12
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31

Feb 2, 2007

松本剛「すみれの花咲く頃」

すみれの花咲く頃宝塚の舞台に立ちたい。

断ち切れないその思いが、どれほど周囲の人々に迷惑をかけているのか。
それはじゅうぶんに解っていた。でも。

宝塚音楽学校に行きたい。

・・・そして、「みかた」はいた。

松本剛さんが紡ぐ物語のやさしさとせつなさは、凡百の作家にはどうしたって描くことができないほどにキラキラと煌めくもの。

だからこそ、野にひっそりと咲く花を摘み取ったNHKドラマには快哉をさけぶほかになく、バブル景気華やかりし頃に発表されたこの名作が15年の時を経てもういちど輝くことに、狂喜したファンは少なくないことでしょう。

人を想うこと、そして自分を思うこと。

ゆっくりと、ゆっくりと、少年と少女のこころを描く、その精緻で清冽な物語世界は、やはり新装版が発売されることになった「甘い水」でも堪能することができます。

悪意に満ちた世界、暗く濁った澱から逃げ出したい。でも、逃げ出すことができない。

こちらはクライマックスにおけるヒロインのセリフ、「もういやよ」のカタルシスがどうしようもなく秀逸ではあるのですが、それまでの松本剛作品らしからぬどぎつさがあることと、プロットの根本に在るものが類似するという点で、未読の方にはまず、「すみれの花咲く頃」をお薦めします。

そして、こうして再評価される機運があるのなら、単行本に収録されていない短編の数々、個人的には「なかない渚」をはじめとする近代麻雀に掲載された作品群が、ふたたび陽の目を見ることを切望せずにはいられません。

すみれの花咲く頃(旧版表紙)

(文中、ネタバレは背景色にしています)

【関連リンク】
 「すみれの花咲く頃」番組ホームページ (NHKドラマ)
 松本剛インタビュー (Walkerplus)

 講談社BOX
  「甘い水」(上)(下) 2007年2月3日発売
  「すみれの花咲く頃」 2007年3月1日発売

この記事のトラックバックURL:

この記事へのトラックバック一覧です

松本剛「すみれの花咲く頃」

コメント
コメントを書く