられようものを、と思ったり。

だから、「最後の審判」や「宿命」といった台詞は空回りするだけ、死者が蘇った理由を明確にしたこともお気に召さないであろうゾンビ映画フリークもいることでしょうし、これでもしシド・ヘイグがいなかったら、怒ってとなりの観客の首筋に噛み付こうとするマニアがいてもおかしくはない気がするんですよね。

とまあ、ただ単純に久々の3Dホラーを楽しむ、あるいはマニアがやはり義務として観ておくといったネタでしか、本作を観る意味はないように思います。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

超立体映画 ゾンビ3D  NIGHT OF THE LIVING DEAD 3D
2006年 アメリカ (2007年日本公開)
配給 トルネードフィルム
製作・監督 ジェフ・ブロードストリート
出演 ブリアンナ・ブラウン ジョシュア・デローシュ シド・ヘイグ グレッグ・トラヴィス

バイオハザードIII

バイオハザードIIIファンタスティックムービーの境界は曖昧だけど、このシリーズはやはりSFやアクションに分類するのが適切で、だからホラー映画マニアがなにかにつけて貶すことにはちょっと疑問を抱いています。

ロメロへのオマージュと思しきシーンはあるし、「ゾンビ映画大事典」に確かに掲載されてはいるけれど、ミラ・ジョヴォヴィッチ=アリスの活躍を描くファンタジーとすら言えるのだから、と。

そして、「これはなに?ビデオクリップ?それともゲーム?」と言いたくなるような映像を垂れ流す作品が、より賞賛されている風潮にはなにかが歪んでいるように思えてなりません。

いや、私にはそう声高に誉める思いなどなく、ただ、スタッフがきっちりとした仕事でもって「映画」を製作していることに好感を持っているだけなのですけどね。
今作のクライマックスで最後の敵のもとへと向かうシーン、照明は眼のあたりに当てられて、いちど振り返ったあとでまた前を向くアリス、といった細かな演出を観ていると、なおさらそう思えるんですよ。

たとえAMAZINGやSOMETHING ELSEがなくても、コーラとポップコーンを手に安心して観ることのできるエンターテインメント、じゅうぶんじゃないですか。

とはいえ、今作については全体的に散漫かつ冗長な印象があり、前2作よりちょっと落ちるかな・・・とは思ってしまいました。
クライマックスにしても、レーザートラップとクローンアリスはいいけれど、かなり呆気ないよなあ、と。
また、ラストの日本には、私も劇場内のどよめきに参加してしまいましたしね。

それはともかく、アンデッドと化したカラスの大群をアリスが一蹴するシーンはなかなかだし、またゾンビが走るのかよっ!とか思いつつも、ラスベガスの地獄はかなりの出来映え。
カルロスが「男」を見せてくれるシーンはやはり格好いいし、ともあれことさら貶すべき代物にまで堕していることはなく、今回もまたじゅうぶんに楽しめる作品になっているとは言えるでしょう。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

バイオハザードIII  RESIDENT EVIL: EXTINCTION
2007年 アメリカ
配給 ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
製作 ポール・W・S・アンダーソン ジェレミー・ボルト ロバート・クルツァー他
監督 ラッセル・マルケイ
出演 ミラ・ジョヴォヴィッチ オデッド・フェール アリ・ラーター イアン・グレン

Oct 28, 2007

インフェルノ

インフェルノ「暗黒の母」(テネブラルム)の存在に近付いてしまった女流詩人ローズ。
ローマで楽理を学んでいる弟のマークがニューヨークに駆けつけたとき、彼女が暮らす古いゴシック建築のアパートは魔女の恐怖で覆われていたのだった・・・

錬金術師であり建築家であるヴァレリが著した「三人の母」、災いをもたらす女神をめぐる怪異譚。

蛾を喰らう蜥蜴や鼠を食いちぎる猫、砕け散るガラス。赤や緑の原色を配したアルジェントカラーと神経を逆撫でする不協和音。
ひたすらに不安を煽り、不快感を叩きつける「ならでは」の演出は健在、「サスペリア」が白雪姫であるのに対して、本作は「ヘンゼルとグレーテル」を意識したというそのセンスはさすがなのですが、フライブルクの「嘆きの母」(サスペリオルム)ほどに賞賛されることがなかったのは、やはりやむをえないところかな、と。

どうして呪われた書が骨董屋や図書館であっさりと手にできるのさ、というのは無粋極まりないツッコミであるとしても、登場人物たちが脈絡もなく、機械的に次々と殺害されていくのは・・・やっぱどうなのさ?
とりあえず、古物商が惨殺されるシーンについては「はっ?」と思った人が少なくないでしょうし、個人的には「ルチオ・フルチだったらアリかもしれないけどさあ・・・」とか。

そして、問題はなんといってもラストシーン。ヴェロニカ・ラザールでもって・・・アレはないだろう、アレは!
もしかしたら演出までもがマリオ・バーヴァだったのかもしれませんが、なんにせよ失笑あるいは噴飯もので・・・

というわけで、ようやくDVDがリリースされたので久々に鑑賞したものの、やはりどうにも誉めづらい作品なんですよ。
「サスペリアPART2」や「サスペリア」と比較して落ちるのはやむをえないところだし、最近の作品で観たのがあの「ドゥー・ユー・ライク・ヒッチコック?」であるのはともかく、アルジェント作品にさして思い入れのない身としてはなおさら。

それでも「魔女三部作」の完結編、ローマの「涙の母」(ラクリマルム)を描く「LA TERZA MADRE」(米公開タイトル「MOTHER OF TEARS」)はとにもかくにもアーシア・アルジェントがヒロイン。
共演のウド・キアはともかく、ダリア・ニコロディは黙っちゃいないだろうし、楽しみにしているのですけどね。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

インフェルノ  INFERNO
1980年 アメリカ
配給 20世紀フォックス
製作 クラウディオ・アルジェント
監督 ダリオ・アルジェント
出演 リー・マクロスキー アイリーン・ミラクル サッシャ・ピトエフ ダリア・ニコロディ ヴェロニカ・ラザール アリダ・ヴァリ

【参考リンク】
angeleyes 「イタリアン・ホラーの帝王 ダリオ・アルジェント」
AVETE VISTRO 「インフェルノ」

【関連記事】
サスペリア (サスペリア アルティメット・コレクション DVD-BOX)

Oct 14, 2007

スポーツキル 地獄の殺戮ショー

スポーツキル 地獄の殺戮ショー誘拐と監禁と殺人ゲーム。

さらには、昏睡している美女をバックからレイプするシーンといった禁忌の数々によって、本国ではレイティングすらペンディングのまま未公開。
日本でもR-18である上にレイトショーのみの劇場公開と、そうした胡散臭さに期待した人は多いでしょうし、かく言う私もそうなのですが・・・

劇場公開ではもちろんDVDスルーだとしても観るべきには非ず、ましてスピンオフを製作しているなんて冗談じゃない、と吐き捨てたくなるほどにお粗末な代物でした。

とにかく、殺人賭博クラブをマネージメントしている組織、あるいは悪漢たちの背後や内にあるどす黒いものがまるで描かれていないので、物語がどうしようもなく浅薄。
ヒロインはがんばっているとは思うけれど、そうした演出や脚本の稚拙さによって、トンネルのシーンにしても恐怖感や閉塞感というよりは、その冗長さをこそ息苦しく思ってしまう始末で。

キャスティングは悪くないんですよ。クラブを主宰するアイヴァンや、管理人のオーヴィルはたしかに味のあるキャラクターだし。
ただ、不気味さやはっちゃけぶりが不足していて犠牲者たちを完全に喰ってしまうほどではなく、はじめはニヤニヤと傍観していながら、やがて殺人ゲームに巻き込まれる観客の描写にしても、「ホステル2」とさえ比べるべくもありません。

また、パンフレットの解説はスラッシャー映画の系譜を語るばかり、作品の出来にほとんど触れていないことにはライターの苦労を察してあげる寛容さも必要だったり。

それでも、低予算のインディペンデントを誉めることがまるで美徳であるかのように、この作品をそう悪くは評さない向きもあるかとは思うけれど、駄作は駄作と言い切らないと。
だって、だからこそのパワーやセンスなんてまるで窺えないでしょう?

(文中、ネタバレは背景色にしています)

スポーツキル 地獄の殺戮ショー  Sportkill
2007年 アメリカ
配給 アット エンタテインメント
製作・監督 クレイグ・マクマホン
出演 ダナ・ウッド デヴィッド・C・ヘイズ ケヴィン・モイヤーズ マット・ロビンソン

ヒルズ・ハブ・アイズ2

ヒルズ・ハブ・アイズ2オリジナルのリメイクではなく、あくまでも「ヒルズ・ハブ・アイズ」の続編。

つまりは「サランドラ」と「ヒルズ・ハブ・アイズ」の設定を使った、軍隊の新兵チームと食人族との死闘を描く新しい物語、少なくとも「サランドラ2」をまた観る羽目にはならないわけで、その点だけは安心だったわけですが・・・

砂漠での脅威がだらだらと描かれたあと、舞台を炭坑に移してさらにだらだら。

閉鎖された空間を舞台にしたホラーがこのところトレンドになっていることもあれば、そこにはなんらかの新機軸が欲しいところ・・・というのはさすがに私見に過ぎるでしょうけれど、ともあれストーリーや演出があまりにも淡白で平板だよなあ、と。

もちろん奇を衒う必要などまったくないし、アレクサンドル・アジャと比較するような酷なこともしていないのですが、ホラー映画の基本を機械的になぞっているだけではという印象が拭えなかったんですよ。

だから、食人族がじわじわと新兵たちを追い詰めてゆく恐怖や、アバンタイトルで掲げたこの続編のテーマ、「種の存続」をめぐる狂気の描写がどうにも希薄。
中盤にあった伏線に対する帰結について「あれっ?」と思ったことを含めて、クライマックスのカタルシスもいまひとつ。

人間描写についても甘いとは言わないまでも魅力やインパクトを欠くし、あえて誉めるなら「ヒルズ・ハブ・アイズ」のルビーに相当するキャラクターが多少のスパイスになっていることくらいで・・・

などとあれこれ貶しながらも、辛辣だった前評判ほどにひどい出来とは思わなかったので、「サランドラ」の世界をただ楽しめさえすればというような、抑えめのテンションで観るのがいいのでしょうね。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

ヒルズ・ハブ・アイズ2  THE HILLS HAVE EYES 2
2007年 アメリカ
配給 プレシディオ
製作 ウェス・クレイヴン
監督 マーティン・ワイズ
出演 マイケル・マクミリアン ジェシカ・ストループ ジェイコブ・バルガス

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カタコンベ

カタコンベ姉のキャロリンのいるパリを訪れた、精神安定剤に頼るほど内向的なヴィクトリア。

ソルボンヌ大学に留学してパリでの生活を謳歌しているキャロリンは、警察のマークをいなしながら開催されるゲリラ・パーティーへとヴィクトリアを誘うのだが・・・
その会場は700万体もの死骸が眠り、黒き神の悪しき伝承のある地下墓地<カタコンベ>だった・・・

『SAW』シリーズのプロデューサー最新作」というキャッチコピーがそもそも胡散くさかったわけですが、はたしてその出来は・・・はっきり言って最悪でした。

オープニングはまあともかく、キャロリンのアパートにヴィクトリアが案内されるシーン。
そこには、発狂した住人が殺戮の血飛沫をあげた「いわく」があるらしいのですが、ヴィクトリアが階段を上がっていくカット割りが・・・これ、映像としてどうなんだと、この時点で監督たちの力量に疑問が湧いてきてしまったんですよね。

また、最初の殺人を目の当たりにしたヒロインがパーティー会場へと戻り、そのあとでまた地下迷路に迷い込むという展開が、テンポを徒に悪くしたのも考えもの。

そこをもう少し上手く見せて、あとはクライマックスへと続く恐怖を一気に描けばいいものを・・・スクリーンには緊張感も欠くドラマが延々と映し出されていただけで。

非難囂々な結末についてはなんていうか、あれもまあアリでいいとは思うのですが、ラストシーンがまたいまひとつ。
ていうか、おいおい、ヘンリーはどうなったのさ

閉鎖された空間の恐怖、そこからの脱出を描いたホラー映画の多い昨今、「ディセント」がいかによくできた作品であったことかを再認識したり、ライオンズ・ゲートは時々やらかすよなあ・・・と思ったりしながら、エンドロールを眺めていた私だったのでした。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

カタコンベ  CATACOMBS
2006年 アメリカ (2007年日本公開)
配給 デジタルサイト
製作 マーク・バーグ オーレン・ノウルズ グレッグ・ホフマン
監督 デヴィット・エリオット トム・コーカー
出演 シャニン・ソサモン アリシア・ムーア エミール・ホスティナ

Sep 29, 2007

ヒルズ・ハブ・アイズ

ヒルズ・ハブ・アイズオリジナルに対する敬意と、新たなエンターテインメントを提供しようという意志。

アレクサンドル・アジャなら、どこかの誰かのようにオナニーな映像を垂れ流すことはあるまい、と思いながら観たリメイク版「サランドラ」は、やはり期待を裏切らない出来映えでした。

まずは、オリジナルを観た人さえも唸らせるアバンタイトル。
その上手さに感嘆している暇もなしにはじまった、カントリーソングが流れるオープニングは日本公開が危ぶまれたその所以、核実験と畸形の映像で・・・

やがて繰り広げられる食人一家との戦い、かつて胸を躍らせたファンタスティックへの期待感が、否応なしに昂ぶってしまうというものです。

しかし、リメイクとしてのアクセントはつけながらも、物語は意外なほどオリジナルに忠実に展開していくのですが、それは「ハイテンション」で見せたアジャのセンスとバランス感覚。
徒にプロットをいじることもなく、また、映像の綺麗さもホラー映画であればあまり前面に押し出そうとすることもなく。

そして、クライマックスでの暴力と狂気の街こそが、リメイクの製作に抜擢されたアジャと脚本家のグレゴリー・ルヴァスールの歓びと興奮、そして才気が生み出した新たな恐怖。

あえて欠点を挙げるなら、食人一家の描写が甘いあたりでしょうけれど、がオリジナルに増して活躍していることは楽しめますし、なんと言ってもラストのルビーには・・・もう嘆息するしかありません。

クレイヴンが求めた「新しいエナジーとスタイル」と、アジャが描いた「新しいディレクション」。
そう、スタッフのまなざしの高さと丹精な仕事が生み出した、近年屈指の傑作ホラーであることは間違いないでしょう。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

ヒルズ・ハブ・アイズ  THE HILLS HAVE EYES
2006年 アメリカ (2007年日本公開)
配給 プレシディオ
製作 ウェス・クレイヴン
監督 アレクサンドル・アジャ
出演 アーロン・スタンフォード キャスリーン・クインラン エミリー・デ・レイヴィン

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ハイテンション

Sep 8, 2007

ホステル2

ホステル2物語の中盤まで恐怖描写を排除したわざとらしさ、意外性を無理矢理に織り込んで展開する拷問と殺人。
「どうだい、このスピード感は大したものだろう?」とでも言いたげなクライマックスが、だからこそ殊更めいて辟易とした前作は、ともあれファンタスティックとは言えません。

ドロドロとした肉塊の画像などのプロモーションに期待感を煽られるのは堪えるようにして、主人公が女子大生グループに替わったことでホラー映画の王道が楽しめれば・・・と劇場に足を運んだわけですが。

前作と同じ意味合いのオープニングにはじまって、パクストンが登場する冒頭には劇場内に小さいながらも嘆息があがって、私も彼がどうやってこの続編に絡んでいくのかしらとは思ったものの、そのあとが・・・いかにもこの監督らしいよな、と。

ところが、いくら私がイーライ・ロスが嫌いだとは言え、そこからは見せてくれたんですよ。

プロットが分かっているのなら息を呑むしかないオークションのシーンは秀逸だし、ヒロインがエリート・ハンティングのメンバーと出会う祭のシーンも、そのあとに繰り広げられるはずの陰惨な物語への期待を昂ぶらせてくれるし。
そして緊張感を欠くこともなく、今回はやってくれるじゃんと思ったけれど・・・

 「なぜスロバキアに来たのか・・・分からない。」

 「我々は異常か?」

いや、結末はあれでいいんですよ、あれで。
生贄となる若者たちだけではなく、狂気漲り富める殺人者も今作はじっくりと描きながら、しかしそう一筋縄には行かない展開、物語の反転は。

ただ、ベスやスチュアートの内なるものがしっかりと丁寧に描かれてはいないのだから、なんの説得力もカタルシスもないというもの。
そのドラマはおそらくロスの中にだけあって観客に伝わることはなく、これなら脚本だけは練られていた前作や「キャビン・フィーバー」の方がマシ。

だからラストシーンもただ腹立たしいだけで、エンドロールが流れ始めるや憤然と席を立つ人が少なからずいたのもやむをえないところ。
とはいえ、最後にベスがある台詞を吐き捨てるのでそれはやはり御法度だったのですが、その気持ちもまあもっともな凡作だと言えるでしょう。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

ホステル2  HOSTEL: PART II
2007年 アメリカ
配給 デスペラード
製作総指揮 ボアズ・イェーキン スコット・スピーゲル クエンティン・タランティーノ
監督 イーライ・ロス
出演 ローレン・ジャーマン ロジャー・バート ヘザー・マタラッツォ ビジュー・フィリップス リチャード・バージ ヴェラ・ヨルダノーヴァ

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キャビン・フィーバー

Jan 25, 2007

ハイテンション

ハイテンション アンレイテッド・エディション この当惑は君を愛してるから ときめきが次第に大きくなる

 そばに来て強く抱きしめて なぜって君を愛してるから

笑いながら、「なまいきシャルロット」を一緒に歌いながら、試験勉強をするために親友のアレックスの実家へとやってきた女子大生・マリー。
そして、トラックに乗ってやって来た正体不明の男が人里はなれた一軒家のドアのベルを鳴らして、地獄の一夜がはじまった・・・

アレクサンドル・アジャがリメイク版「THE HILLS HAVE EYES」の監督に起用されたのは、おそらくは徒に技巧に走ることのない演出とセンスに拠るもの。

作り手のマスターベーションを見せられることの少なくない昨今のホラー映画にあって、緊張感を決して緩ませることなく、恐怖と暴力を淡々と描き続けたその姿勢は、まず誉められるべきものでしょう。

まあ、喧伝されたゴアはそう大したものではなく、特殊メイクが「地獄の謝肉祭」のジャンネット・デ・ロッシであるのなら、ガソリンスタンドのシーンでは、その向こう側に冷蔵庫の酒瓶が見えるほどの大きな穴を土手っ腹に空けてほしかったものですが、それはそれとして。

この作品をめぐる賛否両論は、なんと言っても観客を騙し討ちにした結末がその最たる理由。
観終えるや、いや、種明かしがされるやいなやちゃぶ台をひっくり返した人は少なくないと思いますが、そこでストーリーの矛盾を云々することは、はたして是と言えるのでしょうか。

 「誰にも邪魔させない」

 「誰にも邪魔させない・・・」

問題はむしろ、そうして観客が感じるであろう疑問を有無を言わさずねじ伏せる説得力、それこそ「極限体験」を供するほどの圧倒的な演出力が必要ではあったということ。

その点については力不足であったことは確かに否めませんが、狂気の物語であればこうした手口もまたアリとするべきで、仕掛けられていたトリックを殊更に声高に取り上げて、作品を否定してしまうのは無粋だと思うのですがいかがでしょう。

それにしても、ヒロインのセシル・ドゥ・フランスの存在感、その魅力は強烈。
ラストシーンの狂気溢れる表情は、この作品について批判的な向きさえも唸らせたことでしょうし、数多のホラー映画の中でも相当な輝きを放っているように思います。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

ハイテンション  HAUTE TENSION
2003年 フランス (2006年日本公開)
配給 ファントム・フィルム
製作 アレクサンドル・アルカディ ロベール・ベンムッサ
監督 アレクサンドル・アジャ
出演 セシル・ドゥ・フランス マイウェン フィリップ・ナオン アンドレイ・フィンティ オアナ・ペレア

01:30 AM in 映画 |