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Jun 12, 2010

サバイバル・オブ・ザ・デッド

サバイバル・オブ・ザ・デッド死者と生者、生者と生者が殺戮を繰り返す世界。
疲弊した州兵は隊を捨て、強盗すら厭わずに安寧の地を求め彷徨い、ある島では死者の対処を巡って島民同士が、有力者同士が諍いを苛烈にして。

生き残れ、世界の終わりを。

でも、「生きる」とはどういうことなのか?


「ダイアリー・オブ・ザ・デッド」に記録されたキャラクターで紡ぐリビングデッド・サーガの新作は、ファンのアイデアやリクエスト、西部劇のテイストを盛り込んだ、サービス精神旺盛なものだという前評判。
そこにロメロならではの語り口の妙が加わって、ファンを魅了してやまない物語世界がまた供されることになるだろう、ゾンビ映画の神に心酔している向きはみなそう期待していたはず・・・・・・なのに、


いったいこれは何事なんだ?


ロメロがまず重視することは「チケット代金に見合うエンターテインメント」。
だけどその作品において、ゾンビはトリックスターにすぎないのではないか、スクリーンに繰り広げられるファンタスティックは、じわじわと終末に向かおうとしている現代社会のメタファーではないのか?
それは本人の弁にもあるように明白で、だからこそ熱烈な支持を受けてきたというのに。

崩壊してゆく世界で絶望する人間、強くあろうとする人間。
その絶対的相対的描写を放棄してはドラマ性は甚だ希薄、ましてこのタイトルで!
滔滔と粛々と、人間の矜持を描き続けてきたストーリーテラーが何故こんな凡庸、愚鈍に堕するのか?

本作で描こうとした戦争の滑稽や、そんな世界を生き残ることの意味はおそらくは観客には伝わらず、だから新機軸のゾンビ破壊シーンも、知能を有するゾンビも動物を食べるゾンビも、「死霊のえじき」を想起するクライマックスもただただ空しいだけ。
母が編んでくれた帽子云々のエピソードはああ、上手いなとは思ったけれどそんなこと、ロメロなら当然でしょう!

さらに言えば、厭世的な主人公に特段の魅力などなく、だからまた「ダイアリー・オブ・ザ・デッド」からのスピンオフが製作されようと期待など抱きようがなくて・・・
それでも、上映後のしんとした、観客の少ないシネマサンシャイン池袋で私は、次作がこんな凡作にならないことを祈っていたのでした。

(文中、ネタバレは背景色にしています)

サバイバル・オブ・ザ・デッド  SURVIVAL OF THE DEAD
2009年 アメリカ (2010年日本公開)
配給 プレシディオ
製作 ポーラ・デボンシャー ピーター・グルンヴォルド アート・シュピーゲル
監督・脚本・製作 ジョージ・A・ロメロ
出演 アラン・ヴァン・スプラング ケネス・ウェルシュ キャスリーン・マンロー デヴォン・ボスティック リチャード・フィッツパトリック


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