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Aug 2, 2005

伽や子のために

小栗康平監督作品集 DVD-BOX1957年の東京と北海道を舞台に、在日朝鮮人の青年と日本人の少女の悲恋を描いた物語。

もしくは在日朝鮮人であれ日本人であれ、登場人物がみな自分の在るべき場所を模索するそのこころ、その時代を、名匠・小栗康平ならではの視点で捉えた佳作ということになるのでしょう。

原作が宮本輝から李恢成に変われど作品の方向性は「泥の河」に相似している印象、しかし史実としてより暗い部分に触れようとするまなざしの高さはこの監督であればこそ。
在日韓国・朝鮮人の問題に関わっていた人々から、差別の実態、歴史が描かれていないという批判が少なからずあったとのことですが、それは日本人にとって映画から学ぶべきことではなく、小栗康平はその先に焦点を当て、この物語を紡いだように思われます。

しかし、観終えてまず感じてしまったのは「泥の河」ほどの鮮烈さは欠いているなあ、ということ。
安藤庄平のカメラは本作も観る者を惹きつけてやまないのですが、幻想的に描かれる祖国への憧憬など、朴訥とした演出の「泥の河」に比べて凝った映像が、こうした真摯な物語であれば余計なものに感じられてしまいました。

 「日本も朝鮮も嫌!」

 「戦争があっちこっちひっぱりまわしてくれたおかげで僕らは会えたんだ」

それでも主演の呉昇一(オ・スンイル)と南果歩の存在感、その熱演は輝いており、流れる水の音に耳を澄ます別離のシーンは、「邦画ニューウェーブ」以降の日本映画に於ける屈指の名シーンとして挙げられて然るべきでしょう。

そしてそれは、夜道で相俊(サンジュン)に駆け寄る伽や子や、大沼でのボートといった、二人が心を通わせていくシーンを積み重ねた結果。これほどのクオリティの作品を作り出せる映画監督は希有であればこそ、1時間57分は「本物」を目の当たりにする心地よさの中に過ぎてゆくことになります。


伽や子のために
1984年 日本
配給 エキプ・ド・シネマ
製作 砂岡不二夫
監督 小栗康平
出演 呉昇一 南果歩 浜村純 園佳也子 加藤武 川谷拓三

 ※ 「伽や子」の「や」は、「にんべん」に「耶」

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